高校生の就職/採用には、大学新卒や中途採用とは異なる独自のルールがあります。これから高校新卒採用に取り組む企業は、まずはその実態を把握する必要があります。
この記事では、まず高卒採用独自のルールと高校生の就職活動のスケジュールを解説し、高校新卒採用に取り組むべきか迷っている方に、高卒採用のメリット/デメリットを解説します。そして、高卒採用に取り組む際の具体的なアクションプランまでこの記事で全て理解できるように解説していきます。
この記事でわかること
- 高校生の就職活動の全体像
- 自社が高校新卒採用を実施するべきか、それをどのように判断すれば良いか
- 未成年者を守るために作られた高卒採用の独自ルール
- 高卒採用のスケジュールと企業のアクションプラン
|
厚生労働省の調査によると、令和6年に高校を卒業した生徒の中で約12万人が求職活動を実施しています。同年の高校卒業生の人口は約90万人なので、就職を選ぶ高校生の割合は約13%となります。
日本の企業にとって最もメジャーな採用の対象である大学新卒者は年間約40万人以上といわれているので、大半の高校生が進学を選ぶと思っていた方にとっては意外かもしれませんが、高校生の就職者のボリュームは大卒新卒の約3分の1にも上ります。
採用企業側の動向を見てみると、令和6年卒業の高校生の有効求人倍率は3.98倍と昨年に比べて0.49ポイント上昇しています。少子化が進むにつれて企業の採用競争が激化し、大学新卒・中途の採用人数が減少している企業が次の採用市場として高校生をターゲットにしている状況がうかがえます。
(参考:令和5年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」)
高校卒業後の進路として最もメジャーな選択肢は進学である一方で、10人に1人以上の高校生は就職を選んでおり、採用企業にとって参入するに十分なボリュームがあるとお分かりいただけたと思います。しかし、多くの企業にとっての懸念は、(言い方は悪いですが)「高校生は大学生よりも質が低いのではないか?」という点ではないでしょうか?
社員や経営者自らの企業な時間を使って高校採用に取り組む価値があるのか考えるために、高卒で進学ではなく就職を選ぶ動機を見てみましょう。
<就職を選ぶ主な動機>
- 経済的に自立したいと考えている
- 家庭の経済的事情
- やりたい職業が決まっている
- 進学してやりたいことが見つからない
一昔前は大学の合格枠に対して志望学生が多かったため、「大学に進学する学力が足りなかった」という理由で就職を選ぶ人が多かったのですが、現在は大学に対して高校生の数が減っているため、大学を選ばなければ基本的に進学することができます。
近年の高校生の主な就職動機を見ると、むしろ目的があって就職を選んでいることがわかります。安易に「大卒だから高卒よりも優秀である」と考えるのではなく、(極端に高学歴の人材を除いて)大学生と高校生の差はほとんどなくなっていると考えるのが妥当だといえます。
それでは、高校生採用を実施するメリットデメリットを整理してみます。
特に今後高卒採用に取り組むかどうか検討している企業はチェックしてください。
- 差別化しやすく成果が出やすい
大卒採用・中途採用に比べるとまだ確立したノウハウを持っている企業が少ないので、今から参入しても正しいやり方を実践すれば比較的成果が出やすいという特徴があります。
- 内定辞退が少ない
高校新卒は1人が同時に選考を受けるのは原則1社なので、「せっかく内定を出したのに他の企業に行ってしまった…」といったケースはほとんどありません。
- 高卒採用を続けるほど採用しやすくなる
大卒・中途では同じサービスを使い続けても成果に伸びしろが少ないですが、高卒採用は対象高校と信頼関係を築くことができれば、安定して毎年応募が入るようになったり、優秀な学生からの応募が増えていきます。続けるほど採用が上手くいくようになる点も特徴です。
- 低コストで採用できる
大卒採用・中途採用は大手・中小を問わず非常に多くの企業が参入しています。高卒採用と違って規制が少ないので、民間企業によるサービスが多く存在しており、十分な採用人数を確保しようとすると複数のサービスにコストをかけざるを得ないケースもあります。
一方で高卒新卒の採用では、ハローワークや学校が介在する仕組みになっていることから民間企業がプラットフォームを形成しづらく、「このサイトを使わないと高卒採用には手が出せない」といった民間サービスはありません。ゆえに必要以上のコストをかけずに挑戦できる採用手段といえます。
- 入社後のミスマッチが起こりやすい
1人1社制のためミスマッチが発生しやすく早期離職が多い傾向にあります。仕事内容や職場環境を入念に伝えて、入社後のギャップがないように努めることで解消しましょう。
- 情報収集が難しい
高卒採用のノウハウはまだ一般的ではないので、自分で調べても有効な戦略を打ち立てる難易度が高いといえます。他の企業も同じように手探りで進めている場合が多いので、いち早くノウハウを獲得して他社と差別化を図りましょう。ハローワークの職員にアドバイスを仰いだり、進路指導の教諭に聞いてみるのも有効です。また数は少ないですが高卒採用の支援サービスも存在します。信頼のおけるサービスを見極めるのは難しいですが、最初の相談は無料で実施しているサービスもあるので、一度問い合わせてみるのも選択肢のひとつです。
弊社の高卒採用支援も無料でご相談いただけるので、詳しい話を聞いてから高卒採用を実施したい方は、次のリンクからご相談ください。
高卒採用の無料相談はこちら
高校新卒採用には行政、学校組織、主要経済団体の3者間で定められた独自ルールが存在します。学業を優先するために募集情報公開のスケジュールや応募数の制限があったりと、どれも高卒採用に取り組むうえで知っておく必要があります。
- 学校斡旋
企業は高校生に直接連絡することはできず、学校を介して連絡を行います。学校が介在することで高校生の学業を妨げることなく、円滑に就職活動を進める狙いがあります。高校生は応募先を見つける時にも企業に直接問い合わせるのではなく、学校に送られてきた求人票の中から選びます。企業はハローワークの確認を得た求人票を学校に送付することで、高校新卒の学生にアプローチをかけるという構図になっています。
- 1人1社制
高校生が同時に応募できる企業は原則1社のみです。高校新卒採用は一次募集・二次募集に分かれており、一次募集は1社のみ、二次募集からは複数企業に応募できるようになります。高卒で就職活動を行う学生の約8割は一次募集で就職先が決まるため、実質1人1社のみ選考を受けるというのが今の高卒採用の状況です。
1人1社制は複数の企業に応募できないことが入社後のミスマッチを誘発しやすいというデメリットがあります。このことから1人1社制の撤廃を求める動きが活発になってきており、今後制度改定について注視していく必要があるでしょう。
- 書類選考での不採用は禁止
1人1社制とも関係していますが、採用企業は高校新卒の就活生を書類選考で不採用にすることはできません。特に高校新卒の就職活動において、採用企業は公正かつ適正な選考を行うことが求められており、適性検査や一般常識テスト・作文などを併せて実施する企業も多いようです。
次に就職活動のスケジュールを高校生と採用企業のそれぞれの立場から見ていきましょう。大学新卒の場合にも、”解禁日”というものがありますが、高校新卒の場合は6月から9月の4カ月間に、採用企業側の準備から採用内定までの就職活動の一連の流れが凝縮されています。
高校生から見たスケジュール
- 1~3月(2年生)|3者面談
- 4月~|就職説明会
- 7~8月|企業選び・職場見学
- 9月|応募書類作成・選考~面接・採用内定(ここで就活終了する人が多数)
- 10~11月|二次募集への応募・選考
採用企業から見たスケジュール
- 1月|翌年度の採用戦略を立てる
- 2~3月|高校への郵送物の作成/郵送
- 4~5月|ハローワーク求人票の作成
- 6月|高卒専用のハローワーク求人票の作成・提出
- 7月|求人公開・高校へ求人票を郵送
- 7~8月|職場見学の受け入れ
- 9月|応募者の選考開始・採用
- 10~11月|二次募集
採用活動はやみくもに行うのではなく、事前に計画を立てて戦略的に実施しましょう。特に高卒採用は、求人票の公開から採用内定までの期間が短いため、計画がない状態で取り組むと何も成果を上げられないことも…
まずは次の内容を決めて、採用活動にかかわる社員に共有しましょう。
- 採用の目的を決める
- 採用人数を決める
- 採用したい人物像を明確にする
特に”採用したい人物像”を決めることは、入社後のミスマッチをなくすことにも効果的です。採用人物像についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
高校採用に取り組む目的・採用したい高校生の人物像ができたら、学校に送付するハローワーク求人を作成します。ハローワークの求人票を作ると、給与や労働時間をはじめとする定量的な条件だけを記載した無機質なものになりがちです。
一つの高校に対して多ければ年間約3000通の求人票が届いているので、情報が薄い企業はそもそも見てもらえないことが多いでしょう。魅力的な求人票を作るためのポイントは数多くありますが、初めて高卒採用に取り組む方は、まずは次の重要事項を押さえて作成するように心がけてください。
- 「職種名」はキャッチコピーとして使う
最初に高校生が確認する項目です。ひと目で仕事内容と特徴/魅力が伝わるように、アピールしたいキーワードを盛り込みましょう。
(良い例)作業員/モノづくりが好きなら未経験OK/資格取得支援あり
(悪い例)作業員
- 文字数制限の上限まで記入する
入力されていない項目が多い企業や、表示されるスペースに空白が多い企業は、採用に対する意欲が低いと見られやすいため、入力できる項目は文字数の上限まで目いっぱい記入してください。
例えば、ハローワークの求人票では仕事内容の項目には最大360文字まで入力することができます。1行だけで簡潔に仕事内容を入力するのではなく、仕事内容・職場の雰囲気・会社の理念・PRポイントなど幅広い情報を記載しましょう。
弊社はハローワークの求人票作成のサービスを行っています。ハローワークの求人票作成について、さらに詳しい情報が欲しい方は、弊社の他の記事を参考にしてみてください。
大半の高校生は学校からの紹介で見学する企業・応募する企業を決めます。つまり、高校新卒で採用人数を増やしていくためには、高校との関係構築が重要です。高校への訪問をきっかけに見学人数が急激に増えたという企業もありますので、求人票やパンフレットだけでなく、高校訪問の積極的な活用を検討したいところです。
高校新卒者の早期離職が問題化しており、就業先の選択肢を制約してしまう「1人1社制」を改定する動きが出てきています。実際に茨城県では、2024年度から採用選考が解禁される9月の時点で、1人2社に応募できるように改定されました。
同様の改訂が既に行われている都道府県もあり、今後他の都道府県にも拡大していくと予想されます。
茨城県の2024年度の改訂内容
これまでの高校新卒 |
2024年度からの応募 |
9月の応募解禁では1人1社のみ応募可能 |
9月の応募解禁から1人2社まで応募できる |
二次募集では2社応募できるようになる |
1人1社制の見直しを行った都道府県
高校採用についての理解は深まりましたか?大学新卒・中途とは異なり、独自のルールが民間サービスによる市場形成を阻害しており、成熟しつつある日本の採用市場の最後のフロントラインとなっています。メリットとデメリットの両面があることを理解したうえで、実施するか検討しましょう。
ここ数年で参入企業数が増えていますが、まだまだ手探りで進めている企業も多いので、これから高校新卒採用に取り組むのも良い戦略だと思います。動き出しのアクションプランは記事に記載した通りですが、準備に時間が取れないなどお困りのことがあれば、まずはご相談だけでも弊社までご連絡ください。