求人原稿作成に関して、このように思うことはないでしょうか?
「求人媒体の担当者に言われるがまま、テンプレートを埋めるだけの作業になっていないだろうか…」
「他社の魅力的な求人を見て、つい真似をしてしまい、結局自社の良さが何なのか分からなくなってしまった…」
「情熱を持って事業に取り組んでいるのに、その想いが求人原稿になると途端に色褪せてしまう…」
もし、あなたが今、このような壁に突き当たっているのなら、この記事はきっとお役に立てるはずです。
求人原稿は、未来の仲間と出会うための、いわば「企業から求職者へのラブレター」です。
しかし、その書き方一つで、想いが伝わるどころか、その他大勢の中に埋もれ、見向きもされない悲しい結果に終わってしまいます。
今回の記事では、この重要な求人原稿の作成に、「マーケティング」と「コピーライティング」の考え方を本格的に導入する方法を、徹底的に解説します。
「求人になぜ大げさな…」と思われるかもしれません。
しかし、これは小手先のテクニック論ではありません。
商品を売るために顧客を深く理解し、心を動かすメッセージを届けるマーケティングの技術は、採用活動、特に求人原稿において絶大な効果を発揮します。
これは、貴社の求人原稿作成そのものの「思考」をアップデートする試みなのです。
この記事は、単なる書き方のマニュアルではありません。
貴社の採用力を根本から引き上げる「思考のフレームワーク」をご提供します。
読み終える頃には、あなたの会社の求人原稿が、単なる「募集要項の羅列」から、求職者の心を鷲掴みにして「この会社で、私の人生を変えたい!」と強く思わせる「強力なメッセージ」へと生まれ変わる、具体的な道筋が見えているはずです。
ぜひ、じっくりと最後までお付き合いください。
多くの企業が、求人媒体のフォーマットに沿って、いきなり原稿を書き始めてしまいます。
しかし、優れたシェフが最高の料理を作るために、まず最高の食材を吟味し、下ごしらえに時間をかけるように、優れた求人原稿も、書く前の「準備」がすべてと言っても過言ではありません。
私たちが応用するのは、マーケティングにおける普遍的なフレームワークです。
マーケティングプランを立てる時に最初にすることは、
「誰に(ターゲット)」
「何を(提供価値)」
「どのように伝えるか(メッセージ)」
を明確にすることです。
これを採用活動に置き換え、深く掘り下げながら、ステップ・バイ・ステップで見ていきましょう。
すべてのマーケティング活動は「顧客理解」から始まります。
採用も同じです。最初に行うべきは、自社が求職者に提供できる「価値」を棚卸し、その中から「最も強く、深く響く、たった一つの価値」を選び抜くことです。
まずは先入観を捨て、あなたの会社の「価値(=求職者にとっての魅力)」を、ブレインストーミング形式で書き出してみてください。
ここで大事なのは、「何を見せたいか」ではなく、求職者は「何を見たいか」を考えること。
よく陥りがちなのが、「ウチには大した魅力なんてない」という思い込みです。
しかし、思い出してください。
社員が毎日当たり前のように享受しているその環境は、社外の求職者にとっては「喉から手が出るほど欲しい価値」かもしれません。
社員にとっては日常の光景でも、転職を考えている人にとっては、まさに理想の環境に見えることがあるのです。
【ワーク】あなたの会社が求職者に訴求できる価値は何ですか?(少し深く考えてみましょう)
待遇:環境面
- 給与の高さ、賞与の実績、インセンティブ制度
- 年間休日の多さ、有給休暇の取得率100%
- 残業月平均〇時間以下、ノー残業デーの徹底
- フレックスタイム、リモートワーク、時短勤務など柔軟な働き方
- 住宅手当、家族手当、食事補助、ユニークな福利厚生(書籍購入補助、資格取得支援など)
- 駅徒歩〇分、複数路線利用可能、マイカー通勤OK
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仕事内容:キャリア面
- 仕事そのものの面白さ、社会貢献性の高さ
- 未経験からでも挑戦できる、手厚い研修制度
- 若手に任される裁量権の大きさ、責任あるポジション
- 明確な評価制度と、実力主義のキャリアパス
- 最新の技術やツールに触れられる環境
- 経営層との距離の近さ、意思決定の速さ
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組織:文化面
- 会社のビジョン、ミッションへの共感
- 社員の人柄の良さ、チームワークを重んじる文化
- 失敗を許容し、再挑戦を奨励する風土
- 部署や役職を超えたコミュニケーションの活発さ
- 産休・育休からの復帰実績、子育てへの理解
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いかがでしょうか。
たくさんの価値が見つかったかもしれません。この「価値の棚卸し」こそが、すべての土台となります。
さて、ここが最初の分かれ道です。
見つけた魅力をすべて伝えたくなる気持ちは痛いほど分かります。
しかし、それは逆効果です。たくさんのボールを一度に投げても、相手は一つも受け取れません。
マーケティングの世界では、「一つのメッセージに、一つの訴求」が鉄則です。
相手が確実にキャッチできる、渾身の一球を投げ込むのです。
では、その「渾身の一球」をどう選ぶのか。
その基準が、求職者の欲求の「緊急性」「持続性」「規模」です。
緊急性(欲求の強さ)
「もう限界だ!」「今すぐこの状況から抜け出したい!」と感じるほどの、強い痛みや欲求は何か? 例えば、「上司からのパワハラで心がすり減っている」人にとって、「心理的安全性の高い職場」という価値は、他の何よりも緊急性が高いと言えます。
持続性(悩みの頻度)
「ああ、また今日も…」と毎日、あるいは毎週のように感じるストレスや不満は何か? 例えば、「毎朝の満員電車が苦痛」な人にとって、「フルリモート可能」という価値は、日々そのありがたみを感じられる持続的な魅力となります。
規模(共感の広さ)
世の中の多くのビジネスパーソンが「あるある!」と共感する、普遍的な悩みや欲求は何か? 厚生労働省の調査などで明らかになる転職理由の上位、「給与への不満」「労働時間への不満」「人間関係への不満」などは、非常に規模の大きい欲求です。
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これらの欲求にに応える価値こそ、最も多くの求職者の心に突き刺さる、強力な訴求ポイントとなります。
例えば、中途採用でよくある転職理由を裏返してみましょう。
- 「会社の将来性が不安」 → 「創業以来黒字経営の安定基盤と、明確な海外展開ビジョンがある」
- 「正当な評価をされない」 → 「成果とプロセスを定量・定性で評価する、納得感のある評価制度がある」
- 「スキルアップできない」 → 「全社員に年間10万円の研修費用を支給し、主体的な学びを応援している」
これらの欲求は、多くの求職者が抱える、緊急性が高い/持続的/規模の大きいものです。
あなたの会社が、これらの一つにでも明確に応えられるのであれば、それを今回の「主役」に据えるべきです。
【ワーク】洗い出した価値の中から、最も効果的に訴求できる「たった一つの価値」を絞り込んでください。
例:いくつかの候補の中から「若手にも与えられる裁量権の大きさ」を選んだとしましょう。 これが、今回の求人原稿で打ち出すべき、中心的なメッセージとなります。
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次に考えるべきは、極めて重要な「自社の認知度」です。
つまり、「ターゲット求職者は、あなたの会社の名前をどれくらい知っていますか?」ということです。
ネームバリューとも言い換えられます。
なぜこれが重要なのでしょうか?
それは、相手との関係性によって、会話の始め方が全く変わるからです。
初対面の人に、いきなり「私の素晴らしいところはですね…」と身の上話を始めたら、引かれてしまいますよね。
まずは相手の興味関心を探り、共通の話題から入るのが礼儀です。
求人原稿も同様です。
ここでは、「求人原稿の最適化戦略:認知度別訴求の法則」をご紹介します。
- 状態: 求職者はあなたの会社を既に知っており、強い憧れや入社意欲を持っている。
- 書き方: 「〇〇(社名)、新卒総合職募集」のように、社名と最低限の条件を伝えるだけで、説明不要で応募が集まります。日本を代表するような大企業がこのレベルです。中小企業がここを目指す必要はありません。
- 状態: 求職者は社名を知っており、「有名な会社だよね」「あの製品の会社か」という認識はあります。しかし、応募するまでには至っていません。
- 書き方: 応募への「最後の一押し」が必要です。求職者が持つ「こんな会社で働けば、自分の欲求が満たされそうだ」という願望を、自分たちの会社なら実現できるとイメージさせる情報を提供します。「実はこんな新事業を始めました」「社員の働き方改革のために、こんな新制度を導入しました」といった新情報や、社員のリアルな声、具体的な成功事例といった、願望が実現するという「証拠」を提示し、今応募すべき理由を明確にします。
- 状態: 求職者はあなたの会社のことを知りません。しかし、心の中では「もっと〇〇な会社で働きたいな…」という欲求や理想を明確に自覚している状態です。
- 書き方: ここが最も重要なステージです。いきなり「株式会社〇〇です!」と名乗っても、誰の心にも響きません。まずは、求職者が抱いている漠然とした欲求や悩みを、キャッチコピーで代弁し、言語化してあげることが最優先です。「『いつになったら任せてもらえるんだろう…』と、天井を見つめる日々に、終止符を。」のように、相手の心に突き刺さる言葉から入るのです。まるで、霧の中にいる求職者にとっての「灯台の光」のように、その欲求の先にある解決策として、自社をドラマチックに提示するのです。
- 状態: 求職者は、日々の仕事に何らかの不満や問題(例:仕事が単調で成長実感がない)は感じています。しかし、それが「転職によって解決できる課題だ」とはまだ気づいていない状態です。
- 書き方: 「肩こりがひどい」という問題意識はあるものの、「整体」という解決策を知らない人に、いきなり「当院の骨盤矯正は最新の〇〇理論で…」と語っても響かないのと同じです。この層には、まず「その肩こり、放置すると全身の歪みに繋がるってご存知ですか?」と問題の深刻さに気づかせ、自分事化させる必要があります。採用で言えば、「毎日同じルーティンワーク。そのままだと、5年後あなたの市場価値はどうなっていると思いますか?」と問題を提起し、その有効な解決策の一つとして「環境を変えること(=転職)」と自社を提示する、という丁寧な問題解決型のストーリーテリングが求められます。
【ワーク】あなたの会社の認知度は、ターゲット求職者に対してどのレベルですか?
おそらく、この記事を熱心にお読みの多くの中小企業の皆様は「認知度3」あるいは「認知度2」に該当するでしょう。これは悲観することではありません。 むしろ、これから伝えるべきメッセージが明確になる、最も戦略の立て甲斐があるステージなのです。 認知度を正しく把握しないと、まるで誰もいない荒野で「我が社は素晴らしいぞ!」と叫んでいるような、空しい努力に終わってしまいます。
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最後の準備は、自社が訴求しようとしている価値が、採用市場においてどれくらい使い古されているか、つまり「求職者への訴求価値の成熟度」を確認することです。
どんなに素晴らしい価値でも、誰も彼もが同じことを言っていたら「またその話か」と思われてしまいます。
ライバルたちの声にかき消されない、独自の「声の出し方」を見つけるための、極めて重要なステップです。
ミズサキが「採用メッセージの進化論」と呼ぶ各段階をご紹介します。
- 訴求価値の状態: その価値を訴求する企業が他にいない、市場初の状態。
(例:十数年前に、日本で初めて「完全リモートワーク」を本格導入した企業)
- 訴求方法: シンプルisベスト。「日本全国どこからでも働けます」とストレートに伝えるだけで、圧倒的なインパクトを持ちます。
- 訴求価値の状態: 競合が「ウチもリモートOKです!」と追随し始めた状態。
- 訴求方法: 「人よりうまくやる(Better)」戦略です。競合よりも優れた条件を提示し、差別化を図ります。「リモートOKなのは当たり前。ウチは光熱費や通信費も月〇万円まで補助します!」のように、より大きな約束で優位に立ちます。
- 訴求価値の状態: 「リモートOK」「成長環境あり」「風通しの良い社風」といった言葉が市場に溢れかえり、求職者がその言葉だけでは信じなくなっている、食傷気味の状態。
- 訴求方法: もはや「他の企業よりも優れている」状態では通用しません。ここで必要になるのが、「なぜ、それが可能なのか?」という独自の「メカニズム(仕組み)」です。訴求の主役が、「成果そのもの」から「成果を達成するプロセス」へと移るのです。「なぜ、当社ではリモートでも高い生産性を維持できるのか?その秘密は、全社員が使う自社開発のタスク管理ツールと、毎日15分の『雑談推奨タイム』にあります」のように、約束を裏付ける具体的な仕組みを語ることで、ありふれた言葉にリアリティと信頼性が宿ります。
- 訴求価値の状態: 競合も「メカニズム」を語り始めた状態。「ウチも独自のツールを使っています!」
- 訴求方法: そのメカニズムをさらに発展・強化させ、より洗練されたものとして見せます。「当社のタスク管理ツールがVer.3.0に進化。AIが次のタスクをサジェストしてくれるので、もう『次に何をすべきか』で迷いません」のように、メカニズムをより簡単に、より早く、より確実なものとして訴求します。
- 訴求価値の状態: その価値自体が、もはや魅力的でなくなった状態。
(例:「モーレツ社員」「24時間戦えますか」といった価値観)
- 訴求方法: この市場で戦うのは賢明ではありません。STEP1に戻り、訴求する価値そのものを見直す必要があります。
【ワーク】あなたの会社が訴求する価値の「訴求価値の成熟度」はどのレベルですか?
例:「若いうちから裁量権がある」という価値を訴求する場合
特にベンチャー・スタートアップ界隈では、もはや「標準装備」とも言えるほど、多くの企業が「裁量権」「成長環境」を謳っています。
これは間違いなく「成熟度3」の市場です。 であれば、「裁量権があります!」と叫ぶのは、もはや雑音でしかありません。 求職者の心に届けるべきは、その言葉の「中身」です。
「なぜ、当社では入社1年目の社員が、臆することなく数千万円の予算を動かせるのか?そのメカニズムを、包み隠さずお話しします」といった切り口が有効です。 そのメカニズムとは、例えば失敗を個人の責任にせず、組織の学びとして次に活かすための『失敗共有会』という文化」「ベテランがメンターとして伴走する『1on1制度』」「3ヶ月ごとに目標と成果をすり合わせる『リアルタイム評価制度』」といった具体的な事実です。
これらを語ることで、使い古された「裁量権」という言葉が、あなたの会社だけが持つ、血の通ったストーリーとして輝き始めるのです。
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さて、ここまでの長く、しかし不可欠な準備によって、「誰に(ターゲットの欲求)」「何を(一つの強い価値)」「どのように(認知度と成熟度に合わせた切り口)」伝えるべきかが、解像度高く明確になりました。
ここからは、いよいよ求人原稿の具体的な「書き方」に入っていきます。
キャッチコピーは、情報の大海を泳ぐ求職者が、あなたの会社の原稿に一瞬だけ注意を向けてくれるかどうかが決まる、運命の数秒間です。
ここで興味を引けなければ、魂を込めて書いた本文は永遠に読まれません。
絶対に覚えておいてほしい原則は、「機能(Feature)ではなく、効用(Benefit)を語る」ということです。
機能(Feature)と効用(Benefit)の違い
機能(Feature) 会社や仕事の物理的な特徴、スペック。事実の羅列。 例:「年間休日125日」「フレックスタイム制導入」「資格取得支援制度あり」
効用(Benefit) その機能によって、求職者の生活や人生がどう豊かになるか。未来の体験。 例:「週末はしっかり休んで趣味のキャンプへ。長期休暇で海外旅行を楽しむ先輩も」「朝は子供を保育園に送ってから、余裕をもって10時に出社」「未経験からでも、一生モノの専門スキルを身につけ、どこでも通用する人材へ」
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「ドリルを売るには穴を売れ」の考え方です。
求職者は「フレックスタイム制」という制度が欲しいのではありません。
その先にある「自分のライフスタイルに合わせて、ストレスなく働ける毎日」という未来が欲しいのです。
応募ボタンを押させるのは、常にこの「効用(ベネフィット)」です。
そして、キャッチコピーで伝えるベネフィットは、STEP1で決めたたった一つの欲求に、徹底的に絞り込んでください。
人間の注意は非常に限られた資源です。
選択肢が多すぎると、脳は「選ぶ」ことを放棄してしまいます(決定麻痺)。
最も強く、最も響くメッセージを、一つだけ研ぎ澄まして投げかけるのです。
キャッチコピーという扉を開け、本文を読み進めてもらえたらしめたもの。
ここでの役割は、求職者の心の内側にある3つの強力なエンジン、「欲求」「アイデンティティ」「信念」をフル稼働させ、「この会社に応募するのは、もはや必然だ」という状態に導くことです。
人は論理だけでは動きません。
心を動かすのは、いつだって感情です。
この3つの動機は、その感情の源泉なのです。
まずは、求職者が元々持っている「こうなりたい」「この悩みを解決したい」という欲求の炎に、ガソリンを注ぎ込む作業です。
あなたの会社に入社することで、いかに素晴らしい未来が手に入るかを、五感に訴えかけるように、ありありと想像させるのです。
未来の描写(鮮明に)
「入社3年後、あなたはどんな景色を見ていますか?高層ビルのオフィスから東京の夜景を眺め、海外のクライアントと英語で談笑しているかもしれません。手掛けているのは、社会インフラを支える数億円のプロジェクト。その中心に、あなたがいます」
読み手の主人公化(没入感)
「想像してみてください。月曜の朝、鳴り響くアラームに舌打ちするのではなく、『今週はあのお客様にどんな価値を提供しようか』と、自然と笑みがこぼれる自分を。仕事が『やらされるもの』から『自分を表現するもの』に変わる瞬間です」
先輩社員の証言(リアリティ)
「元々はアパレル販売員だった佐藤(入社5年目)。PCスキルもゼロからのスタートでした。彼女は言います。『まさか自分が、一部上場企業のマーケティング戦略を立案するなんて。でも、ここでは経歴なんて関係ない。あるのは、挑戦を全力で応援してくれる文化だけなんです』と」
ダメ押しの列挙法
原稿の最後に、畳み掛けるようにベネフィットのシャワーを浴びせます。「あなたが得られるもの:課題解決型の提案スキル、経営層へのプレゼン経験、生涯を共にできる最高の仲間、顧客からの心からの感謝の言葉、そして何より、仕事への揺るぎない誇り。そのすべてが、ここにあります。」
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人は「何をするか」だけでなく「何者であるか」によっても、所属する組織を選びます。
「自分はこういう人間でありたい」「周りからこう見られたい」という強力な欲求、それがアイデンティティです。
仕事を通じて、自分の理想像に近づけるというメッセージは、特に向上心の高い人材に強く響きます。
- 「最先端の技術を社会実装し、未来を創るエンジニア」
- 「地方の隠れた魅力を発掘し、地域活性化に貢献する仕掛け人」
- 「仕事も家庭も一切妥協せず、自分らしいキャリアを築くロールモデル」
当社で働くことは、単に給料をもらうことではありません。 それは、『日本のモノづくりを、次の100年に繋ぐ担い手になる』という、誇り高いアイデンティティを手にすることなのです。 |
といったように、会社のビジョンや事業の社会性を、求職者の自己実現と結びつけて語るのです。
これが最も高度でありながら、マスターすれば無類の説得力を発揮する、究極のテクニックです。
人は誰しも、自分なりの「物事の捉え方」や「価値観」(=信念)という、心の指針を持っています。
そして、人は自分の信じていることが正しいという証拠ばかりを集め(確証バイアス)、それに反する情報は無意識に無視・軽視する傾向があります。
だからこそ、相手の信念を正面から否定するのは最悪の選択です。
ではどうするか?
相手の信念という土俵に上がり、それに寄り添い、そこをスタート地点としてこちらの主張を組み立てるのです。
急な崖を登らせるのではなく、緩やかで安心なスロープを用意してあげるイメージです。
一歩一歩、「うん、そうだよね」と頷ける階段を登らせ、気づいた時にはこちらの主張する場所にたどり着いている。
これが「スロープ戦術」です。
採用シーンで、この戦術がいかに強力かを見てみましょう。
ターゲットは「とにかく若いうちは長時間働いてでも、圧倒的に成長したい」という信念を持つ、熱意ある若者。
しかし、あなたの会社は「生産性重視」で、残業を良しとしない文化です。
キャッチコピー
「成長の速度は、投下した時間ではなく『思考の密度』で決まる」ことを知る、未来のリーダーへ。
本文
「20代の働き方が、その後のビジネス人生のすべてを決めると言っても過言ではない」 あなたも、きっとそうお考えのことでしょう。 だからこそ、誰よりも成長できる環境を真剣に探しているはずです。 (↑相手の信念に深く同調し、強いYESを取る。「あなたは分かっている」というメッセージ)
世の中には 「若いうちの苦労は買ってでもせよ」 「誰よりも長くオフィスにいる者が、一番成長する」 という考え方が、今も根強く残っています。それも一つの真実です。 事実、多くの偉大な経営者は、若い頃、寝る間も惜しんで仕事に没頭したと語ります。 (↑相手が信じているであろう事実を一度受け入れ、肯定することで、警戒心を解く)
しかし、少しだけ立ち止まって考えてみてください。 彼らが活躍した時代と、私たちが生きる今とでは、「成長」を取り巻くルールが大きく変わったとは思いませんか?
令和の時代において、真に市場価値の高い人材とはどんな人物か。 私たちは、それは「限られた時間の中で、いかに高い付加価値を生み出せるか」、その生産性と思考の密度を追求できる人材だと確信しています。 (↑新しい視点を提示し、信念を「時間量」から「密度」へと、そっとずらす)
その理由は、極めてシンプルです。 クライアントが評価するのは、あなたが何時間働いたかではありません。 あなたがもたらした「成果」だけです。 12時間かけて100の成果を出すAさんと、8時間で120の成果を出すBさん。 長期的に見て、より重要な仕事を任され、より高い報酬を得るのはどちらでしょうか?答えは明白です。 (↑誰もが反論できない論理で、新しい信念の正当性を証明する)
したがって、当社では、いたずらに長時間働くことを一切評価しません。 その代わりに、創業以来培ってきた「最短で成果を出すための思考フレームワーク」を、入社後の研修で徹底的にインストールします。 だからこそ、当社の社員はプライベートを大切にしながらも、市場平均の1.5倍のスピードで、密度の濃い成長を遂げているのです。 (↑ここまでの流れがあるからこそ、こちらの主張・メカニズムが、論理的で魅力的な結論として響く)
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いかがでしょうか。
この「信頼の階段」を丁寧に築くことで、求職者は自らの信念を否定されることなく、むしろ「自分の考えは正しかった。そして、この会社はさらにその先を行っている」と感じ、強い共感と信頼を抱くのです。
求人媒体にもよりますが、各項目の字数が多い媒体では、積極的にチャレンジしていきましょう。
今回のノウハウは、自社サイトの採用ページ(自由度が高い)にも使うことができます。
今回は、マーケティングとコピーライティングの視点を取り入れた求人原稿の書き方について、理論から実践まで、かなり深く掘り下げて解説しました。
最後に、今日の学びを凝縮しておさらいしましょう。
【準備編】魂を込める前の、徹底した下ごしらえ
- STEP1:価値の特定
自社の価値を棚卸し、求職者の「緊急性・持続性・規模」の大きい欲求に応える「たった一つの価値」に絞り込む。
- STEP2:認知度の確認
自社の認知度レベルを客観視し、求職者との「会話のスタート地点」を間違えない。
- STEP3:成熟度の確認
訴求価値の市場の成熟度を把握し、「なぜ実現できるのか」という「独自のメカニズム」を語る準備をする。
【実践編】心を動かし、応募を必然にする構成術
- キャッチコピー: 「機能」ではなく「効用(ベネフィット)」を、たった一つだけ伝える。
- 本文: 「欲求」「アイデンティティ」「信念」という3つの内発的動機を揺さぶる。特に「グラデーション戦術」で信頼の階段を築き、応募を必然へと導く。
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求人原稿は、単なる事務的な「お知らせ」ではありません。
まだ見ぬ未来の仲間に対して、自社の魅力を伝え、心を動かし、その人の人生をより良くするための行動を促す、「最高のプレゼンテーション」です。
そして、その根底にあるべきは、求職者という「一人の人間」に真摯に向き合い、その人のキャリアが、人生が、より輝くための提案をする、という誠実なスタンスです。
今回お伝えしたマーケティング的アプローチは、その想いを正しく、強く届けるための思考法に他なりません。
さあ、まずはあなたの会社にとって「当たり前」になっている素晴らしい価値を、一つひとつ書き出すことから始めてみませんか?
ミズサキ株式会社は、これからも情熱ある中小企業の皆様の採用活動に伴走してまいります。
あなたの会社にしかないその輝きを、未来の仲間に届けるお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。