運送業の高齢化と有効求人倍率の高止まりによって、日本人ドライバーの採用が限界を迎える中、解決策として注目されているのが「外国人ドライバー」の採用です。
しかし、いざ検討を始めても、「ビザの手続きが複雑でよくわからない」「日本の免許はどうやって取らせるのか」「言葉が通じず事故を起こさないか」といった疑問や不安から、採用に踏み出せない企業様も少なくありません。
そこで本記事では、2024年に正式解禁された「特定技能(自動車運送業)」を中心に、永住者や特定活動46号など、外国人ドライバーを採用するための手法を解説します。
最新の法改正情報に基づき、採用の必須要件や費用はもちろん、現場の最大の難関である「外免切替(免許の切り替え)」の具体的な方法まで、実務担当者が知るべき情報を余すことなく盛り込みました。
この記事を読めば、外国人ドライバーの採用ルートと準備する手順がわかり、迎え入れる体制が整うはずです。
なぜ外国人ドライバーの採用が必要なのか?
「日本人が来ないなら、来るまで待つ」という姿勢は、残念ながらもはや通用しない時代になりました。
厚生労働省の資料によると、自動車運転の職業における有効求人倍率は常に2.0倍を超えて推移しています。これは全職業平均の約2倍にあたり、求人を出しても1人の採用すらままならない状況を示しています。
さらに深刻なのがドライバーの高齢化です。厚生労働省の発表によると、トラック運送業においては、40代〜50代が就業者の大半を占めており、29歳以下の若手ドライバーの割合は全産業平均を大きく下回っています。これから数年のうちに、団塊ジュニア世代が高齢者層へ移行し始めると、大量の退職者が発生し、人手不足は決定的になります。
2024年問題による残業規制も相まって、「1人で長時間走る」モデルから「人数を確保して分担する」モデルへの転換が急務です。
国内の労働人口が減少する中でこの数を確保するには、外国人材の活用以外に現実的な解はありません。外国人ドライバー採用は、もはや「選択肢の一つ」ではなく、企業の存続をかけた「必須の戦略」となりつつあるのです。
外国人ドライバーを採用する3つの選択肢
採用手法には大きく分けて3つの選択肢があり、自社の車種や求めるスキルに応じて適切なルートを選ぶ必要があります。
まずは、どのような選択肢があるのか、それぞれの特徴を整理しましょう。
| 外国人ドライバー採用の選択肢 |
詳細 |
1. 特定技能 (自動車運送業) |
2024年に追加された、今最も注目されるルートです。トラック・タクシー・バスの3分野で、一定のスキルを持った外国人をドライバーとして雇用できます。国が主導する制度であり、今後、外国人採用のスタンダードになります。 |
2. 身分系在留資格 (永住者・定住者・配偶者) |
「永住者」や「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ人は、就労制限がありません。日本人と全く同じように雇用でき、手続きも簡単なため、手軽力なルートと言えます。 |
3. 特定活動46号 (本邦大学卒業者) |
日本の大学を卒業し、高い日本語能力(N1レベル)を持つ外国人が対象です。主にタクシー業界などで、通訳案内を兼ねたドライバーとして活躍するケースが多いビザです。 |
【制度解説】特定技能「自動車運送業」の採用要件と対象
ここからは、外国人ドライバー採用のメインルートとなる「特定技能(自動車運送業)」制度について詳しく解説します。
特定技能は、どの企業でも無条件に採用できるわけではありません。外国人本人に求められるスキル要件と、受け入れ企業側に求められる体制要件の両方が厳格に定められています。
まずは、自社が採用しようとしている職種(トラック・タクシー・バス)において、具体的にどのような人材が対象となるのか、そして自社に受け入れ資格があるのかを確認していきましょう。
トラック・タクシー・バスで必須スキルは異なる
特定技能の自動車運送業分野は、「トラック」「タクシー」「バス」の3つの業務区分に分かれています。
重要なのは、区分によって求められる「日本語能力」と「運転免許」のレベルが異なる点です。
特に接客を伴うタクシーやバスは、トラックに比べて高い日本語能力が求められます。以下の表で、それぞれの必須要件を整理しました。
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業務区分
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必要な日本語能力(試験)
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必要な運転免許
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主な業務内容
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トラック
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N4レベル以上
(日本語能力試験 JLPT N4 または JFT-Basic A2)
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第一種免許
(普通・準中型・中型・大型のいずれか)
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貨物の運送、荷積み・荷下ろし、荷造りなど
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タクシー
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N3レベル以上
(日本語能力試験 JLPT N3)
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第二種免許
(普通第二種)
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乗客の運送、接客、乗降介助、荷物の積込みなど
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バス
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N3レベル以上
(日本語能力試験 JLPT N3)
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第二種免許
(大型第二種)
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乗客の運送、接客、車内アナウンス、手荷物対応など
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これら3つの区分に共通して必要なのは、それぞれの区分に対応した「自動車運送業分野特定技能1号評価試験(技能試験)」に合格していることです。
必要な日本語レベルは区分によって異なります。タクシーとバスのドライバーは、乗客とのコミュニケーションや緊急時の対応が求められるため、「N3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解できるレベル)」が必要です。
一方、トラックドライバーの場合、「N4(基本的な日本語を理解できるレベル)」で要件を満たすことができます。
企業の必須要件は「Gマーク」または「働きやすい職場認証」
外国人ドライバーを採用する際、「安全性優良事業所(Gマーク)」または「働きやすい職場認証制度」のいずれかの認定を受けていることが「企業側の要件」です。
これは特定技能外国人の受け入れにおいて必須条件とされており、どちらも取得していない事業所は、残念ながら特定技能での採用申請を行うことすらできません。
これは、法令遵守体制や労働環境が整っていない企業に外国人を受け入れさせないためのフィルター機能を果たしています。
| 認証制度 |
ロゴ |
詳細 |
| Gマーク |
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- 全日本トラック協会が認定する安全性評価。
- 業務区分「トラック」のみ対象。
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| 働きやすい職場認証制度 |
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- 国土交通省が創設した認証制度。
- トラック、バス、タクシーすべての事業者が対象。
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もし現在、どちらの認証も取得していない場合は、人材募集をかける前に、まず認証取得の手続きを開始してください。これが採用プロジェクトのスタートラインとなります。
その他の重要要件(協議会加入・支援計画・年齢・健康診断)
認証制度以外にも、クリアすべき要件がいくつか存在します。手続きの漏れを防ぐため、以下の項目をチェックリストとして活用してください。
自動車運送業分野特定技能協議会への加入
特定技能外国人を初めて受け入れる場合、国土交通省が設置する「協議会」への加入が義務付けられています。加入はオンラインで手続き可能で、入会金や年会費は原則不要です。最初の一人を受け入れる日から4ヶ月以内に加入する必要があります。
1号特定技能外国人支援計画の策定
外国人が日本で安定して生活できるよう、入国前のガイダンス、住居の確保、銀行口座の開設、日本語学習の機会提供などの支援を行う計画を作成し、実行しなければなりません。
これらは自社で行うことも可能ですが、専門知識が必要なため「登録支援機関」へ委託するのが一般的です。

年齢要件(18歳以上・21歳以上)
特定技能制度自体は18歳以上であれば申請可能ですが、運転免許の取得要件に準じます。例えば、大型免許や第二種免許が必要な業務の場合、日本の免許制度上「21歳以上かつ経験3年以上(特例教習なしの場合)」などの要件を満たす必要があります。
入管法上の健康診断
ビザ申請の際、健康診断書の提出が必要です。運転業務に支障をきたすような持病がないか、視力や聴力が基準を満たしているかなどが確認されます。
採用から乗務開始まで!「免許取得」の完全ロードマップ
採用の要件をクリアしたとしても、内定を出してすぐにトラックやバスを運転できるわけではありません。
外国人ドライバー採用において、実務上最も高いハードルとなるのが「日本の運転免許の取得」です。
特定技能の在留資格を得るためには、日本の運転免許を持っていることが前提条件となります。しかし、海外にいる外国人が日本の免許を最初から持っているケースは稀です。
そのため、入国してから免許を取得し、その後に正式に特定技能ビザへ切り替えるというステップを踏む必要があります。
ここでは、採用担当者が最も頭を悩ませる「免許取得までの流れ」と「具体的な攻略法」を、時間のロスが出ないよう実践的に解説します。
外国人ドライバーの現住所別|乗務開始までのプロセス
採用のプロセスは、候補者が「現在どこに住んでいるか」によって大きく異なります。特に海外から呼び寄せる場合は、「特定活動」という準備のためのビザを活用する点がポイントです。
パターンA:海外から呼び寄せる場合
このパターンでは、来日していきなり特定技能ビザを申請することはできません。
まずは免許を取るためのビザで入国します。
パターンB:日本国内在住者を採用する場合
技能実習生や留学生など、既に日本に住んでいる外国人を採用する場合です。
海外採用の場合、入国してから免許を取得するまでの期間が発生するため、計画的なスケジューリングが不可欠です。
最大の難関「外免切替」の合格率と対策
外国の免許を日本の免許に書き換える手続きを「外免切替」と呼びます。
教習所に通い直すよりも費用が安く済むため、多くの企業がこの方法を検討しますが、運転免許センターでの実技確認(技能試験)の難易度が高いため注意が必要です。
免許センターでの一発試験は、プロの試験官が日本の道路交通法に基づき厳格に採点します。
「一時停止の止まり方」や「安全確認の首の振り方」など、日本独自の細かい作法が求められるため、運転に慣れているベテランほど自己流の癖が出て不合格になりがちなのです。
合格率が20%から30%程度に留まるケースも珍しくなく、何度も予約を取り直して数ヶ月かかることもあります。
この壁を突破するための対策として、以下の2つのアプローチを比較検討してください。
対策1:試験場での直接受験(コスト重視)
手数料は数千円程度と安価ですが、不合格が続くと数ヶ月単位で採用計画が遅れます。何度も足を運ぶ人件費や機会損失を考えると、結果的に高くつくリスクがあります。
対策2:教習所の「外免切替コース」や「特例教習」の活用(確実性重視)
指定自動車教習所が提供する、外免切替専用の練習コースや、免許取得のための特例教習を利用します。
費用は20万円から30万円程度かかりますが、日本の交通ルールを体系的に学べるため、合格率は格段に上がります。
また、入社後の事故リスクを減らす教育投資と考えれば、決して高い金額ではありません。現場の混乱を防ぎ、最短で戦力化するためには、初期コストをかけてでも教習所活用を選ぶことをおすすめします。
空白期間(特定活動)の業務と給与はどうする?
海外から採用する場合、入国してから免許を取得して特定技能ビザに切り替わるまで、トラックで最長6ヶ月、バス・タクシーで最長1年間の「特定活動」期間が発生します。
企業様からよくいただく質問が、「免許を取るまでの間、給料はどうするのか?」「何の仕事をさせればいいのか?」という点です。
まず給与については、日本人と同等額を支払う必要があります。
「研修期間だから」といって最低賃金ギリギリに設定したり、無給にしたりすることはできません。彼らは既に雇用契約を結んだ社員であり、生活基盤を支える必要があるからです。
業務内容については、無免許であるため公道での運転はできませんが、
以下のような「運転に関連する業務」に従事させることが認められています。
この期間を単なる「待ち時間」にするのではなく、「日本の物流品質や接客マナーを叩き込む教育期間」と捉えてください。
助手席で先輩ドライバーの運転や顧客対応を見せることは、単独乗務開始後の事故やトラブルを防ぐ最も有効な研修になります。この期間の教育密度が、その後のドライバーとしての質を決定づけます。
自社採用は難しい?「外国人材専門の紹介会社」を使うメリット
自社採用の流れと特定技能の要件を理解したところで、次に直面するのが「どこでその人材を探すのか?」という問題です。
コストを抑えるために「ハローワーク」や「自社サイト」での募集を考える企業様もいらっしゃいますが、結論から申し上げますと、外国人ドライバーの採用においては、専門の「人材紹介サービス」を利用することを推奨します。
一般的な事務職や技能実習生とは異なり、ドライバー採用には「免許」と「安全」という特殊なハードルがあるため、プロの仲介がない自社採用はリスクが高すぎるからです。
1. 「運転適性」と「日本語力」の厳格なスクリーニング
最大のメリットは、採用のミスマッチを事前に防げる点です。
自社で募集をかけると、「日本語ができる」と言って応募してきた外国人が、実際には全く会話が成り立たなかったり、性格的に粗暴で運転に向いていなかったりするケースが多々あります。
外国人材紹介会社、特に物流業界に特化したエージェントでは、以下のような厳しいスクリーニングを行った上で、貴社に候補者を推薦します。
| チェック項目 |
チェック方法 |
| 独自の日本語チェック |
資格(JLPT)の有無だけでなく、配車担当者との電話対応ができるか、独自の会話テストを実施。 |
| 運転適性の確認 |
母国での運転経歴の裏取りや、性格診断を通じた適性検査。 |
| 意欲の確認 |
「なぜドライバーになりたいのか」「きつい仕事でも続くか」というマインドセットの確認。 |
数多くの候補者の中から「御社のトラックに乗せても安心な人物」だけが面接に来るため、採用担当者の工数は大幅に削減されます。
2. 複雑な「ビザ申請」と「支援業務」のワンストップ化
特定技能の採用には、膨大な書類作成と、入管法に基づいた手続きが必要です。
もし書類に不備があれば、不許可になるだけでなく、最悪の場合、企業側が「不法就労助長」を問われるリスクさえあります。
多くの人材紹介会社は、国の認定を受けた「登録支援機関」を兼ねているか、行政書士と提携しています。そのため、以下のようなフローを一括して任せることができる点が強みです。
- 候補者の紹介
- 雇用契約書の作成(多言語対応)
- 在留資格(ビザ)の変更申請
- 入国後の生活立ち上げ(住居探し、住民登録など)
「採用」と「ビザ手続き」を切り離して考えると混乱の元です。これらをセットで依頼できることが、紹介サービスを利用する大きな価値です。
3. 失敗しない紹介会社の選び方
一口に「外国人材紹介会社」と言っても、得意分野は様々です。
「飲食」や「介護」に強い会社にドライバーの紹介を依頼しても、失敗する可能性が高いです。
なるべく「物流・運送業界に特化した(または実績が豊富な)紹介会社」を選ぶのがよいでしょう。
大切な予算を無駄にしないために、以下の4つの基準でパートナーを選定してください。
1. 免許取得の具体的なソリューションを持っているか
これが最も重要な見極めポイントです。単に「免許を持っている人を探します」という受け身の姿勢ではなく、「免許を取らせるルートを持っているか」を確認してください。
2. 業界用語や現場のルールが通じるか
担当者が運送業界の基本を知らないと、的外れな候補者ばかり紹介されます。
「手積み手下ろしか、パレット輸送か」「2トンか4トンか」「夜間配送はあるか」といった条件の違いを理解し、その過酷さも含めて候補者に事前に説明できる会社でなければなりません。
良い紹介会社は、候補者に「仕事の厳しさ」を正しく伝えた上で合っている方を紹介してくれます。
3. 入社後の「定着支援(メンタルケア)」が手厚いか
ドライバーは孤独な時間が長い仕事です。異国で一人トラックに乗る不安から、早期離職してしまうケースがあります。
紹介会社が「入社したら終わり」ではなく、「定期的な面談」や「母国語相談窓口」を設けているか確認してください。
ドライバー特有の悩み(事故の不安、日本人ドライバーとの人間関係など)に寄り添える専門スタッフがいる会社は、定着率が圧倒的に高くなります。
4. 明確な「返金規定(リファンド)」があるか
万が一、採用した人材が早期に退職してしまった場合のリスクヘッジも重要です。
「入社後1ヶ月以内の退職なら紹介料の80%返金」「3ヶ月以内なら50%返金」など、返金規定(保証期間)が契約書に明記されているかを必ず確認してください。
自信のある紹介会社ほど、この保証期間をしっかりと設けています。
「事故」や「言葉の壁」は?現場の不安を解消する教育体制
「免許を取ったのはいいけれど、本当に日本の狭い道を走れるのか?」
「現場の指示が伝わらず、配送ミスや事故が起きないか?」
採用担当者様にとって、採用決定後の最大の懸念事項は、やはり「安全面」と「コミュニケーション」でしょう。事実、文化や言語の壁を放置したまま現場に投入すれば、トラブルが起きる確率は上がります。
しかし、逆に言えば、適切な教育体制さえ整えれば、外国人ドライバーは日本人以上に真面目で、安全意識の高い戦力になります。
ここでは、現場でのトラブルを未然に防ぐために、企業側が準備すべき教育のポイントを解説します。
日本特有の「暗黙のルール」と安全教育
海外の交通事情と日本では、ルール以前に「マナー」や「暗黙の了解」が大きく異なります。
例えば、ベトナムやインドネシアなどの国々では、バイクや車がひしめき合い、「クラクションを鳴らして自分の存在を知らせ、隙間があれば割り込む」という運転スタイルが一般的であることも少なくありません。
一方、日本では「譲り合い」や「待つこと」が美徳とされ、安全の基盤になっています。
このギャップを埋めるためには、単に標識の意味を教えるだけでなく、以下のような「日本独自の運転文化」を具体的に教え込む必要があります。
効果的なのは、ドライブレコーダーの映像(ヒヤリハット事例)を使った視覚的な教育です。
言葉で「安全確認して」と言うよりも、実際の事故寸前の映像を見せ、「なぜこれが危ないのか」を議論させる方が、言語の壁を超えて直感的に理解できます。
また、特定活動期間中に先輩ドライバーのトラックに同乗させ、「日本のドライバーがどれほど細かくミラーを確認しているか」を肌感覚で学ばせることも必須です。
「やさしい日本語」と多言語マニュアルの整備
現場での指示出しにおいて、「見て覚えろ」は通用しません。
また、日本人が普段何気なく使っている言葉が、外国人にとっては大きな壁になります。
例えば、「この荷物は、適当に積んでおいて」と言った場合、日本人は「バランスよく積む」と解釈しますが、外国人は「雑に扱っていい」と誤解する恐れがあります。
トラブルを防ぐために、現場の日本人スタッフには「やさしい日本語」を使うよう徹底してください。
ポイントは以下の3点です。
| ポイント |
例 |
| 1. 一文を短くする |
「この伝票を持って、先に事務所に行って、ハンコをもらってきて」ではなく、「この伝票を持ってください。事務所に行ってください。ハンコをもらってください。」と区切る。 |
| 2. 曖昧な表現を避ける |
「なるべく早く」ではなく「10分以内に」、「きれいにして」ではなく「水で洗って」と具体的に伝える。 |
| 3. 漢字にルビを振る |
配送指示書や日報には、必ずふりがなを振るか、多言語翻訳ツールを活用する。 |
また、「荷積み」「積み付け」「検品」「納品書」といった運送業界特有の専門用語は、入社時に写真付きの単語リスト(母国語訳付き)を渡して覚えてもらいましょう。
最近では、スマホのカメラをかざすだけでリアルタイムに翻訳できるアプリや、多言語対応の運行管理システムも登場しています。
ITツールを積極的に導入することで、コミュニケーションコストを大幅に下げられます。
留学生(アルバイト)はドライバーになれる?
人材不足に悩む企業様から、「留学生をアルバイトドライバーとして雇えないか?」という質問をよくいただきます。結論から申し上げますと、留学生をドライバーとして採用することは推奨できません。
その理由は、法律上の「就労時間制限」にあります。
「留学」の在留資格を持つ外国人は、資格外活動許可を得ても「週28時間以内」までしか働くことができません。
運送業のドライバーは、配送ルートによっては早出や残業が発生しやすく、拘束時間も長くなりがちです。週28時間(1日平均4時間〜5時間程度)という枠内で、責任ある配送シフトを組むことは実務上極めて困難です。
万が一、時間を超えて働かせてしまった場合、不法就労助長罪として企業側にも厳しい罰則が科せられます。
また、留学生はあくまで学業が本分であり、卒業後の帰国や就職で離職する可能性も高いです。長期的な戦力確保を目指すのであれば、フルタイム勤務が可能で、腰を据えて働ける「特定技能」や「永住者」にターゲットを絞るべきです。
外国人ドライバー採用にかかる費用と補助金
「教育体制の重要性はわかった。では、実際にお金はいくらかかるのか?」
経営者や採用担当者様にとって、最終的な判断材料となるのがコストです。外国人の採用には、日本人の採用とは異なる項目の費用が発生します。
特に、前述した「免許取得」への投資が必要になる場合があるため、初期費用は決して安くはありません。
しかし、コストの中身を正確に把握し、長期的な視点で計算すれば、採用難でトラックを遊ばせておく損失よりもはるかに合理的であることがわかります。
ここでは、採用にかかる費用の相場と、負担を軽減するための助成金の活用について解説します。
採用コスト・免許取得費用・支援委託費の相場
外国人ドライバーを1名採用し、単独乗務を開始するまでにかかる費用の目安は、トータルで80万円から100万円程度(給与を除く)を見ておく必要があります。内訳は主に以下の4つです。
人材紹介手数料
人材紹介会社を利用する場合、想定年収の20%から30%、または定額で50万円から80万円程度の手数料が発生します。
自社サイトやハローワーク経由であれば無料ですが、特定技能の要件を満たす人材を見つける手間を考えると、紹介会社経由が一般的です。
ビザ申請費用
行政書士に申請代行を依頼する場合、1名あたり10万円から15万円程度かかります。人材紹介会社によっては、紹介手数料にビザ申請料金が含まれている場合があります。
免許取得・教習所費用
ここが運送業特有のコストです。前述の通り、確実に免許を取得させるために教習所の「外免切替コース」や「特例教習」を利用すると、20万円から35万円程度の費用がかかります。
この費用を会社が全額負担するか、一部を本人負担(給与天引き等)にするかは、事前の取り決めが重要です。
登録支援機関への委託費(ランニングコスト)
特定技能外国人の生活支援を外部に委託する場合、外国人1名につき月額2万円から3万円程度の委託費が継続的に発生します。
数字だけ見ると高く感じるかもしれません。しかし、求人広告を出し続けても採用できず、数ヶ月間トラックが稼働しない機会損失を考えてみてください。
1台あたり月間100万円以上の売上機会を失い続けるよりも、初期投資をしてでも5年間(あるいはそれ以上)安定して働いてくれるドライバーを確保する方が、投資対効果は高くなります。
活用できる助成金・補助金はある?
「少しでもコストを抑えたい」と考えるのは当然のことです。残念ながら、現時点では「外国人ドライバーを採用するだけで無条件にもらえる補助金」というものは存在しません。
しかし、既存の助成金制度をうまく活用することで、教育や環境整備にかかる費用の一部をカバーできる可能性があります。検討すべきは以下の2つの制度です。
| 利用できる助成金制度 |
詳細 |
| 人材開発支援助成金 |
従業員の職業能力開発を支援する制度です。例えば、業務に必要な「フォークリフト免許」や「玉掛け技能講習」、あるいは安全運転のための特別な外部研修などを労働時間内に実施した場合、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成される可能性があります。
教習所での免許取得費用が対象になるかはケースバイケースで判断が厳しいため、事前に労働局や社会保険労務士へ確認が必要です。
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| IT導入補助金 |
外国人スタッフとのコミュニケーションを円滑にするための「多言語対応の運行管理システム」や「翻訳機能付きの業務タブレット」などを導入する場合、そのソフトウェア購入費などが補助対象になることがあります。 |
外国人ドライバーの採用に関するよくある質問(FAQ)
最後に、外国人ドライバーの採用を検討されている企業様から、商談の現場で頻繁にいただく質問とその回答をまとめました。
細かな疑問をここで解消し、具体的な検討へと進めてください。
まとめ:外国人ドライバーは「一時しのぎ」ではなく「未来の主力」
ここまで、外国人ドライバー採用の制度、免許取得のハードル、そして現場での教育体制について解説してきました。
お伝えした通り、外国人ドライバーの採用は決して「楽で安い近道」ではありません。認証の取得、煩雑なビザ申請、決して安くはない初期費用、そして現場での地道な教育が必要です。「とりあえず人手が足りないから」という安易な動機で始めると、準備不足で痛い目を見るかもしれません。
しかし、そのハードルを乗り越える覚悟を持った企業にとって、彼らはかけがえのない戦力になります。
彼らは「日本で働きたい」「家族を豊かにしたい」という強いハングリー精神を持って海を渡ってきます。適切な教育と環境さえ提供すれば、その勤勉さは日本人ドライバーを凌駕し、会社の未来を支える強力なエンジンとなるでしょう。
人手不足に悩み続ける日々から抜け出し、次世代の物流体制を築くために。まずは以下の3つのステップから始めてみてください。
- 自社の「Gマーク」または「働きやすい職場認証」の取得状況を確認する。
- 採用したい車種(トラック・タクシー・バス)に必要な日本語要件と免許要件を再確認する。
- 教習所費用や支援委託費を含めた採用予算を確保し、経営陣の合意を得る。
この記事が、貴社の新たな挑戦への一歩となることを願っています。