求人票は原則何を書いても良いもので、求職者の知りたいであろう情報は積極的に盛り込むべきとお伝えしました。
ただ、「法律目線」は守らなければなりません。
ハローワークは公的機関です。提出された求人票はチェックされています。法律を遵守した上で、自由に求人原稿を書いていきましょう。
今回は求人原稿作成時に、特に気を付けるべき法律を6つご紹介します。
労働者の労働条件の最低基準を定めている法律です。
たとえ労働者、求職者が納得した上で労働契約を結び働いていたとしても、労働基準を下回る条件は無効になります。
労働基準法は全ての労働者が対象となるため、常勤、非常勤いずれにも適用されます。
労働基準法の中でも特に抑えるべき内容は下記の7つです。
賃金の支払いは通貨で、直接、全額を、毎月1回以上、定められた期日に支払わなければなりません。
物や株で支払うということは出来ません。
また、求人作成時には、「必ず支払うことができる」支払日を記載しなければなりません。
労働者には、原則1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけない規定があります。
休息時間は、労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休息時間を与えなければなりません。
残業と呼ばれる時間外労働や休日での勤務をさせる場合には、36協定と呼ばれる時間外・休日労働に関する使用者と労働者間の協定を締結した上で、事前に所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
したがって、求人作成時には求人票の「時間外労働時間」欄に協定内容を基にした情報を記載することが求められます。
時間外労働をさせる場合には割増賃金の支払が必要になります。
時間外労働に対する割増賃金は、通常の賃金の25%以上となります。
休日労働に対する割増賃金は、通常の賃金の35%以上です。
午後10時から翌日午前5時までの間に労働させることを深夜業と言いますが、深夜業に対する割増賃金は時間外労働と同じく25%以上となります。
労働者を解雇する際に、解雇前にあらかじめ解雇を予告しなければならない決まりです。
従業員を解雇するときは、少なくとも30日前に予告することが義務付けられています。
ただし、解雇予告手当を支払うことにより、予告しないで解雇することも可能です。
契約期間に定めのある労働契約(有期労働契約)の期間は、原則として上限は3年です。
例外的に、専門的な知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者との労働契約については上限が5年とされています。
使用者は、有期労働契約によって労働者を雇い入れる場合は、その目的に照らして、契約期間を必要以上に細切れにしないよう配慮しなければなりません。
また、契約期間に定めのある労働者については、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間において労働者を解雇することができません。
業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければならない決まりです。
年次有給休暇の付与日数の上限は6年6ヵ月以降、継続勤務した場合に最大20日間です。
また、継続して3年6ヶ月勤務した場合は年に10日の有給休暇が付与され、この年から有給取得年5日の義務が適用されます。
働く権利に関する法律で、国民が自由に職業を選択できるように定められています。
求人者は求職者に対して、仕事内容、賃金、労働時間、その他の労働条件を明示しなければなりません。
さらに、労働条件の明示は、求職者に誤解を与えないよう、分かりやすい言葉で行わなければなりません。
求人原稿作成時には、明瞭に記載することを意識してください。
求人者は募集や採用に際して性別を理由とする差別をしてはなりません。
男女均等な取り扱いをすることが定められています。
また、業務上の合理的な理由がない場合において、労働者の身長・体重、体力や、転居を伴う転勤への対応を必要な条件とすることは間接差別として禁止されています。
求人作成時にはこうした差別と捉えられる記載をすることはできません。
<記載例>一方の性を排除していないことが分かる表現をする
- 営業マン→営業スタッフ
- カメラマン→撮影スタッフ
- 看護婦→看護師
- 女将→支配人
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ただし、業務の正常な遂行上、一方の性が適していると認められる場合には性別を指定した募集が可能です。
また、「ポジティブアクション」のための特別措置では、性別の指定が可能です。
ポジティブアクション:男女の均等な機会、待遇の確保の支障となっている事情を改善するために取り扱う措置。
たとえば、女性労働者の割合が4割を下回っている場合は事実上の格差が生じていると認められ、ポジティブアクションを講じることができます。
経済・社会の発展・完全雇用の達成、労働者の職業の安定に資することを目的とした法律です。
応募者が年齢ではなく本人の能力や適正に応じて活躍の機会が得られるように、年齢制限の禁止が定められています。
したがって、基本的に求人原稿中に年齢制限の記載をすることはできません。
<記載例>職場の状況や事実、業務に必要な能力として表現する
- 若い男性歓迎→20代の男性が60%を占める職場です。
- 高齢女性歓迎→お客さんは高齢な女性が9割で、お客さんの気持ちを経験として取り入れた提案を行っています。
- 体力のある方歓迎→40キロ程度の荷物の上げ下ろしがあります。
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労働者の賃金の最低限度を定めているものです。
最低賃金は、都道府県ごとに最低賃金審議会の調査審議に基づき毎年決定されます。
求人作成時にはこの最低賃金を下回ることは出来ません。
2024年度最新版での各都道府県の最低賃金は下記の通りです。
最低賃金と月の労働時間をかけ合わせた金額を、月給の下限で下回らないようにしましょう。
また、月給の振れ幅が大きいと求職者は「実際の金額はいくらなのか?」と疑問や不信感を持ってしまうことがあります。
採用人物像から導き出した適正な賃金の幅を設定しましょう。
都道府県 |
最低賃金
|
北海道 |
1,010円 |
青森県
|
953円 |
岩手県 |
952円 |
宮城県 |
973円 |
秋田県 |
951円 |
山形県 |
955円 |
福島県 |
955円
|
茨城県 |
1,005円 |
栃木県 |
1,004円 |
群馬県 |
985円
|
埼玉県 |
1,078円 |
千葉県 |
1,076円 |
東京都 |
1,163円 |
神奈川県 |
1,162円 |
新潟県 |
985円 |
富山県
|
998円 |
石川県 |
984円 |
福井県 |
984円 |
山梨県 |
988円 |
長野県 |
998円 |
岐阜県 |
1,001円 |
静岡県 |
1,034円
|
愛知県 |
1,077円 |
三重県 |
1,023円 |
滋賀県 |
1,017円 |
京都府 |
1,058円 |
大阪府 |
1,114円 |
兵庫県 |
1,052円 |
奈良県 |
986円 |
和歌山県 |
980円 |
鳥取県 |
957円 |
島根県 |
962円 |
岡山県 |
982円 |
広島県 |
1,020円
|
山口県 |
979円 |
徳島県 |
980円 |
香川県 |
970円 |
愛媛県 |
956円 |
高知県 |
952円 |
福岡県 |
992円 |
佐賀県 |
956円 |
長崎県 |
953円 |
熊本県 |
952円 |
大分県 |
954円 |
宮崎県 |
952円 |
鹿児島県 |
953円 |
沖縄県 |
952円 |
▼最低賃金の計算はこちらから▼
若者自らが自分に合った仕事を選択することができ、スキルアップや開発を進められるようにすることを目的とした決まりです。
この法律を基にして、厚生労働省では若者を募集・採用する求人者が講ずべき措置を指針としてまとめています。
職場情報について、企業規模を問わず、(ⅰ)幅広い情報提供を努力義務化、(ⅱ)応募者等から求めがあった場合は、以下の3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務としています。
提供する情報:(ア)募集・採用に関する状況、(イ)職業能力の開発・向上に関する取組の実施状況、(ウ)職場への定着の促進に関する取組の実施状況
特に若者を採用する場合には、求人作成時に上記の情報を意識的に記載することが大事です。
求人票作成時に気をつけるべき6つの法律をご紹介しました。
ルールを守ったうえで、最大限の効果を発揮する求人原稿を自由に作っていきましょう。