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採用ペルソナとは?ターゲットとの違い・作り方・職種別項目例を全解説【テンプレート付】

採用ペルソナとは?ターゲットとの違い・作り方・職種別項目例を全解説【テンプレート付】
  • 公開日:2025/12/10
  • 更新日:2025/12/10
藤村俊太郎
この記事を書いた人
藤村俊太郎

愛知県知多市出身。愛知県立明和高校→慶應義塾大学卒業。高卒採用・大卒採用・中途採用のプロフェッショナル。年間4,000件以上の採用をマッチングさせる転職サービスの開発・運用を経験。自社採用部署における、新卒採用の立ち上げ・採用広報部署の立ち上げ・社員定着戦略/仕組みの構築を行う。採用戦略の構築とインハウス化が得意。

「面接では素晴らしい人材だと思ったのに、入社後になかなか活躍してくれない」
「現場の責任者から『もっといい人材はいないのか』と不満を言われる」

このように、採用した人材と現場が求めるレベルとのミスマッチに頭を抱えている人事担当者は少なくありません。

現在の日本は売り手市場が続いており、働き方の価値観も多様化しています。そのため、従来の学歴や年齢、経験社数といったスペック重視の採用基準だけでは、自社に本当にフィットする人材を見つけることが難しくなっているのが実情です。

そこで本記事では、マーケティングの概念であるペルソナを採用活動に応用し、本当に自社で活躍できる人物像を明確にする方法を解説します。

単なる理論の解説にとどまらず、職種別の具体的な設定例や、実際の求人票、面接への落とし込み方まで、現場ですぐに使えるノウハウを網羅しました。ここで紹介するのは、多くの採用成功企業が実践しているハイパフォーマー分析に基づいた、再現性の高い設計メソッドです。

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採用ペルソナとは?なぜ今重要なのか

採用ペルソナとは、自社で最も活躍できる人材を具体的な架空の人物モデルとして定義したものです。

氏名、年齢、経歴といった基本情報だけでなく、仕事に対する価値観、ライフスタイル、現在抱えている悩み、将来のキャリアビジョンまで詳細に設定します。

採用ペルソナ構成要素

なぜ今、この採用ペルソナが重要視されているのでしょうか。

最大の理由は、採用ミスマッチの防止と採用活動の効率化です。

加えて、労働者の価値観が多様化している現代において、自社が選ばれる企業になるためには、求職者一人ひとりのインサイト(深層心理)に刺さる訴求が必要不可欠だからです。

【図解】ペルソナとターゲットの決定的な違い

よく混同されがちなのが「ターゲット」と「ペルソナ」です。この2つは似て非なるものであり、採用活動においては明確に使い分ける必要があります。

ターゲットは属性で絞り込まれた集団を指すのに対し、ペルソナはその集団の中にいる特定の一人の人格を指します。以下の比較表をご覧ください。

項目 ターゲット(集団・属性) ペルソナ(個人・人格)
定義 共通する属性を持つグループ 実在しそうな一人の架空人物
設定項目 年齢、性別、居住地、職歴、年収 ターゲット項目 + 価値観、性格、悩み、趣味、情報収集源
具体例 20代後半、男性、都内在住、法人営業経験3年以上 佐藤健太(28歳)、IT営業5年目、今の悩みは「売上至上主義で顧客に向き合えないこと」、顧客の課題解決にやりがいを感じる
解像度 低い(人によってイメージが異なる) 高い(誰が見ても同じ人物を想像できる)
目的 母集団形成の範囲を決める 訴求内容や評価基準を具体化する

「ターゲット」と「ペルソナ」

ターゲット設定だけでは不十分な理由は、解像度の低さにあります。「20代の営業経験者」とだけ伝えても、面接官Aさんは「ガツガツした新規開拓が得意な人」を想像し、面接官Bさんは「丁寧なルート営業が得意な人」を想像するかもしれません。

この認識のズレが、選考基準のブレを生み、入社後のミスマッチを引き起こす原因となります。ペルソナを設定することで、関係者全員が「佐藤健太さんのような人」という共通のイメージを持つことができ、このズレを解消できます。

これは求職者側の視点でも同様です。dodaが公表した「転職理由ランキング」によると、転職を決意した理由の上位には「給与」だけでなく、「社内の雰囲気が悪い」「人間関係」といったソフト面の不満が常にランクインしています。

転職理由ランキング

1位 給与が低い・昇給が見込めない
2位 人間関係が悪い/うまくいかない
3位 社内の雰囲気が悪い

引用元:転職理由ランキング【最新版】 みんなの本音を調査!(doda)

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藤村
条件面などの「ターゲット情報」だけを見ていては、こうした求職者の本音(インサイト)にはたどり着けません。

採用ペルソナを導入する3つのメリット

採用ペルソナを導入することで得られるメリットは、大きく分けて以下の3点です。

1. 入社後のミスマッチ防止

スキルや経歴だけでなく、価値観や仕事へのスタンスまでマッチングを確認できるため、入社後の定着率が向上します。「能力はあるけれど社風に合わない」といった不幸なミスマッチを未然に防ぐことができます。

2. 採用工数の削減(効率化)

求める人物像が明確になることで、ターゲット外の人材へのアプローチや、合格可能性の低い応募者への面接対応といった無駄な工数を削減できます。エージェントに依頼する場合も、ペルソナを共有することで紹介の精度が高まります。

3. 社内認識の統一

「なんとなくいい人」「フィーリングが合う人」といった曖昧な採用基準がなくなります。面接官による評価のバラつきがなくなり、公平かつ適切な選考が可能になります。現場責任者と人事の間で「欲しかったのはこういう人じゃない」という揉め事が起きることもなくなるでしょう。

失敗しない採用ペルソナの作り方【5ステップ】

ここからは、実際に現場で使える採用ペルソナを作るための手順を5つのステップで解説します。

重要なのは、会議室で人事担当者だけで妄想を膨らませないことです。現場のリアルな声と事実に基づいた設計こそが、失敗しないための鉄則です。

採用ペルソナ作成ロードマップ

STEP1:現場ヒアリングとハイパフォーマー分析

最初のステップであり、最も重要なのが情報収集です。ゼロから理想像を描くのではなく、すでに自社で活躍している社員(ハイパフォーマー)をモデルにするのが、成功への最短ルートです。

現場の責任者や、実際に活躍している社員にインタビューを行い、その人の行動特性や価値観を深掘りしてください。以下のような質問項目を用いると、表面的なスキル以外の要素が見えてきます。

ヒアリングPOINT
  • 入社の決め手は何か(他社ではなく自社を選んだ理由)
  • 仕事をしていて一番やりがいを感じる瞬間はいつか
  • 逆に、最も苦労したことやストレスを感じることは何か
  • 普段どこから情報を得ているか(SNS、メディア、コミュニティ)
  • 将来どのようなキャリアを築きたいと考えているか
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藤村
これらの回答に共通する要素こそが、自社で活躍するための核となるコンピテンシー(行動特性)です。

STEP2:自社の魅力(EVP)と採用要件の整理

次に、集めた情報をもとに「求める要件」と「自社が提供できる価値(EVP)」を整理します。

多くの企業が「求める人物像」ばかりを列挙しがちですが、採用はマッチングです。ペルソナとなる人物が欲しているものを、自社が提供できなければ採用は成立しません。「裁量権がある」「チームの仲が良い」「最新技術に触れられる」など、自社の強みをペルソナのニーズと照らし合わせて言語化してください。

また、求めるスキル要件については、「Must(必須条件)」と「Want(歓迎条件)」に明確に分けることが重要です。

Must(必須) Want(歓迎)
これがないと業務遂行が不可能
(例:Javaでの開発経験3年以上)
あると望ましいが、入社後の習得でも可
(例:リーダー経験)

すべてを必須にすると、市場に存在しない人材になってしまうため注意が必要です。

STEP3:ペルソナの具体化(ストーリー作成)

整理した要件を組み合わせ、一人の人物としてのストーリー(物語)を作成します。

箇条書きのリストだけでは、まだ無機質なデータの集まりに過ぎません。「佐藤健太さん」という人格を持たせるために、以下のように文章化していきます。

採用ペルソナのストーリーの例

「佐藤健太、28歳。新卒で大手SIerに入社し、安定した環境でエンジニアとしての基礎を身につけた。」

「しかし、年功序列の風土や、仕様書通りの実装しかできない現状に物足りなさを感じている。」

「もっとユーザーの声に近い場所で、自分のアイデアを形にしたい。と考え、自社サービスを持つベンチャー企業への転職を検討し始めた。」

「週末は技術書を読んだり、個人開発をしたりと学習意欲が高い。」

「結婚を考えており、年収は維持したいが、それ以上にやりがいを重視している。」

このようにストーリー化することで、読み手である社内メンバーが感情移入しやすくなり、ペルソナへの理解が深まります。

STEP4:現場とのすり合わせ・合意形成

人事担当者が作成したペルソナのドラフトを、配属先の現場責任者や現場社員に見せ、すり合わせを行います。

人事の視点だけで作ると、どうしても現場の実態とズレが生じます。「現場の雰囲気になじみそうか」「今のチームに不足している要素を持っているか」を確認してください。

ここで最も有効な確認方法は、現場責任者に対して次のように問いかけることです。

「もし明日、このペルソナ通りの人物が面接に来たら、即決で採用を出しますか?」

この問いに対して「いや、もう少しここが欲しいかも」といった反応があれば、ペルソナの精度がまだ低い証拠です。

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藤村
全員が「絶対に採用したい」と即答できるレベルになるまで、ブラッシュアップを繰り返してください。

STEP5:採用市場との整合性チェック

最後に、完成したペルソナが現実の採用市場に存在するかどうかを確認します。

理想を詰め込みすぎた結果、市場に数%しかいない希少人材になっていたり、その人材を獲得するには相場よりも200万円高い年収が必要だったりするケースは珍しくありません。

転職サイトのデータベースを確認したり、エージェントにヒアリングしたりして、「この要件で、この給与レンジで採用可能か」を客観的に判断します。もし乖離が大きい場合は、Must要件を緩和するか、給与設定を見直すといった現実的な調整を行ってください。

採用ペルソナの設定項目リスト【テンプレート】

具体的な作成手順がイメージできたところで、実際にペルソナシートに落とし込むための項目リストを紹介します。

白紙の状態から考えるのは時間がかかるため、以下の項目をコピー&ペーストして、自社の状況に合わせて埋めていくことから始めてください。ポイントは、履歴書に書かれるような「基本情報」だけでなく、その人の人間性が表れる「内面」まで踏み込んで設定することです。

基本情報(ハード属性)と内面(ソフト属性)

ペルソナを構成する要素は、大きく分けて2つのカテゴリがあります。

1つ目は、年齢や経歴といった客観的な事実である「ハード属性」。2つ目は、価値観や性格といった主観的な要素である「ソフト属性」です。採用のミスマッチは、このソフト属性の掘り下げ不足から起こることが大半です。

基本情報(ハード属性)

基本情報 詳細
氏名 架空の名前(例:佐藤 健太)
年齢 具体的な年齢(例:28歳)
性別 男性/女性
居住地 通勤可能圏内か、リモート前提か
家族構成 独身、既婚、子供の有無(働き方の制約に関わる)
学歴 文系/理系、専攻分野
職歴 経験社数、在籍企業の特徴(大手/ベンチャー)、雇用形態
現在の年収 額面年収、賞与の有無
現在の役職 メンバー、リーダー、マネージャーなど

内面(ソフト属性)

内面・価値観 詳細
性格・気質 内向的/外向的、論理的/感情的、慎重/大胆
仕事の価値観 何にやりがいを感じるか(金銭、成長、安定、貢献など)
現職への不満・悩み 転職を考えたきっかけ(例:ルーチンワークばかりで成長できない)
転職で叶えたいこと 次の職場で絶対に外せない条件
将来のキャリアビジョン 3年後、5年後にどうなっていたいか
趣味・休日の過ごし方 インドア/アウトドア、個人/チーム
情報収集源 よく見るWebメディア、SNS、参加しているコミュニティ

【職種・状況別】設計の勘所(エンジニア/営業/新卒/リモート)

基本項目は共通ですが、募集する職種や状況によって、特に重視すべきポイントは異なります。ここでは、よくある4つのパターンについて、設計の勘所を解説します。

1. エンジニア採用の場合

使用言語や経験年数といった技術スタックは必須ですが、それ以上に「技術への向き合い方」を具体化してください。「業務時間外でもGitHubでコードを書いている技術探究型」なのか、「技術はあくまで手段と捉え、ビジネス貢献を重視するプロダクト志向型」なのか。このスタンスの違いが、開発チームのカルチャーフィットを左右します。

2. 営業職採用の場合

営業スタイルによるペルソナの切り分けが重要です。「高いインセンティブを求め、個人の数字を追いかけるハンター型」を求めているのか、それとも「顧客とじっくり信頼関係を築き、LTV(顧客生涯価値)を最大化するファーマー型」を求めているのか。自社の商材特性に合わせて、モチベーションの源泉(お金か、顧客貢献か)を明確にしましょう。

3. 新卒採用(ポテンシャル)の場合

新卒には職務経歴がありません。そのため、スキルではなく「原体験」と「成長意欲」に焦点を当てます。「学生時代に部活動で挫折し、それをどう乗り越えたか」といったエピソードから見える行動特性や、「なぜ働くのか」という労働観をペルソナに落とし込みます。今の能力よりも、素直さや吸収力といった伸びしろの要素を言語化することが成功の鍵です。

4. リモートワーク前提の場合

フルリモートやハイブリッドワークを前提とする場合、「自律性」と「テキストコミュニケーション能力」は必須要件となります。「上司の指示がなくても自らタスクを管理できる」「チャットだけで複雑な要件を正確に伝えられる」といった具体的な行動レベルまで落とし込んで設定してください。オフィスで隣にいれば解決できる問題も、リモートでは大きな障壁になるからです。

パーソル総合研究所の調査でも、テレワーク実施下における課題として「非対面でのコミュニケーションの難しさ」や「上司・同僚からの適時なサポートの不足」が上位に挙がっています。そのため、これらを補える自律的な行動特性がより一層求められるのです。

作って終わりではない!採用ペルソナの具体的な活用シーン

苦労して設計した採用ペルソナも、ただファイルに保存して満足してしまっては意味がありません。

ペルソナ設計の目的は、採用活動のすべての工程において「判断の軸」として使い倒すことです。ここからは、多くの企業が躓きがちな「実務への落とし込み方」について、具体的な事例を交えて解説します。

求人票・スカウト文面への反映(Before/After)

ペルソナを作ると、求職者に投げかけるメッセージが変わります。

これまでの「条件を羅列しただけの求人」から、「ペルソナの心に刺さる手紙のような求人」へと進化させることができます。以下の法人営業職の募集におけるBefore/Afterの例を見てください。

 Before:ペルソナ設計前の一般的な求人

項目 求人・スカウト文面の例
タイトル 【急募】法人営業職(リーダー候補)
必須要件 法人営業経験3年以上、基本的なPCスキル
仕事内容 既存顧客への提案営業および新規開拓をお任せします。
アピール 風通しの良い職場です。年間休日120日以上。

 After:ペルソナ設計後の求人

項目 求人・スカウト文面の例
ペルソナの悩み 「今の会社は売上至上主義で、顧客のためにならない商品を押し売りするのが辛い」
タイトル 顧客の課題解決に100%向き合いたいあなたへ。「売る」ことより「聞く」ことが評価される営業です。
メッセージ ノルマに追われて、顧客の本当の悩みを見落としていませんか?私たちは目先の売上よりも、顧客からの「ありがとう」の数を最重要指標に置いています。あなたの「聞く力」を、当社のカスタマーサクセスで存分に発揮してください。

Beforeは誰にでも当てはまる無難な内容ですが、Afterはペルソナが抱える「現状の不満」に寄り添い、解決策を提示しています。

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藤村
このように、ペルソナのインサイト(本音)を言語化することで、たった一人の「欲しい人材」を強烈に惹きつけることが可能になります。

選考基準・面接質問の設計

ペルソナは、面接における評価基準のブレを防ぐための最強のツールでもあります。

「コミュニケーション能力が高い」という要件一つとっても、面接官によって解釈は異なります。しかし、ペルソナで「顧客の話を最後まで遮らずに聞ける人(傾聴力)」と定義しておけば、全員が同じ視点で評価できます。

さらに、ペルソナの価値観を見極めるための質問集(構造化面接)を準備することをおすすめします。

価値観 チームワーク重視の場合 自律的な成長重視の場合
質問例 「チームの意見と自分の意見が対立したとき、あなたはどのように行動しましたか?具体的なエピソードを教えてください」 「直近半年間で、業務とは別に自ら学んだことや、スキルアップのために取り組んだことは何ですか?」

このように、「ペルソナならどう答えるか」という模範解答を持っておくことで、面接官の主観に頼らない公平な合否判定ができるようになります。

このように、あらかじめ定義した基準(ペルソナ)に基づいて質問項目を決めておく手法は「構造化面接」と呼ばれ、Google社の採用研究機関(re:Work)においても、「非構造的な面接よりも将来のパフォーマンスを予測する精度が高い」と実証されています。

採用チャネル・媒体の選定

ペルソナの詳細な設定は、どの媒体や手法を使ってアプローチすべきかの判断材料になります。

例えば、ペルソナの属性が「20代後半のITエンジニア、転職意欲は高いが忙しくて求人サイトを見る暇がない、Twitter(X)で技術情報を収集している」だとします。

この場合、大手転職サイトに高い掲載費を払って待っていても、彼らの目には留まりません。代わりに、技術系イベントへのスポンサードや、Twitter広告、あるいはエンジニア特化型のダイレクトリクルーティングサービスを活用するほうが、遥かに低コストで接触できる可能性が高まります。

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藤村
「競合が使っているから」「有名だから」という理由で媒体を選ぶのはやめましょう。ペルソナが「普段どこにいて、何を見ているか」という行動特性に合わせて、最も接点を持てるチャネルを選ぶのが鉄則です。

採用ペルソナ設計で陥りがちな3つの失敗と対策

採用ペルソナは強力な武器ですが、使い方を誤ると逆効果になる諸刃の剣でもあります。

多くの企業がペルソナ設計で躓くポイントは共通しています。ここでは、特によくある3つの失敗例と、それを回避するための具体的な対策を紹介します。これらの落とし穴を事前に知っておくことで、無駄な回り道をせずに済みます。

失敗1:理想を詰め込みすぎて「スーパーマン」になる

最も多い失敗が、現場や経営陣の要望をすべて盛り込んだ結果、市場に存在しない完璧超人(スーパーマン)を作り上げてしまうことです。

「20代でマネジメント経験があり、即戦力の営業スキルを持ち、英語も話せて、かつ年収は400万円台」

このような人材は、現実にはほぼ存在しません。仮にいたとしても、年収800万円以上を提示する競合他社に奪われてしまうでしょう。理想を足し算しすぎると、ターゲットとなる母数がゼロになり、いつまで経っても応募が来ないという事態に陥ります。

対策:引き算の思考を持つ
勇気を持って条件を捨ててください。絶対に譲れない「Must要件」を3つまで絞り込み、それ以外は入社後に教育可能な「Want要件」へと格下げします。「今のチームに最も必要な要素は何か」という一点に集中することが、現実的な採用への第一歩です。

失敗2:抽象的なキーワードで終わらせる

「コミュニケーション能力が高い人」「主体性がある人」

ペルソナシートにこのような言葉が並んでいたら要注意です。なぜなら、これらの言葉は人によって解釈が大きく異なるからです。

例えば「コミュニケーション能力」という言葉一つでも、ある面接官は「流暢にプレゼンできる力」と捉え、別の面接官は「相手の意図を汲み取る傾聴力」と捉えるかもしれません。これでは、せっかくペルソナを作っても評価基準がバラバラになり、ミスマッチを防げません。

対策:具体的な行動事実(コンピテンシー)に変換する

抽象的な形容詞は使わず、誰が見ても判断できる具体的な行動レベルに書き換えてください。

× コミュニケーション能力が高い
○ 会議で沈黙が続いた際に、自ら口火を切って発言できる
○ 否定的な意見が出ても感情的にならず、対案を提示できる

このように言語化することで、面接官全員が同じ基準で応募者を評価できるようになります。

失敗3:一度作って放置してしまう(更新しない)

ペルソナは一度作れば永遠に使えるものではありません。事業フェーズの変化や採用市場のトレンドに合わせて、常にアップデートし続ける必要があります。

例えば、創業期のスタートアップでは「カオスな状況を楽しめる突破力のある人材」が必要でしたが、組織が50人を超えてくると「チームのルールを守り、仕組みを作れる人材」が必要になるケースがあります。過去の成功体験に縛られて古いペルソナを使い続けると、今の組織に合わない人材を採用してしまうリスクが高まります。

対策:定期的な見直しサイクルを設ける
半年から1年に1回は、ペルソナを見直す機会を設けてください。「最近採用した人が定着していない」「応募数は多いが、欲しい人材がいない」といった課題感があるときは、ペルソナと市場の間にズレが生じているサインです。現場の声を吸い上げ、常に生きたペルソナへと更新し続けましょう。

採用ペルソナに関するよくある質問(FAQ)

最後に、採用ペルソナを作成する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。不安や疑問を解消して、設計の一歩を踏み出してください。

Q. ペルソナは1人に絞るべきですか?

A. 1つの職種につき、原則として「1人」に絞り込んでください。

「Aさんの要素もBさんの要素も入れたい」と欲張って複数人をモデルにすると、結局誰にも当てはまらない中途半端な人物像になってしまいます。ターゲットを広く取るのではなく、たった一人に深く刺さるように設計するのがペルソナの目的です。

ただし、営業職とエンジニア職のように募集職種が異なる場合は、それぞれの職種ごとに別のペルソナを設定する必要があります。また、同じ営業職でも「新卒採用」と「マネージャー採用」では求める要件が全く異なるため、この場合も分けて作成してください。

Q. 中小企業や知名度が低い会社でも効果はありますか?

A. むしろ知名度のない企業こそ、ペルソナ設計の効果は絶大です。

大手企業は知名度があるため、広く浅いターゲット設定でも応募が集まります。しかし、中小企業が同じ土俵で戦っても勝ち目はありません。

だからこそ、ペルソナを詳細に設定し、特定の価値観を持つ人材に「自分のための求人だ」と感じてもらう必要があります。「安定志向の人は来ないけれど、挑戦意欲の高い特定の層からは熱烈な応募が来る」という状況を作ることが、採用成功の勝ち筋となります。

Q. 作成にはどれくらいの期間をかけるべきですか?

A. 最初のドラフト作成から合意形成まで、おおよそ2週間程度を目安にしてください。

時間をかけすぎると、市場の状況が変わってしまったり、完璧を目指しすぎていつまでも完成しなかったりします。まずは60〜70点のできで構わないので、早めにリリースして実際の採用活動で使ってみることが大切です。運用しながら違和感があれば修正していく、というスピード感を意識しましょう。

まとめ

本記事では、採用ペルソナの作り方から具体的な活用方法までを解説してきました。

採用ペルソナは、迷える採用活動を正しい方向へ導く「羅針盤」のような存在です。ペルソナという明確な基準があることで、求人票のメッセージが研ぎ澄まされ、面接での評価基準が統一され、結果として自社に本当にマッチする人材との出会いが増えます。

最後に、重要なポイントをもう一度お伝えします。ペルソナ設計において最も大切なのは「一度作って終わりにしないこと」です。

最初から完璧なペルソナを作れる企業はいません。実際に面接をしながら「もう少しこんな要素が必要かも」「この条件は厳しすぎたかも」と気づきを得て、修正を繰り返していくことで、徐々に自社だけの「勝利の方程式」が出来上がっていきます。

まずは本記事で紹介したテンプレートを使い、現場の声を反映させた「仮のペルソナ」を作ることから始めてみてください。その小さな一歩が、貴社の採用活動を大きく変えるきっかけになるはずです。

もし、自社だけで設計するのが難しい、あるいは第三者の視点で客観的なアドバイスが欲しいという場合は、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の採用成功に向けて、全力でサポートさせていただきます。

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