近年、高卒採用を行う企業が増えてきています。その背景には、労働力人口の減少や地域経済の活性化を目指す企業の戦略が影響しています。
特に、若年層の労働力を確保するために地元の高校生を採用する動きが活発化しており、企業は高卒者の採用に注目しています。
本記事では、高卒採用のメリット・デメリットを詳しく解説し、成功に導くためのポイントも紹介します。
多くの企業が大卒の新卒採用に重きを置く中、高卒採用は相対的にライバルが少なくなります。
マイナビの調査によると、2025年の大卒新卒採用は76.6%の企業が「自社は採用が厳しくなる」と予想しています。
さらに、同調査において、「自社の新卒採用が厳しくなっている要因」について聞いたところ、「新卒学生全体の数が減っていること(70.8%)」がトップ、「新卒採用をする企業が増えていること(53.1%)」が2位となっています。
リクルートの2025年度採用の調査でも全国の大学新卒向けの民間企業の求人総数は、前年の77.3万人から79.7万人へと2.4万人も増加しており、大学新卒採用は今後もこの傾向が続く予想がなされています。
また、従業員規模300人未満の中小企業に限定した大卒の求人倍率だと2025年卒が6.5倍。2024年卒は6.19倍。中小企業にとっての大卒採用は非常に高い競争率で、採用難易度が高いことが分かります。
これに対して、厚労省の発表によると2024年は高校新卒全体が3.52倍。
近年の高校新卒全体の求人倍率は緩やかに伸びていますが、それでも大卒採用と比べるとチャンスがあります。
大学新卒採用で結果を求めることも大事ですが、戦うフィールドを変えてみるというのも一つの手です。
また、大卒採用では大手求人メディアや紹介会社の活用、合同企業説明会への参加など採用プロセスが多いですが、高校新卒採用の場合には基本的にハローワークと高校とのやり取りになりますので戦いやすいと言えるでしょう。

高卒採用は、一般的に大卒の新卒採用よりも採用コストが抑えられます。
リクルート 就職みらい研究所調べ「就職白書2020」によると、新卒採用コストの平均採用単価は、1人あたり90万円~95万円程度。さらに中途採用になると平均的な採用コストは1人あたり100万円を超えているとされています。
一方の高卒採用は1人あたりの採用コストは高くても30万円程度。コストパフォーマンスの良い採用ができることも高卒採用のメリットです。
また、高卒採用は基本的に面接は一回のため、時間コストに関しても、大卒の新卒採用よりコストを抑えられます。
就職みらい研究所「就職プロセス調査」によると、大学新卒の2023年卒の内定辞退率は約65.8%。

「一人二社制」を解禁した一部の都道府県を除き、高卒採用には「一人一社制」というルールがあります。
「一人一社制」とは、単願で他の企業を受験せず、基本的に最初に内定をもらった企業に就職する制度のため、内定辞退率は必然的に低くなります。
これに対して高校新卒の内定辞退はほとんどないと言って良いレベルです。
高校新卒採用では「学校斡旋」という仕組みがあり、企業がハローワークの確認を得た求人票を高校に届け、生徒が最終的に学校から推薦を受ける形で1社のみ応募をする「1人1社制」が存在するためです。
高校生は、最初の1社に応募したあとでほかに応募したい企業が出てきた場合、1社目の結果が出てからでなくては応募ができません。つまり、高校生が複数の企業を同時に受けるということがないため、高校新卒採用では内定辞退が少ないのです。
高卒採用には、育成しやすい人材を採用できるという特有のメリットがあります。以下に、その理由と具体的なポイントを説明いたします。
柔軟な思考と学習意欲
高校生の場合はバイトすらしていない生徒が多いです。
働いたことがないからこそ、新しい知識やスキルを吸収する意欲が高く、あなたの会社に合わせて育つポテンシャルがあります。
このような特徴から、高校新卒は企業の文化や業務に合わせた育成がしやすいと言われています。
組織文化への適応
若い世代は、企業の理念や文化に対して敏感であり、適応力が高いです。企業の価値観を理解しやすく、指導を受け入れやすいため、組織にフィットした人材へと成長させることが可能です。
社内独自のスキル習得
高卒者は、業界や職種に特化したスキルをゼロから学ぶことができます。既存のスキルに縛られることが少ないため、企業が求めるスキルを徹底的に教え込むことができ、若いうちから企業の将来を担うリーダーや専門職に成長させることが可能です。
高卒採用では多くの場合、学校が生徒に求人を紹介する「学校斡旋」という制度が利用されています。
企業の求人を生徒に届けるために、担任の先生をはじめとする進路指導の先生方に、自社の魅力をアピールし、求人を高校生に紹介してもらうようにしています。
これは、大学新卒や中途採用と大きく異なる点です。
大学新卒や中途採用では、求職者と企業が直接やり取りを行い、企業は毎回新しい求職者にアプローチする必要があります。
しかし、高校新卒採用では、一度先生方に信頼関係を築くことができれば、その学校からの継続的な採用が見込める可能性があるのです。
信頼関係を築くには時間がかかりますが、「この企業なら、うちの生徒を任せられる」と思ってもらえるような取り組みを行うことで実現が可能です。
例えば、求人票を作りこむことであったり、思いのこもった採用パンフレットを送付すること。
また、企業見学の実施や、OB・OG訪問の機会を提供するなど、先生方や生徒が企業のことを深く理解できるような取り組みが有効です。
厚生労働省が公表した資料によると、新規学卒就職者のうち、大卒就職者が就職後3年以内に離職した割合は平均で31.2%、高卒就職者が就職後3年以内に離職した割合は平均で36.9%だったことがわかっています。
このデータだけだとあまり差がないように感じますが、高卒採用は1年目の離職率が高いことが特徴。
厚生労働省が発表した令和5年の調査によると、大卒就職者の1年目の離職率10.6%に対し、高卒就職者の1年目の離職率が15.1%と大きな差があります。
これは1人1社制(複数を見て判断するケースが少ない)のためミスマッチが発生しやすく。早期離職が多い傾向にあるのだと思われます。
仕事内容や職場環境を入念に伝えて、入社後のギャップがないように努めることで解消しましょう。
高卒採用は、多くの企業が行う大卒採用と比べると正確な情報や知識を持ったプロフェッショナルが少ないため、企業が独自の採用戦略を立てにくく、多くの企業が手探りで進めているのが実情です。
具体的なノウハウを共有できる情報が少ないため、多くの企業が手探りで進めているのが実情です。
このデメリットは裏返すとノウハウが浸透していない分「他社との差別化が図りやすい」とも言えます。
ここからは高卒採用のメリット・デメリットを踏まえ、高校新卒採用を成功させるためのポイントを解説していきます。
高卒採用は企業が新卒の高校卒業者を対象にした採用活動であり、特定のルールに基づいて行われます。
高卒採用を行う際は、独自ルールを活かした採用戦略の構築が重要です。
主な独自ルール
- 一人一社制
- 直接連絡禁止
- 高卒求人申込み
- 書類選考での不採用NG
直接連絡禁止
1人1社制とも関係していますが、採用企業は高校新卒の就活生を書類選考で不採用にすることはできません。 この「企業から生徒への直接連絡禁止」というルールは、企業と学生との間に適切な距離感を保つことを目的としています。
このルールは、採用活動において不公平や不正な影響を避け、すべての学生が平等に採用の機会を得られる環境を整えるために設定されています。
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高卒求人申込み
高卒採用において、求人票や求人募集の解禁時期は一律で定められています。
具体的には、毎年の解禁日が設定されており、この日以降に求人票を発行し、学生に対して募集を開始することが求められます。さらに、求人票の発行にはハローワークの確認が必要です。
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書類選考での不採用NG
高卒採用における「書類選考での不採用NG」というルールは、特に日本の教育環境や社会的背景を考慮した上で設定されています。
このルールの目的は、学生の教育を重視し、将来のキャリア形成において公平な機会を提供することです。
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高卒採用を成功させるには、高校生側と企業側の動きを把握することが最重要です。
高卒採用の活動スケジュールには、国が定めたルールが存在します。
企業は、高校生の就職スケジュールと高卒採用の独自ルールを理解した上で活動を行うことが求められます。
高校新卒採用で抑えておきたいのは下の5つの日程です。
<高卒採用選考スケジュール 主要5日程>
6月1日
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ハローワーク:求人受付開始
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7月1日
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ハローワーク:求人票公開開始
高校への求人票持参・郵送
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9月5日
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高校・高校生:応募書類提出開始
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9月16日
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採用選考の開始~内定
※高校新卒採用では、企業は書類選考を行うことが出来ません
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10月頃
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二次募集開始
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高校生をターゲットにするためには、高校との関係構築が不可欠です。一度採用した工業高校からその後何年も続けて採用できたというのはよくある話です。
まずは、学校訪問や職業説明会への参加を通じて、学校側との信頼関係を築きましょう。
また、インターンシップや職場見学を実施することで、生徒に企業の魅力を直接伝える機会を作ることができます。
学校との連携を強化することで、企業の存在を知ってもらい、学生からの応募を促す環境をえることが大切です。
民間求人がまだまだ少なく、求人票の発行にはハローワークの確認が必要である高卒採用においては、ハローワークの求人による差別化は絶大な力を発揮します。
特に、魅力的な仕事内容や職場環境をアピールすることで、ライバル企業との差別化を図ることができます。具体的な数値やエピソードを交えることで、応募者の興味を引くことが可能です。
高卒採用に取り組む企業の多くは、ハローワークの高卒専用の求人票だけを対象となる高校に送付します。
しかし、ハローワークの求人票はあくまで文章と数字による情報なので、どれだけ差別化された求人票を作成しても、高校生や先生の興味を引き付けるには不十分です。
そこで、求人票の他にもパンフレットや会社案内などの更に多くの情報を掲載できる資料を用意することで、情報量で他社に差をつけましょう。
また、高校にパンフレットや企業案内を送ることで得られるメリットは、高校生を魅了するだけではありません。
パンフレット・会社案内を用意するもう一つのメリットは、学校の先生に対する採用の熱量を証明するためです。
高校の先生は、高卒採用に対して熱量の高い企業を自分の生徒に紹介したいと思うものです。
「職場の環境が詳しくわかる」「若手社員の教育体制に熱心な企業だとわかる」「高卒の社員が活躍している様子がわかる」
このような内容は高校の先生にとって生徒に紹介する動機づけになります。
更に、パンフレットや企業案内は高校生との早期のタッチポイントを作るためにも効果的です。
高卒採用ではハローワークに申請した求人票を7月1日まで公開することはできません。
しかし、あらかじめパンフレットなどの資料を高校に対して送ることは可能なので、他の企業よりも早く高校生にアピールすることができます。
近年、高卒採用が注目されている背景には、労働力人口の減少や地域経済の活性化を目指す企業戦略があります。
地元の高校生を積極的に採用する企業が増え、高卒者の採用に対する需要が高まっています。
この記事では、高卒採用のメリット・デメリットを解説し、成功に導くためのポイントを紹介しました。
高卒採用のメリット
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1.ライバルの少なさ 大卒採用に比べて競争が緩やかで、高卒採用の機会が増える。
2.コストを抑えて採用できる 高卒者の採用コストは大卒者の約3分の1で、効率的な採用が可能。
3.内定辞退が少ない 「一人一社制」により内定辞退率が低く、採用の確実性が高い。
4.育成しやすい人材を採用できる 若い世代は柔軟な思考を持ち、企業文化に適応しやすい。
5.続けるほど採用しやすくなる 学校との信頼関係を築くことで、継続的な採用が可能。
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高卒新卒採用を成功させるためのポイント
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1.独自ルールを活かした採用戦略の構築 高卒採用特有のルールを理解し、戦略を立てることが重要。
2.高校生の就活スケジュールを把握する 高校生の動向をつかむことで、的確なアプローチが可能。
3.対象高校への熱意をアピール 学校訪問や説明会を通じて信頼関係を築く。
4.ハローワークの求人票で差別化を図る 魅力的な内容を盛り込み、ライバル企業との差別化を図る。
5.パンフレットや採用案内で存在感を出す デザインや内容に工夫を凝らし、応募者の関心を引く。
以上のポイントを考慮することで、高卒採用を効果的に進めることが可能となります。
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