自社のホームページや採用サイトを作るとき、必ずと言っていいほど求められるのが「代表メッセージ」や「社長挨拶」です。
しかし、いざパソコンに向かうと、「何から書き出せばいいのか分からない」「かっこいい言葉を使おうとして筆が止まってしまう」と悩むことはありませんか。
あるいは、ありきたりな定型文になってしまい、「これで本当に自社の魅力が伝わるのだろうか」と不安を感じている方もいるかもしれません。
経営者や広報担当の方にとって、頭の中にある熱い想いを文章にする作業は、最も難易度の高いタスクの一つです。
この記事では、数多くの人気企業サイトを徹底分析し、共通する「成功法則」を抽出しました。
そのまま使える「シーン別テンプレート」、あなただけのオリジナルの言葉を引き出す「セルフインタビューシート」もご用意しています。
最後まで読んでいただければ、顧客や取引先からの信頼を高め、求職者の胸を熱くする、あなたらしい代表メッセージが完成しているはずです。
なぜ、ホームページに「代表メッセージ」が必須なのか?
多くの企業サイトにおいて、代表メッセージや社長メッセージは単なる「儀礼的な挨拶」として扱われがちです。しかし、現代のWebマーケティングにおいて、このページは企業の「顔」として極めて重要な役割を担っています。
なぜなら、ユーザーは商品やサービスのスペック以上に、「誰が提供しているのか」という情報を重視し始めているからです。
ステークホルダーは「誰が」経営しているかを見ている

ホームページを訪れるのは、商品を購入する顧客だけではありません。
新規取引を検討している企業の担当者、融資を審査する金融機関、あるいは将来的な出資を考えている投資家など、あらゆるステークホルダーが閲覧します。
特にB2Bビジネスや高額なサービスの場合、取引先としての信頼性を判断する最終的な決め手は「人」です。
「この代表はどのような理念を持っているのか」「困難な状況でも誠実に対応してくれそうか」といった人間性を、メッセージを通じて確認しようとします。
顔写真とともに、自身の言葉で誠実に語られたメッセージがあれば、会う前から相手に安心感を与えることができます。
一方で、形式だけの薄い内容であったり、そもそも代表の言葉がなかったりすれば、「顔が見えない企業」として不安要素になりかねません。
代表メッセージや社長挨拶は、24時間365日、あなたの代わりにステークホルダーへ信頼を届ける優秀な営業マンのような存在なのです。
採用活動における最強の「ミスマッチ防止」ツール
近年、採用市場は売り手市場が続き、条件面だけで優秀な人材を確保するのは困難になっています。
給与や休日といった待遇は比較されやすく、より良い条件の競合他社がいればすぐに人材は流出してしまいます。
そこで重要になるのが、代表メッセージによる「想い」の発信です。
「なぜこの事業をやっているのか」「将来どんな社会を作りたいのか」という情熱やビジョンは、他社が絶対に真似できない独自のコンテンツです。
このメッセージに深く共感して応募してくれた求職者は、入社後のモチベーションが高く、早期離職のリスクも低い傾向にあります。
いわゆる「ミスマッチ」を防ぎ、同じ方向を向いて走れる仲間を集めるために、代表メッセージは最強のフィルタリングツールとして機能します。
書くことがないとは言わせない!想いを引き出す「代表挨拶の準備」
いざ文章を書こうとして、パソコンの前で何時間も固まってしまった経験はないでしょうか。
筆が進まない最大の原因は、文章力の欠如ではありません。料理をする前に冷蔵庫が空っぽであるのと同じで、書くための「素材」が手元にないことが原因です。
いきなり綺麗な文章を書こうとする必要はありません。まずはリラックスして、あなたの頭の中にある想いやエピソードを、素材として書き出す作業から始めましょう。
ここでは、誰でも迷わずにストーリーを構築できるフレームワークと、独自の言葉を引き出すための質問シートをご紹介します。
迷わず書ける「黄金の3部構成(過去・現在・未来)」
代表メッセージには、読み手の心を掴む鉄板の構成が存在します。
それが「過去・現在・未来」という時間軸に沿って展開するストーリー構成です。
この順番に従って素材を埋めていけば、論理的でありながら、感情に訴えかけるメッセージが自然と出来上がります。
自社の独自性を掘り起こす「セルフインタビューシート」
構成の枠組みが理解できたら、次は中身となる具体的な言葉を集めましょう。
かっこいい言葉を探す必要はありません。以下の5つの質問に対して、思いつくままに箇条書きで答えを出してみてください。
これが、後ほど紹介するテンプレートに命を吹き込む、あなただけのオリジナル素材になります。
| 想いを引き出す5つの質問 |
| 1. 創業時や事業開始時に、一番苦労したことや悔しかったことは何ですか? |
失敗談や泥臭いエピソードほど、人の心を動かします。 |
| 2. これまでの仕事の中で、顧客から言われて最も嬉しかった言葉は何ですか? |
その言葉の中に、あなたの会社が提供している本質的な価値が隠れています。 |
| 3. 社員に対して、これだけは守ってほしいと伝えている約束事は何ですか? |
譲れないこだわりや企業文化が如実に表れる部分です。 |
| 4. 今の業界や社会に対して、変えたいと思っている課題は何ですか? |
ビジネスの社会的な意義や目的意識を明確にします。 |
| 5. 10年後、会社はどのような姿になっていたいですか? |
規模の拡大だけでなく、どのような存在として社会に関わっていたいかを想像します。 |
これらの質問への答えをメモしておくだけで、ありきたりな定型文とは一線を画す、血の通ったメッセージを作る準備は完了です。
【コピペOK】シーン別・代表メッセージの例文テンプレート
前のセクションで、あなただけの「想いの素材」は集まりましたか?
ここからは、それらの素材を当てはめるだけで完成する、実用的なテンプレートをご紹介します。
そのままコピーして使うことも可能ですが、効果を最大化するためには、( )で囲った部分に、先ほどの「セルフインタビューシート」で書き出したあなた自身の言葉を入れてみてください。
少しの手間で、誰の言葉でもない、血の通ったオリジナルメッセージに生まれ変わります。
1. スタンダード(信頼・誠実さ重視/コーポレートサイト用)
まずは、最も汎用性が高いスタンダードな構成です。
取引先企業や金融機関、株主など、ビジネス上のステークホルダーに対して「信頼できるパートナー」であることを伝えるのに適しています。
奇をてらわず、誠実な姿勢と事業の社会的な意義を強調する構成になっています。
2. 情熱・ビジョン重視(共感・熱意重視/採用サイト・ベンチャー用)
次は、求職者や若い世代に向けた、少し砕けたトーンのメッセージです。
採用サイトや、革新的なベンチャー企業のコーポレートサイトに向いています。
ここでは「安定」よりも「挑戦」や「変化」をキーワードにし、代表自身の熱量をストレートに伝えることが重要です。
3. 創業・リニューアル・事業承継時(決意表明)
最後は、会社の節目となるタイミングで発信するメッセージです。
創業時の高揚感、あるいは代替わりやリニューアルに際しての新たな決意表明として活用してください。
過去への感謝を述べつつも、視線はしっかりと未来を向いていることを示すのがポイントです。
「定型文」で終わらせない!記憶に残る社長メッセージにするブラッシュアップ術
テンプレートを使って下書きは完成しましたか?
この段階ではまだ、どこか他所の会社でも言えそうな「行儀の良い文章」になっているかもしれません。
ここからは、その原石を磨き上げ、読み手の記憶に深く刻まれるプロレベルのメッセージへと昇華させるテクニックをお伝えします。
【添削事例】「事実の羅列」を「想いの吐露」に書き換える
多くの代表挨拶が退屈に感じられてしまう最大の原因は、単なる「事実の報告」に終始している点にあります。
「創業〇〇年を迎えました」「売上が〇〇億円になりました」といった事実は、会社概要ページを見れば分かる情報です。
代表メッセージで伝えるべきは、その事実の裏にある「あなたの感情」や「解釈」です。
具体的な添削例を見てみましょう。
| 修正前(事実のみ) |
修正後(事実+想い) |
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弊社は本年で創業10周年を迎えました。
これもひとえにお客様のご支援のおかげです。
今後も社員一同、技術力の向上に精進してまいります。
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創業からの10年間は、決して順風満帆ではありませんでした。
変化の激しい時代の中で、何度も壁にぶつかり、眠れない夜も過ごしました。
しかし、「お客様の笑顔が見たい」という創業時の想いだけは、一度もブレたことはありません。
その一心で走り続けた結果、素晴らしい仲間に恵まれ、今日を迎えることができました。
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修正前の文章は、誰が書いても同じ内容に見えます。
一方、修正後は「苦労があったこと」「想いがブレなかったこと」が加わることで、代表者の人間味が伝わり、読み手は物語として受け取ることができます。
専門用語(社内用語)を捨て、中学生にも伝わる言葉で
経営者の方ほど、知らず知らずのうちに難解なビジネス用語や業界用語を使ってしまいがちです。
「シナジーを最大化する」「パラダイムシフトを起こす」「ソリューションを提供する」。
これらは響きこそかっこいいですが、読み手にとっては具体的なイメージが湧きにくく、心の距離を遠ざける原因になります。
特に、異業種の取引先や、まだ社会に出たことのない学生・求職者にとって、これらの言葉は「自分たちに向けて語られていない」という疎外感を与えかねません。
本当の知性とは、難しいことを難しく語ることではなく、誰にでも分かる言葉で語れることです。
意識していただきたい基準は、「中学3年生が読んでも理解できるか」です。
「シナジー」なら「お互いの強みを掛け合わせる」、「ソリューション」なら「困りごとの解決策」と言い換えてみてください。
文章以外で差をつける!「読ませる」ための演出テクニック
どれほど素晴らしい文章を書いても、Webサイトの訪問者がそれを一言一句丁寧に読んでくれるとは限りません。
悲しい現実ですが、多くのユーザーはスマートフォンで画面を素早くスクロールし、気になった部分だけを「つまみ食い」するように情報を摂取しています。
そのため、文字情報だけでなく、視覚的な演出(UI/UX)でユーザーの視線をコントロールすることが不可欠です。
ここでは、一瞬で「この会社は良さそうだ」と直感させ、スクロールの手を止めさせるための演出テクニックを解説します。
写真の選び方(笑顔 vs 真剣な眼差し)
代表メッセージのページにおいて、文章と同じか、それ以上に雄弁なのが「代表者の顔写真」です。
心理学の「メラビアンの法則」でも知られるように、人が受け取る情報の半分以上は視覚情報が占めています。写真の印象が、そのまま企業の第一印象になると考えてください。
重要なのは、「どのような企業に見られたいか」によって表情や服装を戦略的に使い分けることです。

親しみやすさを伝えたい場合 (採用、サービス業、フラットな組織) |
信頼や威厳を伝えたい場合 (金融、B2B、高度な技術職) |
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歯を見せた自然な笑顔の写真を選びましょう。服装もノーネクタイやオフィスカジュアルなど、少し崩したスタイルが効果的です。 「この社長なら話しやすそうだ」「風通しの良い職場だろう」という安心感を与え、心理的なハードルを下げることができます。
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背筋を伸ばし、真剣な眼差しで正面を見据えた写真が適しています。服装は体にフィットしたダークスーツが良いでしょう。 「この人なら仕事を任せても大丈夫だ」「誠実に遂行してくれるだろう」というプロフェッショナルな信頼感を醸成します。
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可能であれば、自撮りやスナップ写真ではなく、プロのカメラマンに撮影を依頼してください。ライティング(照明)一つで、清潔感や信頼感は劇的に変わります。
写真への投資は、企業ブランディングにおいて費用対効果の高い施策の一つです。
「キーセンテンス」を見出し化して視線を止める
ユーザーが流し読みをすることを前提に、絶対に伝えたい「魂の一文」を目立たせる工夫をしましょう。
文章の中に埋もれさせておくのではなく、その一文を抜き出し、大見出しやキャッチコピーとしてデザイン処理を施すのです。例えば、以下のようなレイアウトをイメージしてください。

| 良い例 |
悪い例 |
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「迷ったら、お客様が笑顔になる方を選ぶ」 (その下に本文が続く)...私たちは創業以来、この言葉を判断基準にしてきました。いかなる時も...
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(長い文章が延々と続く)...私たちは創業以来、お客様第一主義を貫いてきました。いかなる時も...
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このように、キーセンテンスを大きく表示することで、高速でスクロールしているユーザーの目に強制的に飛び込ませることができます。
「おっ、何か良いことが書いてありそうだ」と興味を惹くことができれば、その下の本文も読んでもらえる確率は格段に上がります。
どうしても書けない時・より良くするためのヒント
ここまで、ご自身で執筆するためのテクニックをお伝えしてきましたが、それでも「やはり自分の文章力には自信がない」「忙しくてじっくり考える時間が取れない」という方もいらっしゃるでしょう。
あるいは、さらにもう一段階、クオリティを高めたいと考えているかもしれません。
無理に一人で抱え込む必要はありません。
ここでは、外部のリソースやプロの力を借りて、最短距離でゴールにたどり着くためのヒントをご紹介します。
参考になる「他社事例」の上手な探し方
イメージが湧かないときは、すでに公開されている優れた代表挨拶を参考にするのが一番の近道です。
ただし、単にGoogleで「同業他社」を検索するだけでは不十分です。同業者のサイトばかり見ていると、どうしても業界特有の言い回しや定型文に引きずられ、似たり寄ったりの内容になってしまうからです。
おすすめなのは、「Webデザインギャラリーサイト」を活用する方法です。
これらは、デザイン性に優れたホームページを集めたリンク集のようなサイトです。(例:「S5-Style」や「MUUUUU.ORG」など)
こうしたサイトに掲載されている企業は、デザインだけでなくコンテンツ(文章)にもこだわっているケースが多くあります。ギャラリーサイトで、あえて「異業種」の代表挨拶を読んでみてください。IT企業の先進的な表現や、老舗メーカーの実直な語り口など、自社の業界では見かけない新鮮な切り口が見つかるはずです。
「この表現いいな」「この構成は真似できそうだ」と感じた要素をストックし、自社のメッセージに取り入れていくことで、独自性は磨かれていきます。
プロ(ライター)にインタビュー代行を依頼する
「話すのは得意だけど、書くのは苦手」
これは、多くの経営者に共通する悩みです。
伝えたい熱い想いはあるのに、文字にしようとすると固くなってしまう。そのような場合は、思い切ってプロのライターに執筆を依頼するのも賢い選択です。
特に「インタビュー取材」を行ってくれる制作会社やライターをおすすめします。単なる代筆ではなく、対話を通じてあなたの想いを引き出し、客観的な視点で整理してくれるからです。
「なぜそう思ったのですか?」「具体的にはどんなエピソードですか?」と深掘りされることで、自分ひとりでは気づかなかった会社の魅力や強みが言語化されることも珍しくありません。
費用はかかりますが、代表メッセージは数年にわたって掲載し続ける資産です。
プロの手を借りてでも、納得のいくものを作る価値は十分にあります。
>> 1記事3万円で取材費込み!採用広報代行「リクルーティングPR-X」はこちら
一度書いて終わりではない!定期的なアップデート
代表メッセージは、一度書いたら永遠に変えてはいけない石碑のようなものではありません。会社の成長や社会情勢の変化に合わせて、常にアップデートしていくべき「生きたコンテンツ」です。
「完璧な文章ができるまで公開しない」と考える必要はありません。まずは60点の出来栄えでも構いませんので、今のあなたの想いを世に出してみてください。Webサイトの最大の利点は、いつでも修正ができることです。
1年後、会社が成長していれば、見える景色も語るべき言葉も変わっているはずです。その時々に合わせてメッセージを書き直すこと自体が、企業が進化し続けている証拠にもなります。
代表メッセージ作成に関するよくある質問(FAQ)
最後に、代表メッセージを作成する際によくいただく質問とその回答をまとめました。
細かい部分で迷ったときの判断基準としてご活用ください。
まとめ
ここまで、代表メッセージの重要性から具体的な構成、心を動かす表現テクニックまで解説してきました。
最後に改めてお伝えしたいのは、「うまい文章を書こうとしなくていい」ということです。テンプレートや構成案といったテクニックは、あくまであなたの想いを伝えるための「器」に過ぎません。読み手の心を最後に動かすのは、流暢な言い回しでも、難しいビジネス用語でもなく、不器用でも本音で語られたあなたの「熱意」です。
- 「なぜ、この事業をやっているのか」
- 「誰を幸せにしたいのか」
その答えを持っているのは、世界中であなた一人だけです。
ぜひ、記事の前半で紹介した「5つの質問(セルフインタビューシート)」への答えを書き出してみてください。その書き殴ったメモの中にこそ、誰にも真似できない、あなただけの最高のメッセージの種が眠っています。あなたの熱い想いが、未来の顧客や仲間に届くことを、心より応援しています。