採用責任者の中には、面接官のスキル不足によって採用の成果に行き詰まりを感じている方もいるのではないでしょうか。
面接官のスキルや能力が不足していると、質問が表面的な内容に留まるため、適切な意思決定が困難になったり、自社の魅力を求職者に十分に伝えきれない可能性があります。
このような課題を放置してしまうと、採用活動が活性化せず企業の成長を止めてしまいかねません。
現代の採用戦略において、面接官が面接トレーニングを行うことは極めて重要です。この記事では、面接官トレーニングの必要性や具体的なトレーニング方法やポイントを解説します。
面接官にトレーニングが必要とされる主な理由は、以下の通りです。
- 活躍できる人材のスキルや能力、人間性が適切か判断するため
- 求職者に自社の魅力を感じてもらい入社してもらうため
- 採用の成功・失敗のみならず、企業と求職者の良好な関係構築、企業カルチャーや人材育成にも影響を及ぼすため
- 面接官の面接スキルを高めることで、企業の成長や発展に寄与するため
反対に、面接官のスキルや能力が不十分だと、以下のような問題が発生します。
- 優秀な人材を見落としたり、採用のミスマッチが起きる
- 会社の採用基準に一貫性がなくなり、組織のパフォーマンスが下がる
- 内定を出しても辞退される確率が高くなる
多くの企業で、面接官は以下のような課題を抱えています。
課題
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具体的な状況
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本当に優秀な人材や必要な能力を見極められていない
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採用したい人物像が不明確で、どこを中心に見ればよいか分からない。
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質問に詰まったり、表面的な受け答えに終始してしまう
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深掘りした質問ができず、求職者の本音や潜在能力を引き出せない。結果的に採用可否の判断がしづらい。
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選考辞退率が高い
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面接を行い次の選考に進んでほしいと思っても、求職者から選考を辞退したいという連絡がある。つまり自社の魅力が伝わらず入社意欲を高められない。
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評価基準が統一されていない
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面接官ごとに評価にばらつきがあり、公平な採用ができない。
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これらの項目を総合的に判断・改善ができないと、人材の採用は上手くいきません。
面接のスキルや評価基準の統一など、求職者の能力を判断するための指標は必要です。
また、昨今採用市場は活性化しており、優秀な人材ほど企業間で取り合いになっています。
つまり、企業は選ぶ側ではなく選ばれる側の立場でもあるのです。求職者に会社やポジションの魅力、役割や期待することなどを面接でしっかり伝えることが重要になります。
面接官トレーニングでは、求職者の本質を見抜き、入社意欲を高めてもらうために必要なことを学ぶことができます。
以下で身に着けられる内容を解説します。
①質問する力
質問する力とは、面接官が求職者の正しい評価をする上で重要なスキルです。
表面的な質問に終始し、誰にでも答えられるような内容では、自社に最適な人材を採用することは難しくなります。
以下に示す質問例を参考に、深掘りした質問ができるよう努めましょう。
質問の意図・評価基準
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具体的な質問例
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人間性・性格
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「仕事で困難に直面したとき、どのように乗り越えましたか?」
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主体性
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「これまでに、あなたが主体的に行動して成果を出した経験を教えてください」
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論理性
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「〇〇の課題について、どのように解決策を考えますか?」
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適性
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「この仕事で最もやりがいを感じるのはどんな時だと思いますか?」
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例えば、営業職の面接では、「営業成績が良かった理由」という質問に加えて、「なぜその取り組みを選んだのか(主体性)」「なぜその取り組みが重要だと考えたのか(論理性)」など、多角的に質問を行うことで求職者を評価・判断することができるようになります。
②引き出す力
求職者にとって面接は自信をアピールする場ですが、過度な緊張から本来の力を発揮できないケースもあります。
面接官は求職者を緊張から解放し、円滑にコミュニケーションを取れる環境を整えてあげることが重要です。
具体的には、柔らかな表情でのアイスブレイクや転職活動状況を尋ねるなど、配慮した姿勢で接することで、求職者から素直な言葉や感情を引き出すことができるでしょう。
これにより、採用企業や求職者双方にとって良い状況を作り出せます。
適切な雰囲気作りと質問スキルを合わせることで、実りある選考を進めることが可能です。
③伝える力
面接官から求職者に会社の魅力やビジョン、ポジションの魅力などを伝えることも非常に大切です。
とくに優秀な人材や注力したいポジションにおいて、求職者に自社の魅力付けを行うことは重要となります。
こうした情報を明確に伝えられることで、求職者は明確に企業で働くイメージを持つことができます。
また、企業カルチャーや働く環境についても具体的に説明することで、入社後のミスマッチを防ぐことも可能です。
求職者が抱く不安や疑問に対しても丁寧に回答をしてあげましょう。
④法律・タブーを知る
これまでに述べた能力に加え、法律に関する知識も面接官には必要です。
面接官は、公正な採用選考を行うために、労働基準法や男女雇用機会均等法などの関連法規、そして面接でのタブー事項を正しく理解する必要があります。
厚生労働省は公正な採用選考の基本として、採用選考時に配慮すべき事項を明確に示しています。
例えば、家庭環境、本籍、宗教や思想、資産などに関する質問は望ましくありません。
このような不適切な質問は求職者に悪い印象を与えてしまい、企業の信頼を損ねてしまうリスクがあります。
定期的に行われる法改正に対応するためにも、最新の情報を学ぶことが大切です。
面接官のトレーニング方法には様々な手段があります。
それぞれのフェーズに合ったトレーニング経験を積むことで、スキルを身に着けることが可能です。
以下のトレーニング内容を知り、選択肢の一つとしてください。
①集団研修
集団研修とは面接官が面接に必要な準備やスキルなどを体系的に習得する手段です。
研修では、座学やロールプレイングなどを通じて、必要な知識や実践的なスキルを身に着けることができます。
組織内で研修を企画・実施することも可能ですが、外部講師による研修も推奨される手段です。
外部講師は、様々な企業での研修実績があるため、客観的な視点や新しい採用手法・情報を提供することができます。
研修テーマによっては活用を検討するべきでしょう。
②ロールプレイング
模擬面接などのロールプレイングは、面接官のスキル向上に効果的なトレーニングです。
実際の面接状況を想定し、練習を繰り返し行うことで、想定外の質問への対応力や求職者の反応を見極める力を養えます。
また、第三者からの客観的なフィードバックを受けることで、良かった点や改善点を具体的に把握することが重要です。
求職者のイメージ像を明確にしたり、面接のシナリオを用意することで実践に近いトレーニングを行うことができるでしょう。
③本(書籍)
面接官向けの本は多数出版されており、手軽に知識を深められます。
一般的ではありますが、面接のノウハウや効果的な質問方法、求職者の見極め方など、多岐にわたる情報が網羅されています。
成功事例や失敗事例を通して、面接官に必要な心構えや具体的なテクニックを学ぶことが可能です。
口コミや評価を参考に自社の課題解決に役立ちそうな本を選び、体系的な知識をインプットすることで、面接の質を向上させるための基盤を築けます。
④メンターシップ
メンターシップとは、経験の長い上司や先輩面接官との模擬面接・面談を通して、課題を見つけたり、フィードバックを得る方法です。
研修などの体系的な指導ではなく、個別の状況に合わせた指導を受けることができるため、臨機応変な対応力が磨けます。
また、ロールプレイング同様に社内のメンバー同士で行うため、自社がターゲットとする採用像をイメージしながら進行することができます。
そのため採用活動の質が高まることが期待できるでしょう。
⑤マニュアルの作成
面接マニュアルの作成・運用をすることで一貫性のある面接が実施できます。
それによって評価のばらつきなどを防げたり、組織のパフォーマンスを安定させることができます。
また、新任の面接官でもマニュアルがあることで安心して臨むことができ、面接の品質向上につながるでしょう。
マニュアルには具体的な質問例や評価ポイントを明記したり、余裕があれば動画にまとめ、見やすくすることでスムーズな採用活動を実施できます。
面接官のトレーニング効果を最大化するためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。
以下で紹介するポイントを意識しましょう。
①採用における課題を明確にする
面接官のトレーニングを始める前に、現状の採用課題を明確にし、それを採用担当者間で共有することが重要です。
この課題を明確にできないと採用における戦略や改善点を見いだせず、適切な対策を打つことができません。
例えば、「内定辞退率が高い」「ミスマッチが多い」「適切な人材を見極められていない」などの課題を洗い出します。
面接官にどのようなスキルが不足しているのかを把握し、それを解決できるトレーニング手段を選択してください。
課題が明確になることで、各担当者の目標やトレーニングするべき内容が見えてくるはずです。
②偏見やバイアスを自覚する
人は誰しも、無意識に偏見やバイアスを抱えているものです。
面接官は、例えば以下の点に対する自身の潜在的な偏見や先入観を自覚し、公正な評価を行うことが不可欠です。
・見た目(外見)
・自身との相性
・学歴
・年齢
・出身地
・性別
これらの様なバイアスが面接での質問内容や評価に影響を与えてはなりません。
常に客観的な視点を持つことが求められます。トレーニングを通じてこうしたバイアスを認識し排除する訓練を行うことで、求職者の能力を正確に見極めることが重要です。
③トレーニングの効果を測定する
面接官トレーニングは、一度きりで終わる訳ではありません。
トレーニング実施前後で採用に必要となる指標を比較・検討をすることが重要です。
例えば、「選考辞退率」や「面接通過率」、「内定承諾率」などの指標を数値化し評価します。
こうした定量的な指標を元に改善を行うことで、より質の高い採用活動が実現できるでしょう。
本記事では、採用における面接官トレーニングの重要性から、身につく能力、具体的なトレーニング手段、そして効果を上げるポイントまでを解説しました。
面接官のトレーニングは、採用課題を解決し、企業の成長を加速させるための重要な投資です。
面接官のスキル向上は、最適な人材の採用、ひいては企業の成長に直結します。
ぜひ、本記事の内容を参考に、貴社に合った面接官トレーニングを実施し、採用力強化に取り組んでください。