ようやく採用出来た人材がすぐに退職してしまう...
会社の主力になるほど優秀な人材へと成長したところで退職してしまう...
採用担当や人事、会社を経営しているあなたが一度は経験のあることではないでしょうか。
優秀な人材の離職を防ぎ、継続して活躍してもらうための施策を人材用語で「リテンション」や「リテンションマネジメント」「リテンション戦略」などと呼びます。
今回は、今リテンション戦略が注目されている背景や施策を実施するメリット、実際に効果があったリテンション戦略の事例について解説していきます。
この記事を読むメリット
- 人材戦略におけるリテンションへの理解が深まる
- 人材業界におけるリテンションの動向やトレンドをつかむことができる
- 実際に効果があるリテンションの施策の事例を知ることで、自社にあった戦略を検討できる
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また、ビジネスにおいては、リテンションという言葉はマーケティング領域と人材戦略領域で異なる意味を持つため、注意が必要です。
マーケティング領域では、既存顧客とのリピートや長期契約など、顧客と継続的な関係を築くことを目的とした施策のことを指します。具体的には、メールマーケティングやSNSマーケティング、ポイント施策やカスタマーサクセスなどの施策を指します。
一方、人材戦略領域におけるリテンションとは、優秀な人材の離職を防ぎ、継続して活躍してもらうための施策を指し、「リテンション」以外にも「リテンションマネジメント」「リテンション戦略」などと呼ばれることがあります。
現在、人材戦略におけるリテンションが注目されている理由は以下の2点です。
現在多くの業界で人材不足が叫ばれていますが、最大の原因は労働者人口の減少です。厚生労働省によると、日本の労働人口は年々減少しており、ピーク時から1,000万人近く減少しています。
高度経済成長期やバブル期と違い、求人をかけても人が集まらない、優秀人材の採用であればなおさら難しい状況が続いているため、既存社員の流出を阻止するための施策が必要です。
(厚労省)~就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者37.0%、新規大卒就職者32.3%~
ここ数年ほど「若者がすぐに仕事を辞めてしまう」という内容のニュースを目にする機会も多いと思います。
企業にとって退職者が出てしまうデメリットは、既存社員の業務量が増えることだけではありません。採用にかかったコストが無駄になってしまうことや業務量が増え過ぎたことによる既存社員のモチベーション低下など多岐にわたります。
そうした悪循環に陥らないためにも、採用活動に力を入れるだけでなく、既存社員がイキイキと活躍し続けられる環境を整える施策が必要です。
リテンション施策を行うことによるメリットは多くあります。
その中でも、リテンション施策を行うメリットを2点紹介します。
企業による大小の差はあれ、離職率が低下すれば採用・育成コストは確実に削減されます。
・採用コスト:エージェント費用や求人サイトの掲載料など
・育成コスト:研修やOJT等でかかるサービス利用料や業務工数など
1年目、2年目の社員が多い組織と比べると、入社10年目の社員が多数いる組織は、個人の業務の質だけでなく、企業風土の浸透など社内体制が強化されやすいことは言うまでもありません。
ここからは、リテンションを強化する8つの施策をご紹介していきます。リテンションにおける効果的な施策は、待遇・労働時間の改善や社内のコミュニケーション活発化が挙げられます。
1つずつ詳しく見ていきましょう。
1. 報酬UP、福利厚生の充実
「関係ない!」と言いたいところですが、リテンションには給与を含む待遇も関わります。仕事に見合う給与を適切に支給することで、離職率の低下が実現可能です。
物価高を背景とした賃上げの動きは、中小企業にも広がっています。現在の物価に対して適切な給与になっているかも考慮しつつ、定期昇給やベースアップなどの賃上げに取り組みましょう。
リテンションには、社員のメンタルが良い状態にある職場環境であることが必須です。そのために、社員がワークライフバランスのとれた生活を送れるよう、有給休暇や残業の制度を見直してみましょう。
リテンションには基準を明確にした公平で適切な人事制度の採用が重要です。評価制度があいまいだと、従業員が公正に評価されていないと感じてしまい、会社に貢献する気持ちも薄れてしまうでしょう。
リテンション戦略として定期的に社内面談を行うことで、社員のエンゲージメントの向上につながります。普段の業務ではなかなか言う機会のない称賛やフィードバックを行うことで、会社は自分のことを考えてくれてると認識してもらうことができます。
また、普段社員からは伝えられない小さな不安や悩みを聞き出すことで職場環境の改善やフォローに役立てることが出来ます。
入社後のフォロー体制や独り立ちまでの期間が適正かを見直すこともリテンション戦略のひとつです。社内の教育体制や制度が、既存社員や新入社員にとって適切なものになっているかを今一度見直しましょう。
柔軟な働き方は、労働時間と勤務場所の自由度の高い働き方とされます。労働時間の自由度が高い働き方には、労働時間の長さが個人の裁量にゆだねられる裁量労働や出退勤時間を個人が調整するフレックスタイム制度などがあります。勤務場所の自由度が高い働き方にはリモートワークなどがあります。
厚労省によると、メンター制度とは、豊富な知識と職業経験を有した社内の先輩社員(メンター)が、後輩社員(メンティ) に対して行う個別支援活動を指します。キャリア形成上の課題解決を援助して個人の成長を支えるとともに、職場内での悩みや問題解決をサポートしやすくなる効果が期待できます。
早期退職があると、不安になる既存社員もでてきます。そうした悪循環を防ぐためにも、採用時のミスマッチを防ぐことが重要です。応募を集めるだけでなく、入社後に活躍・定着しやすい人物の採用要件を再検討することもリテンション戦略のひとつです。
取るべき戦略は企業の数だけあるため、自社に最適な戦略をとりましょう。次の章では筆者がピックアップした今すぐに取り組む・参考にすることができる具体的な成功事例を紹介します。
前の章ではリテンションの具体例を紹介しました。
しかし、経営者ではない人事担当の方は給与のアップなど今すぐに改善が難しい施策も多いと思います。
この章では、筆者がピックアップした今すぐに取り組む・参考にすることができる具体的な事例を紹介していきます。
サイボウズ株式会社は、グループウェア「サイボウズOffice」シリーズなどを手掛ける東京都に本社を置くソフトウェア開発会社です。
サイボウズは2007年に「選択型人事制度」という制度を導入しました。今でこそ多くの企業が取り入れている「ライフスタイルにあった多様な働き方」を当時から導入した結果、大幅な離職率の抑制に成功しました。従業員の自立と多様性を重視して働きやすい環境を作ったという点でリテンションマネジメントの成功事例でよく挙げられる企業です。
株式会社鳥貴族は、大阪市浪速区に本社を置き、大阪府・東京都・愛知県を中心に居酒屋「鳥貴族」ほか「TORIKI BURGER」「やきとり大吉」を展開する企業です。
鳥貴族は無断残業や休日出勤を禁止していることが有名です。長時間労働を是正して従業員が働きやすい環境を作っています。「コスト削減のために社員を犠牲にしない」という方針を掲げ、30年かけて少しずつ労働環境を改善し、離職率低下に成功しました。
株式会社ビースタイルは、主婦・派遣・パート・社会人インターンなどを手がける人材会社です。
株式会社ビースタイルは経営層に意見を伝える「全社日報」やマネージャーとのマンツーマン面談、『69ファミリーシフト』といった選択式時短勤務制度(午前・午後6時-9時には家にいるようにする)を導入し、社内コミュニケーションの改善に取り組みました。
社内コミュニケーションを円滑にすることにより、社員のモチベーションやワークライフバランスに関する施策が積極的に活用され、さらに活性化につながる好循環が生まれました。コミュニケーション方法を見直すことで、離職率は20%から8%へ改善されました。
株式会社アイネットはクラウドデータセンターを軸とし、IT上流~下流までサービスを展開(金融、小売・流通、石油、製造、医療など)。DX/クラウド/FinTech/IoT/宇宙/データサイエンス等幅広く手掛ける企業です。
株式会社アイネットは新入社員研修の期間を2か月から6か月に延長するとともに、フォローアップ研修も3年間実施しました。そして、社内インターン制度で、採用職種がバックオフィス、エンジニア問わず、原則として全事業部の業務を経験して、適性を判断したあとに初任配属先を決めたそうです。
その結果、40~50人を採用して、3年以内の離職者が3~4人というIT企業としては非常に低い数字になりました。
・人財戦略におけるリテンションの必要性が高まっている。
・リテンションを行うことにより、採用コストの削減や社内体制が強化されるというメリットがある。
・リテンションにおける効果的な施策は、待遇・労働時間の改善や社内のコミュニケーション活発化。自社にとって効果的な施策選びが必須。
ここまで、リテンションという観点で、離職者を減らし、結果的に成果を高めたり会社の成長力をあげる方法をご紹介しました。
ミズサキではこうしたノウハウを生かしながら、採用戦略設計、入社後のフォロー体制の支援を行っています。無料でご相談を承っておりますので、「リテンション戦略」にご興味のある方は是非お問い合わせください。