「せっかく採用した新人がすぐに辞めてしまう」「配属後のモチベーションが低い」
その原因は、彼らの忍耐力不足ではなく、入社前の理想と現実に乖離がある「リアリティショック」にあります。
実は、社会人の約76.6%がこのリアリティショックを経験しているというデータがあります。これは特定の個人の甘えではなく、組織構造上の課題として捉えるべき問題です。
本記事では、リアリティショックを引き起こす「4つの原因」を体系的に解説し、入社前の予防策と入社後のギャップを緩和する対策方法についてご紹介します。
これを読めば、悲しいミスマッチを未然に防ぎ、貴社のカルチャーに真にマッチした人材が定着する「強い組織」を作るための具体的なアクションが見つかるはずです。
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リアリティショックとは?理想と現実のギャップが招く衝撃

リアリティショックとは、新入社員が入社前に抱いていた仕事や職場への理想と、実際に働き始めて直面した現実との間に大きな乖離があり、そのギャップに衝撃や幻滅を感じてしまう状態を指します。
「こんなはずじゃなかった」「話が違う」という感情は、誰しも一度は抱いたことがあるでしょう。
この現象は、特定の個人の問題というよりも、新しい環境に適応する過程で誰もが通る「通過儀礼」のような側面を持っています。まずは、この言葉が生まれた背景と、現在の日本企業における深刻さについて見ていきましょう。
リアリティショックの意味と提唱された背景
この概念は、シカゴ学派の社会学者Everett C. Hughes(エヴェレット・ヒューズ)の著書『Men and Their Work』によって提唱されました。
彼は、新入社員が入社前に抱く「過度な期待」が、入社後の「厳しい現実」によって打ち砕かれるプロセスをリアリティショックと定義しました。
ヒューズの社会学的洞察を、具体的な組織心理学の概念として「リアリティショック」と命名し、体系化したのが看護学者のMarlene Kramer(マリーン・クレーマー)です。
学生から社会人になる際、あるいは転職して新しい会社に入る際、人はどうしても希望に満ちた明るい未来を想像します。「クリエイティブな仕事ができる」「優秀な先輩に囲まれて成長できる」といった期待値が高ければ高いほど、泥臭い下積み業務や人間関係の摩擦といった現実に直面したときの落差は大きくなります。
「ゆとり世代の問題」ではない?約8割が経験する普遍的課題
「最近の若者は忍耐力がないから、すぐにショックを受けるんだ」と考えてしまうベテラン社員の方もいるかもしれません。しかし、それは誤解です。
パーソル総合研究所が実施した「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」によると、入社後に何らかのリアリティショックを感じたと回答した人は、全体の76.6%にものぼります。

つまり、新入社員の約8割、5人に4人がこの壁にぶつかっているのです。
このデータは、リアリティショックがゆとり世代やZ世代といった「特定の世代特有の問題」ではなく、時代や世代を問わず誰にでも起こりうる普遍的な「人間の心理的反応」であることを示しています。
個人の資質に原因を求めるのではなく、組織構造上の課題として捉えなければ、根本的な解決はできません。
新入社員だけではない?管理職や復職者にも起こるリスク
リアリティショックは、新入社員や中途入社者だけの問題ではありません。社歴の長いベテラン社員であっても、役割や環境が大きく変わるタイミングで発生します。
代表的な例が「昇進・昇格時」です。プレイヤーとして優秀だった社員が管理職になった途端、「自分の仕事ができない」「部下のマネジメントがこれほど大変だとは思わなかった」という役割のギャップに苦しむケースは後を絶ちません。
また、「育休からの復帰時」も要注意です。休んでいる間に社内のシステムや人間関係が変わってしまい、「浦島太郎状態」になって疎外感を感じたり、育児と仕事の両立が想像以上に困難で自信を喪失したりすることも、一種のリアリティショックといえます。
なぜ起こるのか?リアリティショックを引き起こす「4つの要因」
ここまで、リアリティショックは誰もが経験しうる普遍的な課題であるとお伝えしました。
では、具体的にどのような場面で、人は「理想と現実のギャップ」を感じるのでしょうか。
その要因は無数にあるように思えますが、大きく分けると4つのパターンに分類できます。

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)などの調査においても、若年層の離職理由として常に上位に挙がるのは「仕事内容」「人間関係」「労働条件」といった項目です。これらはまさに、入社前のイメージと実際の環境が食い違っていた結果といえるでしょう。
ここでは、読者の皆さんの会社でも起きているかもしれない具体的な事例を交えながら、4つの要因を解説します。
1. 仕事・業務内容に関するギャップ
最も発生頻度が高いのが、日々の業務内容に関するギャップです。これには「期待していた仕事ができない(過大評価)」と「自分の能力が通用しない(過小評価)」の2つの側面があります。
過大評価の典型例は、「クリエイティブな企画ができると思っていたのに、来る日も来る日も泥臭いデータ入力やテレアポばかり」といったケースです。
企業側からすれば、下積みとして現場を知ることは重要ですが、入社前に華やかな部分しかイメージできていない新入社員にとっては、「やりたいことができない」という強い不満につながります。
過小評価は、中途採用や優秀な新卒社員によく見られます。
「即戦力として活躍するつもりで入社したが、周囲のレベルが高すぎてついていけない」「これまでのやり方が全く通用しない」というケースです。
2. 対人関係・コミュニケーションのギャップ
職場の人間関係は、退職理由の決定打になることが多い要素です。ここでいうギャップとは、単に「上司と性格が合わない」といった相性の問題だけではありません。
深刻なのは、職場における「心理的な疎外感」です。
「配属されたものの、忙しそうな先輩ばかりで質問ができない」「チームの輪に入っていけず、常に孤独を感じている」といった状況は、新入社員の心を急速に摩耗させます。
また、その会社特有の「暗黙のルール」や「社内政治」が分からず、悪気なく振る舞った結果として叱責されることも、大きなショック要因となります。「この職場には自分の居場所がない」と感じさせてしまうことこそが、最も避けるべき事態です。
3. 他者能力・自己能力に対するギャップ
自分と他人を比較することで生まれるギャップも、リアリティショックの引き金となります。これには「自分への失望」と「組織への幻滅」の2パターンがあります。
「自分への失望」は、同期入社のメンバーと比較したときに起こります。「同期のAさんはもうプロジェクトを任されているのに、自分はまだ研修中だ」といった劣等感から、焦りが生まれ、自己効力感を失ってしまうパターンです。
一方で、「組織への幻滅」も見過ごせません。
「憧れていた先輩が、裏では会社の悪口ばかり言っている」「尊敬できる上司がおらず、士気の低い社員ばかりだ」という現実に直面した場合です。「この会社にいて、自分は成長できるのだろうか」という将来への不安は、優秀な人材ほど敏感に感じ取り、早期離職へとつながります。
4. 評価・待遇に関するギャップ
最後は、評価や待遇に関するギャップです。これは単に「給料が安い」という金額の話だけではありません。「頑張りが正当に報われない感覚」が不満の源泉です。
学生時代までは、テストで良い点を取れば評価されました。しかしビジネスの現場では、プロセスよりも成果が重視されたり、あるいは数字には表れない定性的な貢献が求められたりと、評価基準が複雑になります。
「こんなに残業して頑張っているのに評価されない」「昇進の基準が不透明で、いつまで経ってもキャリアアップできない」といった不満が蓄積すると、社員は会社への信頼を失います。
特に、「成果を出せばすぐに給料が上がる」と思っていたベンチャー志向の人材が、意外と年功序列の残る評価制度に直面した際などに、このギャップは顕著に現れます。
リアリティショックが企業と従業員に及ぼす深刻な影響

もし、社内で「若いうちは苦労して当たり前。そのうち慣れるだろう」といった楽観的な空気が流れているとしたら、すぐに認識を改める必要があります。
リアリティショックを単なる個人の悩みとして放置することは、企業にとって計り知れない損失を生むリスクがあります。ここでは、経営視点で見たときに見逃せない3つの深刻な影響について解説します。上司や経営層へ対策の必要性を説明する際の材料としてもお使いください。
採用コストの損失と早期離職の連鎖
最も直接的で痛手となるのが、金銭的な損失です。
一般的に、新卒採用や中途採用で1人の人材を獲得するには、求人広告費やエージェント紹介料、面接官の人件費などを合わせると100万円から数百万円のコストがかかるといわれています。
もし、入社してわずか半年で退職されてしまった場合、その投資は回収できないまま消えてしまいます。それどころか、入社手続きや研修に費やした既存社員の時間もすべて無駄になってしまうのです。
さらに恐ろしいのが、早期退職は連鎖する可能性があるということです。
期待されていた新人が早期に辞めてしまうと、残された同期や若手社員の中に「あの優秀な〇〇さんが辞めるなんて、この会社は危ないのかもしれない」という疑念が生まれます。一つの退職が引き金となり、不安がウイルスのように組織内に伝染し、次々と退職者が続く「連鎖退職」を招くケースは珍しくありません。
組織全体のモチベーション・生産性低下
退職に至らないまでも、リアリティショックを抱えたまま働いている社員は、組織のパフォーマンスを低下させます。
理想と現実のギャップに苦しんでいる社員は、仕事への意欲を失い、どうしても受け身の姿勢になりがちです。「言われたことだけやればいい」「どうせ頑張っても無駄だ」という思考に陥り、自発的な提案や改善行動が見られなくなります。
また、ネガティブな感情は周囲にも影響します。
休憩室や飲み会の場で、会社への不満や愚痴をこぼす社員が一人でもいると、チーム全体の士気は確実に下がります。前向きに頑張ろうとしている他のメンバーの足まで引っ張ってしまうため、結果として部署全体の目標達成が遠のいてしまうのです。
メンタルヘルス不調(五月病・適応障害)
初期対応を誤ると、従業員の心身の健康そのものを損なう危険性があります。
入社直後の4月は緊張感で持ちこたえていても、ゴールデンウィーク明け頃から「朝起きられない」「会社に行こうとすると腹痛がする」といった、いわゆる「五月病」の症状が出始めます。
これはリアリティショックによるストレス反応の一種ですが、甘く見てはいけません。「気合いが足りない」と精神論で追い詰めたり、適切なケアをせずに放置したりすると、適応障害やうつ病といった深刻な疾患へと進行する可能性があります。
一度メンタルヘルス不調に陥ると、回復には長い時間を要します。休職となれば本人のキャリアにとっても大きな痛手ですし、企業にとっても安全配慮義務を問われる重大な事態になりかねません。
採用段階でできるリアリティショックの予防策

リアリティショックを防ぐための鉄則は、入社してから慌ててケアをするのではなく、入社前の段階で可能な限りギャップを埋めておくことです。
「採用数さえ確保できればいい」という考えで、自社の良い面ばかりをアピールするのは逆効果です。それは、後々必ず爆発する時限爆弾を抱え込むようなものだからです。
ここでは、ミスマッチを未然に防ぎ、貴社のカルチャーに共感する人材だけを集めるための具体的な予防策を解説します。
RJP(リアリスティック・ジョブ・プレビュー)の導入
まず押さえておきたいのが、組織心理学の分野で提唱されている「RJP(Realistic Job Preview:現実的な職務予告)」という手法です。
これは、入社希望者に対して、仕事のやりがいやポジティブな情報だけでなく、厳しさや大変さといったネガティブな情報もあえてありのままに開示することを指します。
事前に「厳しい現実」というワクチンのような情報を与えておくことで、入社後のショックに対する免疫をつける効果があります。
「そんなことをしたら応募者が減ってしまうのではないか」と不安に思うかもしれません。しかし、ネガティブな情報を聞いて辞退する人は、入社してもすぐに辞めてしまう可能性が高い人です。RJPは、定着する人材を見極めるための最初のふるいとして機能します。
「採用広報・ブランディング」で“自社らしさ”を可視化する

RJPの理論を、より戦略的に実践する手段が「採用広報」や「採用ブランディング」です。
採用ブランディングというと、「自社を綺麗に見せて、応募者を増やすための施策」だと誤解されがちですが、本来の目的は全く逆です。
等身大の姿を魅力的に伝え、「合う人と合わない人を明確にするフィルタリング機能」こそが、採用ブランディングの本質です。
例えば、求人票に「残業あり」と事務的に書くだけでは、現場の空気感は伝わりません。
しかし、社員ブログやインタビュー動画を通じて「繁忙期はチーム全員で深夜まで残ることもあるが、その分プロジェクトが終わった後の達成感は何物にも代えがたい」という現場の声をコンテンツとして発信した場合はどうでしょうか。
安定を求める人は応募を控えるでしょうし、逆に「チームで熱く働きたい」と願う人にとっては、その厳しさこそが魅力に映ります。
このように、自社のカルチャーや仕事の厳しさを隠さずにコンテンツ化し、発信し続けることが、結果として最強のミスマッチ防止策になるのです。
インターンシップ・OB訪問による「現場解像度」の向上
Web上の情報発信に加え、リアルな接点を持つことも重要です。
文字や動画だけでは伝えきれない「職場の匂い」や「社員同士の距離感」を肌で感じてもらうには、インターンシップやOB・OG訪問が有効です。
特に近年では、1day仕事体験のような短期的なものだけでなく、実際のプロジェクトの一部に参加してもらう長期インターンシップを導入する企業が増えています。
「思ったより会議が長いんだな」「雑談が少なくて静かな職場なんだな」といった細かな気づきの一つひとつが、入社後の解像度を高め、リアリティショックの芽を摘んでいきます。
選考プロセスにおける「期待値調整」の徹底
最後は、面接官による直接的なコミュニケーションです。
面接を選考の場(ジャッジする場)としてだけでなく、「お互いの期待値をすり合わせる場」として活用してください。
候補者のスキルや志望動機を聞くだけでなく、企業側からも「入社後、最初にぶつかるであろう壁」や「現状の組織課題」を隠さずに伝えます。
その上で、「この課題に対して、一緒に立ち向かってもらえますか?」と問いかけてみてください。
このプロセスを経て、覚悟を持って「はい」と答えた人材は、入社後に困難に直面しても「聞いていた通りだ」と冷静に受け止め、前向きに乗り越えていくことができます。これが「握り」のコミュニケーションです。
入社後のリアリティショックを和らげ定着を促す「事後対策」

どれほど丁寧に採用広報を行い、事前の期待値調整を徹底したとしても、入社後のギャップを完全にゼロにすることは難しいのが現実です。
重要なのは、ショックを受けないようにすることだけではありません。ショックを受けたときに、それを一人で抱え込ませず、組織として受け止める「セーフティネット」を用意しておくことです。
ここでは、入社後に企業が取り組むべき具体的なフォロー体制について解説します。
心理的安全性を高める1on1とメンター制度
リアリティショックを悪化させる最大の要因は「孤独感」です。
「こんなことを相談したら、能力不足だと思われるのではないか」
そうやって新人が殻に閉じこもってしまう前に、意図的に「吐き出す場」を用意する必要があります。
効果的なのは、週に一度などの高頻度で行う「1on1ミーティング」です。
ここでのポイントは、業務の進捗管理や指導の場にしないことです。あくまで、新入社員が感じている不安や違和感を「否定せずに聞く場(ガス抜き)」として機能させてください。
上司が「実は私も新人の頃、同じことで悩んだよ」と自己開示するだけでも、新人の心理的安全性は劇的に高まります。
また、利害関係のない「斜めの関係」を作るメンター制度も有効です。直属の上司には言いにくい悩みも、別部署の先輩になら相談できるケースは多いため、孤立を防ぐ強力な手立てとなります。
キャリアパスの可視化と適切な評価フィードバック
目の前の仕事に対して「やる意味があるのか?」と疑問を持たせないためには、業務への「意味付け(意味の付与)」が欠かせません。
新人が担当する仕事は、どうしても単調な作業や下積みが中心になりがちです。しかし、その泥臭い業務が将来のキャリアにどう繋がっているのかを、上司が言語化して伝えることで納得感は変わります。
例えば、「このテレアポ業務は単なる作業ではなく、顧客の断り文句からニーズを探るマーケティングの基礎体力作りだ」といった具合です。
また、「Will(やりたいこと)」「Can(できること)」「Must(すべきこと)」のフレームワークを用いて定期的に面談を行い、現在の業務(Must)がいかに本人の将来(Will)に寄与するかをすり合わせることも、モチベーション維持に不可欠です。
昇格者・復職者への「再オンボーディング(Re-onboarding)」
新入社員への研修は手厚くても、管理職への昇格者や育休復帰者へのケアは「もう社歴が長いから大丈夫だろう」と放置されがちです。これが大きな落とし穴です。
役割や環境が変わることは、本人にとっては「再入社」に近いストレスがかかります。
したがって、既存社員に対しても、改めて新しい環境に適応するための支援「再オンボーディング(Re-onboarding)」が必要です。
具体的には、新任管理職に対して「プレイヤー時代の成功体験を捨てるためのマインドセット研修」を実施したり、復職者に対して「休職中の会社情報のアップデート」や「慣らし運転期間」を設けたりといった施策です。
「できて当たり前」というプレッシャーを外し、意図的にサポート期間を設けることで、貴重な戦力がリアリティショックで潰れてしまうのを防ぎましょう。
従業員自身ができる「乗り越え方」とレジリエンス

ここまでは企業側ができる仕組み作りやケアについてお話ししてきましたが、リアリティショックを乗り越えるためには、従業員自身のマインドセットも重要な鍵となります。
人事や教育担当の皆さんが、新入社員研修や面談の場で彼らに伝えるべきメッセージとして、あるいは彼ら自身が困難に直面した際の「処方箋」として、以下の視点を持たせてあげることが大切です。
「完璧主義」を手放し、成長痛と捉え直す
リアリティショックを重症化させてしまう新人の多くは、真面目で責任感が強く、「早く成果を出さなければ」という完璧主義的な傾向を持っています。
しかし、新しい環境に入ってすぐに100点の成果を出せる人などいません。「できない自分」に直面して落ち込むのは、能力が低いからではなく、目指している基準が高すぎるからです。
彼らに必要なのは、認知の枠組み(フレーム)を変えることです。
「最初からできなくて当たり前」「今の苦しみは、新しい筋肉をつけるための『成長痛』だ」と捉え直すことができれば、心はずっと軽くなります。
失敗してもすぐに立ち直る「レジリエンス(精神的回復力)」を高めるには、加点法で自分を評価する習慣をつけるよう指導してください。「今日はこれができなかった」ではなく「昨日は知らなかった専門用語を一つ覚えた」と、小さな前進を認めることが自信の回復につながります。
他責にせず、自ら「情報のズレ」を修正しに行く姿勢
ギャップを感じたとき、最も避けるべきなのは「話が違う」「会社が悪い」と被害者意識を持って、殻に閉じこもってしまうことです。
一度他責の思考に陥ると、そこからの成長は止まってしまいます。
大切なのは、感じている違和感を「情報のズレ」として捉え、自ら修正しにいく主体性です。
例えば、配属先で聞いていた業務内容と違うと感じたら、ただ不満を溜め込むのではなく、「採用面接ではこう伺っていましたが、現状のチームではどのような役割が優先されるのでしょうか?」と上司に確認しに行くようなアクションです。
待っていてもギャップは埋まりません。自ら情報を取りに行き、認識をすり合わせるプロセスこそが、ビジネスパーソンとしての足腰を鍛えます。
リアリティショックを「会社への不満」で終わらせるか、「自律的なキャリア形成のきっかけ」に変えるか。その分かれ道は、この主体的な一歩踏み出しにかかっています。
リアリティショックに関するよくある質問(FAQ)
最後に、リアリティショックについて人事担当者の方からよく寄せられる質問にお答えします。社内での説明や、対策を検討する際の参考にしてください。
まとめ:ギャップを「成長の糧」に変える組織風土を作ろう
ここまで、リアリティショックの原因と対策について解説してきました。
入社後のギャップを「ゼロ」にすることは、現実的には不可能に近いでしょう。
しかし、そのギャップを「隠すべき不都合なもの」として扱うか、「乗り越えるべき成長の糧」として扱うかで、組織の未来は大きく変わります。
企業ができる最大の防御策は、以下の2点に集約されます。
- 採用段階で「ありのままの姿(RJP)」を戦略的に発信し、期待値を適正化すること
- 入社後に孤独を感じさせない「温かいフォロー体制」を整えること
特に、自社の課題や厳しさも含めて発信する「採用広報」は、勇気がいる施策かもしれません。しかし、その誠実さこそが、困難に直面しても逃げずに共に戦ってくれる強い人材を引き寄せます。
「期待外れだった」と去られる組織から、「厳しいけれど、想像以上に成長できる」と選ばれる組織へ。
貴社も、まずは「隠さない採用」から始めてみませんか。そこから、定着率の高い強い組織づくりが始まります。