ペルソナ作成
採用マーケティングとは、企業が優秀な人材を引き寄せ、採用するためにマーケティングの手法を活用することを指します。このアプローチは、従来の採用活動における単なる求人広告や募集通知とは異なり、ターゲットとなる候補者のニーズや価値観を理解し、それに基づいて魅力的なメッセージを発信することを重視します。
人材不足が叫ばれる近年、特に競争が激しい業界で優秀な人材を確保するために重要な戦略となっています。
この記事では、採用マーケティングに取り組むことで得られるメリットや取り組む施策ごとのフレームワーク、実際の成功事例や学習の際に参考となる本などを解説していきます。
採用マーケティングとは、企業が優秀な人材を引き寄せ、採用するためにマーケティングの手法を活用することを指します。採用マーケティングには、企業が優秀な人材を効果的に獲得するための多くのメリットがあります。
この章では採用マーケティングに取り組むことで得られるメリットを7つ紹介します。
1.ブランドの強化
採用マーケティングを通じて、企業のブランドイメージを向上させることができます。候補者に対して企業文化や価値観をアピールすることで、良い印象を持ってもらえます。
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2.ターゲットの明確化
効果的な採用マーケティングは、ターゲットとなる人材を明確にし、そのニーズや期待を理解することに役立ちます。これにより、より適切な採用戦略を立てることができます。
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3.候補者のエンゲージメント向上
ソーシャルメディアやブログなどを活用して企業情報を発信することで、候補者とのコミュニケーションが活発になり、エンゲージメントを高めることができます。
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4.優秀な人材の確保
市場に出回っている人材の中から特に優秀な人を見つけ出し、アプローチするチャンスが広がります。採用マーケティングを使用すると、受動的な候補者にもアプローチできます。
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5.採用コストの削減
効果的な採用マーケティングは、従来の採用方法に比べてコストを抑えつつ効果的な結果を得られる可能性があります。特に、自社のメリットをしっかり伝えることで、応募者数を増やし、採用の成功率を高めます。
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6.データに基づく意思決定
マーケティング手法を採用することで、データ分析を通じた意思決定が可能になります。どのチャネルが効果的か、どのメッセージが響くかを分析し、採用戦略を最適化できます。
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7.プロセスの効率化
採用マーケティングの取り組みは、応募者からの関心を高めることで、採用プロセス全体を効率化する助けとなります。より多くの質の高い候補者が集まることで、選考にかかる時間を短縮できます。
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これらのメリットは、採用の成功を高めるだけでなく、企業全体の競争力を向上させる要因ともなります。
採用マーケティングを行うメリット |
採用マーケティングを行わないデメリット |
応募数増加 |
採用工数の増加 |
企業イメージの向上 |
競争力の低下 |
採用プロセスの効率化 |
応募者の質の低下 |
採用マーケティングは、企業が優秀な人材を獲得するために必要不可欠な戦略です。
この章では、採用マーケティングが現在の市場で注目されている理由を6つ紹介します。
競争の激化
市場には多くの企業が存在し、特にスキルの高い人材に対する需要が急増しています。採用マーケティングを通じて、自社の魅力をアピールし、他社との差別化を図ることが重要です。
ブランドの構築
採用マーケティングは、企業の雇用ブランドを構築する手助けをします。候補者が企業の文化や価値観を理解し、自分に合った職場かどうかを判断する材料を提供することで、興味を引きつけます。
ターゲティング
効果的な採用マーケティングにより、特定のスキルや経験を持つ候補者に焦点を当てたプロモーションが可能になります。これにより、より適切な人材を短期間で見つけることができます。
コスト削減
適切な採用マーケティングを行うことで、採用プロセスにおける無駄なコストを削減できます。良い人材を早く見つけることができれば、採用活動にかかる時間とリソースを効率的に使うことができます。
候補者体験の向上
採用マーケティングは、候補者とのコミュニケーションや関係構築の手段でもあります。候補者に対してポジティブな体験を提供することで、応募意欲を高め、企業のイメージ向上につながります。
デジタル化の進展
SNSやオンラインプラットフォームの普及により、候補者は情報を得る手段が増えています。そのため、従来の採用活動とは違った手法でのアプローチが必要とされています。
採用マーケティングにおける「ファネル」と「チャネル」は、それぞれ異なる役割を果たす重要な概念です。名称が似ているため混同しやすいですが、きちんと抑えておきましょう。
ファネル(Funnel)
ファネルは、候補者の応募プロセスや意識の変化を示すモデルです。一般的には、認知、興味、評価、応募、選考、内定、入社といったステージで構成されます。ファネルの上部に行くほど広く(多くの人が参加する)、下部に行くほど狭く(少数が最終的に入社する)なります。以下はそれぞれのステージの概要です。
認知 |
企業の存在や雇用機会を知る段階。 |
興味 |
企業やポジションに対する関心が高まる段階。 |
評価 |
書類や面接を通じて候補者が企業を評価し、 自分がそのポジションに適しているかを考える段階。 |
応募 |
実際に応募する段階。 |
選考 |
書類選考、面接などの選考プロセス。 |
内定 |
候補者に内定を出す段階。 |
入社 |
実際に入社する段階。 |
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チャネル(Channel)
チャネルは、候補者との接点やコミュニケーションを行う手段、経路を指します。採用活動においては、様々なチャネルを通じて候補者にアプローチします。主なチャネルには次のようなものがあります。
求人サイト |
Indeedやリクナビなど、求人情報を掲載し応募を促すサイト。 |
SNS |
Facebook、Twitterなどを利用して企業文化や雇用機会を発信する。 |
自社ウェブサイト |
企業の採用ページやブログなど、会社についての詳細を提供する。 |
リファラル(紹介) |
社員からの紹介による候補者獲得。 |
イベント・キャリアフェア |
学校や業界イベントでの直接の対面での接触。 |
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採用マーケティングにおいては、ファネルによって候補者の意識や行動の段階を理解し、チャネルを通じて効果的にアプローチすることが重要です。これにより、質の高い候補者を引き寄せ、最終的な採用成功率を高めることができます。
採用マーケティングは、企業が優秀な人材を効果的に惹きつけるための戦略的方法です。この章では具体的な施策と各施策におけるフレームワークを解説します。
ペルソナ作成は企業が求める理想的な候補者の特徴を明確にすることです。例えば、「新卒エンジニア」をペルソナとして設定すると、その年齢、学歴、興味関心、価値観などを具体的に定義し、そのペルソナに向けたメッセージやキャンペーンを展開します。
基本的なペルソナテンプレート
- 名前:ペルソナに仮名を付ける
- 職業・役職対象とする職種や役割
- 年齢:年齢層
- 学歴:最終学歴や専攻
- スキル:持っている専門的スキルや資格
- 志向・価値観:求職者が重視する価値観(キャリア成長、ワークライフバランスなど)
- 悩みや障害:就職活動における課題や不安
- 情報源:どのメディアやプラットフォームで情報を得るか
ペルソナ作成でおすすめのフレームワーク
■6W2H
「6W2H」は効率的にペルソナを詳細に理解するための方法です。ペルソナ作成にあたり考慮すべき8つの項目の頭文字を取り「6W2H」と呼ばれています。
Who |
誰が? |
What |
何を求めているのか? |
When |
いつ活動を開始するのか? |
Where |
どこで情報を得るか? |
Why |
なぜ志望するのか?(動機や目的) |
Who |
どのように情報を探し、応募するのか? |
How much |
期待する給与や条件は? |
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■SWOT分析
SWOT分析は、自社の採用活動における強み・弱み・機会・脅威を分析し、データを基に戦略を見直すフレームワークです。このフレームワークを使用することで、外部環境や市場の変化に対応したペルソナを作成できます。
SWOTとは、以下の分析すべき点の頭文字です。 Strengths(強み)・Weaknesses(弱み)・Opportunities(機会)・Threats(脅威)
以下の表のように、自社を取り巻く「内部/外部の要因」「プラス/マイナスの要因」を4象限のマトリクスにまとめていきます。
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プラスの要因 |
マイナスの要因 |
内部の要因 |
Strengths (強み) |
Weaknesses (弱み) |
外部の要因 |
Opportunities (機会) |
Threats (脅威) |
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これらのフレームワークを活用して、ターゲットとなる求職者の詳細なペルソナを作成することで、効果的な採用マーケティングが可能になります。
カスタマージャーニーとタッチポイントの見直しは、候補者が応募するまでの過程を「認知」「興味」「評価」「応募」「選考」に分け、それぞれのステージでどのような情報や体験が必要かを分析します。例としては、SNS広告で認知を広め、企業のウェブサイトやオープンキャンパスで興味を引き、応募の締切リマインダーを送るなどの取り組みです。
採用マーケティングにおけるカスタマージャーニーとタッチポイントでおすすめのフレームワーク
採用マーケティングにおけるカスタマージャーニーとタッチポイントを理解し、効果的に活用するためのフレームワークはいくつかありますが、以下の2つのフレームワークをおすすめします。
■AIDAモデル(Attention, Interest, Desire, Action)
AIDAモデルは、採用活動の各ステージにおいて候補者の心理的なプロセスを理解するのに役立ちます。
- Attention(注意) :求人広告や企業のブランドを通じて候補者の注意を引く。
- Interest(関心) :候補者が企業文化や職務内容に興味を持つように情報を提供する。
- Desire(欲求) :自社で働くことに対する魅力を高めるためのメッセージを発信する。
- Action(行動) :応募を促す具体的な行動(エントリーフォームの記入など)を促進する。
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■カスタマージャーニーのステージ
カスタマージャーニーのステージは、カスタマージャーニーを「認知」「検討」「決定」の3つのステージに分け、そのそれぞれに対するアプローチを考える方法です。
- 認知 :ブランドや求人情報を広めるためのキャンペーンやコンテンツを展開する。
- 検討 :応募候補者が企業を深く理解できるよう、社員のインタビューや職場環境の紹介などのコンテンツを提供する。
- 決定 :最終的な応募を促すために、明確な応募手順や魅力的なオファーを提示する。
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これらのフレームワークをもとに、具体的な施策を検討し、実施することで、候補者のエンゲージメントを高められるでしょう。
採用マーケティングにおいても、コンテンツマーケティングの役割は大きいです。
ブログ記事や動画コンテンツを通じて、企業文化や社員の働き方をSNSなどで発信することで、企業の魅力を伝えることができます。
採用マーケティングにおいても、データの分析と改善は重要です。採用活動の効果を測定するために、応募数、選考通過率、内定承諾率などを数値で追い、成功した施策や改善点を分析します。この際、各数値にKPIを設定することも忘れないようにしましょう。
採用マーケティングにおけるデータ分析と改善でおすすめのフレームワーク
採用マーケティングにおけるデータ分析と改善には、いくつかのフレームワークが役立ちます。以下におすすめのフレームワークをいくつか紹介します。
■PDCAサイクル
PDCAサイクルはデータの分析と改善のプロセスの頭文字を取ったフレームワークです。
- Plan(計画)採用目標を設定し、ターゲットとなる候補者像を明確にします。また、どのチャネルを利用するかを決定します。
- Do(実行)計画に基づいて、キャンペーンや広告を実施します。
- Check(評価)データを収集し、KPI(重要業績評価指標)に基づいて成果を評価します。
- Act(改善)評価結果を基に改善案を考え、次のサイクルに反映させます。
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■A/Bテスト
ABテストでは、異なるバージョンの広告や応募フォームを用意し、どちらがより効果的かを比べてデータを収集します。これにより、最も効果的な要素を特定し、最適化に役立てます。
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これらのフレームワークを組み合わせることで、採用マーケティングのデータ分析と改善を効果的に進めることができます。具体的なケースに応じて、適切な方法を選択してください。
これらの施策を用いて、ターゲット候補者に合わせた採用戦略を展開することで、より効果的な採用マーケティングを実現できます。
ここまでは、採用マーケティングに取り組むメリットや施策において有効なフレームワークを解説しました。
この章では日本における採用マーケティングの成功事例として、以下の5社を紹介します。
- リクルート
- サイバーエージェント
- クックパッド
- グリー
- マクロミル
1.リクルート
リクルートは、採用におけるマーケティング手法を統合的に活用し、自社のブランドを強化しています。特に自社の求人情報サイトに加えて、SNSや動画コンテンツを駆使した新しい形の求人広告を展開し、ターゲット層に響くメッセージを発信しています。
2.サイバーエージェント
サイバーエージェントは、自社の社員が描くインタビュー動画や、ビジュアルコンテンツを通じて、企業文化やワークスタイルを強調しました。特に若手人材に向けたSNSを活用したプロモーションが功を奏しています。
3.クックパッド
クックパッドは、採用ページにおいて社員のストーリーを重視し、組織の価値観や働き方を伝えています。また、オウンドメディアを活用して、料理や食に対する情熱を共有することで、共感を呼ぶ採用活動を展開しています。
4.グリー
グリーは、「社員紹介制度」を導入し、社員が自身のネットワークを活かして新たな人材を採用する取り組みを行っています。また、自社ゲームを経験することで応募者にどんな職場で働くかをリアルに感じてもらうイベントを開催することで、関心を高めています。
5.マクロミル
マクロミルは、多様な働き方を提供することで注目を集めています。フレックスタイム制度やリモートワークの導入など、柔軟な働き方を強調し、その結果として応募者に対して企業の魅力を最大限にアピールしています。また、データを活用した採用戦略も注目されています。
これらの企業は、それぞれ独自のアプローチを取り入れ、採用マーケティングを成功させています。
この章では、この記事を読んだうえで採用マーケティングの知識をより深めたい担当者様に向け、採用マーケティングに関する学習に役立つ本をいくつかご紹介します。
「新しい価値のつくりかた」というサブタイトルの本書。商品・サービスのブランディングや戦略設計のために書かれていますが、本書で紹介されているフレームワークは採用マーケティングに応用できるものばかりです。
普段はブランディングやマーケティング活動の知見がない方に向けて、基礎的な考え方を身に着けていくために最初におすすめしているのが本書です。マーケティング初心者にもわかりやすい内容になっているので、これから採用マーケティングに取り組んでいく採用担当者の方にはうってつけの書籍です。
「ターゲットは誰なのか?」「競合他社は何に強みがあって、何をアピールしているのか?」「その市場の中で、自社が強みとして求職者にPRするべきポイントはどこか?」このような、採用マーケティングの考え方を基礎から身に着けたい方におすすめです。
■本書のおすすめポイント
- インサイト(求職者の潜在的な欲求・本心)の見つけ方・分析の仕方がわかる
- 求職者・競合他社・自社の分析の仕方、全体像の捉え方がわかる
- 紹介されているフレームワークに当てはめていけば「採用コンセプト設計」の一連の流れがわかる
- マーケティング初心者にも理解しやすい
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採用活動の全体像・戦略設計についての理解を深められる書籍です。採用活動を以下の5つのステップに分けて考えていくことで、採用マーケティングへの解像度が上がり、この記事で紹介したフレームワークをさらに有効に活用できるようになります。
採用活動の5つのステップ
- WHY:何のために採用するか?(採用目的の言語化)
- WHO:どんな人を採用するか?(採用人物像の言語化)
- WHAT:提供できる価値は?(入社するベネフィットの言語化)
- WHEN:いつ伝えるか?(動機づけ&見極めプロセスの設計)
- HOW:どうやって伝えるか?(募集手段の選定)
■本書のおすすめポイント
- 採用マーケティングの全体像をつかめる
- 採用がうまくいっている会社の経営者や担当者が実践していることがわかりやすくまとまっている
- 採用活動をいつどこでどの順番でどうすればいいかも分かり易く解説されている
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本書を読むことで、中小企業が「良い人材」を採用するために何をしたらよいのかがわかります。
「どのようにしたら求職者の心をつかめるのか?」「どうやったら大企業ではなく自社を選んでくれるのか?」
中小企業やベンチャー企業の採用担当者ならだれでも考えたことがある悩みだと思います。
新卒採用に寄っている内容ですが、この記事で紹介した「採用ペルソナ」の設計をはじめ、実践できるノウハウがわかりやすくまとめられています。
■本書のおすすめポイント
- 中小企業・ベンチャー企業の担当者が全員知っておくべきノウハウ
- 大手企業に対してどのようにポジションをとっていくのか、採用マーケティングに欠かせない視点を学べる
- 実践的なノウハウや考え方の解説が多く、現場で使いやすい
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これらの本を通じて、採用マーケティングの理論だけでなく、実践的なノウハウも学ぶことができるでしょう。
採用マーケティングは、優秀な人材を確保するための効果的な手法であり、企業の成長に欠かせない戦略となっています。これまでの内容を振り返ると、以下のようなメリットが挙げられます。
ブランディングの向上 |
企業の価値観や文化を発信することで、求職者にとって魅力的な職場としての認知度が向上します。 |
ターゲットリーチの拡大 |
データ分析と適切なチャネルの選択により、理想的な人材に直接アプローチできます。 |
候補者体験の向上 |
一貫したメッセージや体験を提供することで、求職者のエンゲージメントを高め、選考プロセスに対する満足度を向上させます。。 |
これらのメリットを最大限に活かすためには、適切なフレームワークを用いることが重要です。フレームワークを活用することで、ターゲット候補者のニーズや行動を深く理解し、彼らに響くメッセージを生み出すことができます。また、デジタルツールやSNSを積極的に活用することで、情報発信を効果的に行うことが可能です。
さらに、採用マーケティングに関する知識を深めるために、おすすめの書籍をいくつか紹介しました。これらの資料を通じて学びを深め、自社の採用活動に役立てることが期待できます。
今後も採用マーケティングは進化し続け、企業が求めるスキルやカルチャーフィットを持った人材を見つけるための重要な役割を果たすでしょう。優れた人材を獲得するためには、戦略的かつ継続的な取り組みが不可欠です。ぜひ、ここで得た知識を基に、実践を重ねてみてください。
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