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女性ドライバーの採用ガイド|メリット・環境整備・成功事例から助成金まで徹底解説

女性ドライバーの採用ガイド|メリット・環境整備・成功事例から助成金まで徹底解説
  • 公開日:2025/12/22
  • 更新日:2025/12/22
藤村俊太郎
この記事を書いた人
藤村俊太郎

愛知県知多市出身。愛知県立明和高校→慶應義塾大学卒業。高卒採用・大卒採用・中途採用のプロフェッショナル。年間4,000件以上の採用をマッチングさせる転職サービスの開発・運用を経験。自社採用部署における、新卒採用の立ち上げ・採用広報部署の立ち上げ・社員定着戦略/仕組みの構築を行う。採用戦略の構築とインハウス化が得意。

物流業界の2024年問題や高齢化により、男性中心の採用戦略は限界を迎えています。

人材不足の解消策として女性ドライバーの採用を始めてみたものの、「女性からの応募が集まらない」「採用しても職場になじめずにすぐに退職してしまう」といった悩みを抱える運送会社が多いのが現状です。

そこで本記事では、「どうすれば女性ドライバーを採用できるのか?」という運送会社の疑問を解消できるよう、ドライバー専門の採用代行サービスを提供する弊社ミズサキが、女性ドライバーを採用するために必要な情報を徹底的に解説します。

この記事でわかること
  • 女性ドライバーの採用を促進する4つのメリット
  • 多くの企業が女性ドライバーを採用できない理由
  • 女性を採用するための職場環境の整え方
  • 女性ドライバーの応募を増やす方法
  • 女性比比率3割越えの企業の共通点
  • コストを削減できる助成金・公的支援の紹介と活用方法

※本記事の内容は、国土交通省の統計や企業による調査資料に基づいた客観的なデータに基づいています。

[ 目次 ]

  1. 物流業界で女性ドライバー(トラガール)採用が急務となっている背景
    1. 業界の現状と女性比率の推移|なぜ今、注目されているのか
    2. 地域ごとに異なる女性採用への熱量|四国は積極的、東北は停滞?
  2. 女性ドライバー採用が企業にもたらす4つのメリット
    1. 企業イメージ向上と「ホワイトな職場」の証明
    2. 丁寧な運転・荷扱いによる「荷主」からの評価と営業力強化
    3. 社内コミュニケーションの活性化と職場環境の浄化作用
    4. 若手人材の確保|女性が働きやすい環境は、若者も集まる
  3. 【警告】女性ドライバーの採用に失敗する原因
    1. トイレ・更衣室問題は「約半数」が挙げる最大の障壁
    2. 現場の女性が切実に訴える「生理・体調管理」への理解
  4. 女性が安心して働ける「理想の職場環境」整備ロードマップ
    1. 【ハード面】トイレ・休憩スペース・車両(AT/安全装備)の改善
    2. 【ソフト面】柔軟な勤務体系(日勤・時短・週休3日)の導入
  5. 女性ドライバーの収入実態
    1. 車種別・年齢別の賃金構造
    2. 男女間賃金格差の現状と課題
  6. 女性からの応募を増やすための「採用広報」の勝ち筋
    1. ターゲットに刺さる求人コピーとビジュアル戦略
    2. SNS(Instagram/TikTok)で「トラガールあるある」を発信
  7. 成功事例に学ぶ|女性比率30%超えを実現した企業の共通点
    1. 小さな工夫が信頼を生む|コストをかけない設備改善の知恵
    2. 面接から現場見学まで現役女性社員が伴走する仕組み
    3. 女性比率の向上がもたらした「荷主からの指名」と業績アップ
  8. コストを大幅に軽減する「助成金・公的支援」の活用術
    1. 両立支援等助成金(育児・介護・女性活躍)
    2. 人材開発支援助成金
    3. 信頼を可視化する「働きやすい職場認証制度」とホワイト物流
  9. 女性ドライバー採用に関するよくある質問(FAQ)
    1. 女性を採用する最大のデメリットはありますか?コストに見合いますか?
    2. 「女性にはきつい」と言われる力仕事、どう対処すべき?
    3. 未経験・免許なしの女性を採用する際のリスクは?
    4. 小さな運送会社でも、女性ドライバーは定着しますか?
  10. まとめ:女性採用は「誰もが働きやすい職場」への第一歩

 

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物流業界で女性ドライバー(トラガール)採用が急務となっている背景

2024年、日本の物流業界はかつてない転換点を迎えました。「2024年問題」として広く知られる時間外労働の上限規制適用は、ドライバーの労働環境改善というメリットを生む反面、輸送能力の不足という深刻な問題を引き起こしています。

少子高齢化による生産年齢人口の減少が進む中、これまで男性労働力に過度に依存してきた物流業界のビジネスモデルは、もはや維持不可能です。

ここでは、女性ドライバーの採用に取り組む物流経営者や人事責任者が知っておくべき、「女性ドライバー」についての前提知識について解説します。

業界の現状と女性比率の推移|なぜ今、注目されているのか

ドライバー女性比率の推移

全日本トラック協会のデータによれば、運送業界における女性ドライバーの比率は、2025年時点で約4.6パーセントにとどまっています。全産業の女性就業率と比較しても極めて低い数字ですが、これは逆に見れば大きな伸び代があることを意味します。

女性の比率については就業者全体で20.7%と前年比で横ばい、輸送・機械運転従事者では4.6%と微増ではありますが、依然として低い状況にあります。

国土交通省は2014年からトラガール促進プロジェクトを開始し、国を挙げて環境整備を後押ししてきました。

警察庁交通局運転免許課の運転免許統計(令和6年版)によると、大型免許を保有する女性は147,909人いますが、実際に職業ドライバーとして働いているのは約4万人、免許保有者の約27パーセントにすぎません。残りの7割つまり10万人を超える有資格者が市場眠っている状態です。

大型免許を持っている女性の人口に対して、そのほんどがドライバーとして勤務せずにいる状態を表す図

このペーパードライバーを含む「有資格・未就業」の層は、物流業界にとって巨大なブルーオーシャンです。

彼女たちはすでに、運転技術や資格取得という高いハードルをクリアしています。問題は「能力」ではなく、「環境」にあります。

彼女たちが免許を持ちながらハンドルを握らない理由は、育児との両立困難、トイレや休憩所の不備、あるいは業界特有の荒っぽい人間関係への忌避感など、業界の構造的な要因にあります。

地域ごとに異なる女性採用への熱量|四国は積極的、東北は停滞?

地域別・積極的に女性ドライバーの採用を進めている割合グラフ

女性ドライバーの採用意欲には、地域によって明確な差が生じています。

クロスワークしごと白書2025によると、女性の採用に最も積極的なのは四国地方で、約33.3パーセントの企業が注力しています。一方で、東北地方などは採用が進んでいないという結果が出ています。

地域によっては競合他社がまだ動いていないため、早期に環境を整えることで地域内の一人勝ちを狙うことが可能です。

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藤村
都市部だけでなく、地方においても女性が活躍できる土壌を作ることは、地元の潜在的な労働力を掘り起こす絶好の機会となります。他社が着手する前に動くことが、採用市場での優位性を築く鍵となります。

女性ドライバー採用が企業にもたらす4つのメリット

女性ドライバーの採用は、単なる人手不足の穴埋めではありません。

組織そのものをアップデートし、採用市場や業界内での競争力を高める強力な経営戦略です。具体的にどのような変化が期待できるのか、4つの側面から解説します。

1. 企業イメージ向上と「ホワイトな職場」の証明

第一に、企業イメージが向上し、ホワイトな職場であることを証明できます。女性が活躍している事実は、安全管理や教育体制が整っている証拠だからです。

例えば、女性ドライバーの姿は求職中の若手男性にも「クリーンで働きやすい会社」という印象を与えます。性別を問わず、過酷な労働環境を避ける現代の求職者にとって、女性の在籍は安心材料となります。

結果として、母集団形成そのものが有利になり、採用力全体の底上げに繋がります。

2. 丁寧な運転・荷扱いによる「荷主」からの評価と営業力強化

第二に、丁寧な運転と荷扱いによって、荷主からの信頼を勝ち取ることができます。一般的に女性ドライバーは安全意識が高く、商品を傷つけない慎重な作業を得意とする傾向があるからです。

実際に、全日本トラック協会の「女性トラックドライバー採用成功事例集」によると、女性を配属した配送先から「対応がソフトで非常に安心できる」と高い評価を受け、契約が拡大した事例もあります。物腰の柔らかいコミュニケーションは、配送現場でのトラブルを未然に防ぐ効果も持っています。

こうした信頼の積み重ねは、同業他社との差別化を図る上での大きな武器になります。

3. 社内コミュニケーションの活性化と職場環境の浄化作用

第三に、社内コミュニケーションが活性化し、職場の雰囲気が改善されます。男性中心の職場に女性が加わることで、荒っぽい言葉遣いが減り、整理整頓が徹底されるようになるからです。

ある運送会社では、女性採用をきっかけに共有スペースの清掃頻度が上がり、職場全体の士気が向上しました。男性ドライバーたちの意識も変わり、トラックの洗車や身だしなみにも気を使うようになったといいます。

清潔で礼儀正しい職場環境は、既存の男性社員の離職防止にも大きく寄与します。

4. 若手人材の確保|女性が働きやすい環境は、若者も集まる

第四に、女性が働きやすい環境を整えることは、若手人材の確保に直結します。現代の若年層は、ワークライフバランスや職場の清潔感を重視する傾向が極めて強いからです。

女性が無理なく働ける柔軟なシフトや、整備された休憩室は、そのまま若手男性が求める条件と合致しています。女性採用をターゲットに据えて環境を改善することは、結果として全世代の採用難を解消する道しるべとなります。

多様な人材を受け入れる土壌がある会社こそが、これからの物流業界で生き残る条件です。

【警告】女性ドライバーの採用に失敗する原因

女性がトラックドライバーとして働く上で、「女性ならではの悩みや課題」を感じている人は約半数とされています。しかし、クロスワークしごと白書2025によると、女性特有の悩みや課題への認識は、男女によって大きく異なります。

  • 男性ドライバー:「悩みがある」48.2%/「悩みはない」51.8%
  • 女性ドライバー:「悩みがある」72.3%/「悩みはない」27.7%

女性ドライバーの採用に注力しているにもかかわらず、応募が来ない、あるいは定着しない場合、経営層と現場の間に認識のズレが生じている可能性があります。

このミスマッチを解消しない限り、どれだけ採用コストをかけても効果は限定的です。

女性ドライバーの採用・活躍支援のために企業が工夫していることと、現場が求めることにずれが生じていることを示す図解

トイレ・更衣室問題は「約半数」が挙げる最大の障壁

女性ドライバーが働く上で最も重視しているのは、職場の雰囲気よりもトイレや更衣室といった物理的な設備の充実です。

クロスワークしごと白書2025によると、女性ならではの悩みや課題を感じる理由として、半数以上がトイレ問題であると回答しています。

企業側の多くは、女性に配慮した雰囲気作りや声掛けを重視する傾向にあります。しかし、現場の女性が切実に求めているのは、男女別のトイレや鍵のかかる更衣室、清潔な休憩スペースです。

特に長距離輸送や深夜勤務においては、プライバシーが確保された設備の有無が、その会社で働き続けるかどうかの決定打となります。

まずは現場の声に耳を傾け、設備面の不備を直視することから始める必要があります。

現場の女性が切実に訴える「生理・体調管理」への理解

物理的な設備と並んで重要なのが、女性特有の身体的特性に対する職場全体の理解です。調査では、女性ドライバーの50.6パーセントが、生理などの体調管理の難しさを深刻な悩みとして挙げています。

男性中心の職場では、こうした体調不良を相談しにくい雰囲気が依然として根強く残っています。企業は単に制度として生理休暇を設けるだけでなく、急な体調不良時にもルートをカバーし合えるバックアップ体制を構築しなければなりません。

身体的なリスクを個人の責任にせず、組織としてサポートする姿勢を示すことが、女性社員の心理的安全性を高め、長期的な定着に繋がります。

女性が安心して働ける「理想の職場環境」整備ロードマップ

現場の認識齟齬を理解した次は、具体的な環境整備に着手しましょう。

設備投資に数千万円の予算を投じる必要はありません。まずは既存のリソースを工夫し、低コストで始められる施策から段階的に進めることが成功の秘訣です。

ここでは、女性が安心してハンドルを握れる職場への具体的なステップを解説します。

【ハード面】トイレ・休憩スペース・車両(AT/安全装備)の改善

ハード面の整備で最も重要なのは、プライバシーと清潔感の確保です。多額の建築費用をかけずとも、女性専用の空間は作り出せます。

例えば、営業所の近くに月極のアパートを一部屋借り、そこを女性専用の更衣室や休憩室として活用している企業があります。これならば、事務所内に大規模な改修工事を行う必要がありません。

また、既存の共用トイレのうち一つを女性専用に指定し、温水洗浄便座や鏡を設置するだけでも現場の評価は大きく変わります。

車両面では、オートマチック(AT)車への切り替えが有効です。マニュアル操作への不安を払拭できるだけでなく、バックモニターやドライブレコーダーなどの安全装備を充実させることで、運転への心理的ハードルを大幅に下げることが可能になります。

その他にも、駐車場や車両のセキュリティなど、改善点は多岐にわたります。以下の「改善アイデアリスト」を参考にしてください。

ハード・設備面の改善アイデアリスト

ハード・設備面の改善アイデア 詳細
女性専用トイレ・休憩室 男性の目を気にせずリラックスできるよう、オートロック完備の専用スペースを確保。トレーラーハウスやコンテナ型ユニットトイレも有効。
清潔で高機能なサニタリー設備 ・温水洗浄便座(ウォシュレット)付きの女性専用トイレ。
・広めのパウダールーム(化粧直しスペース)や大きな鏡。
・着替えがしやすいフィッティングボード付きの更衣室。など
シャワー室・仮眠室の整備 長距離ドライバー向けに、鍵付きの個室シャワーや、清潔なリネンが完備された女性専用仮眠エリア。
アメニティの充実 生理用品の備え付けや、ヘアドライヤー、全身鏡などの設置。
オートマチック車(AT車) クラッチ操作による疲労を軽減し、運転へのハードルを下げます。
UVカットガラス 女性ドライバーの多くは直射日光を避けるための設備に魅力を感じる。
車両のカスタマイズ(調整機能) 柄な方でも最適な運転姿勢が取れるよう、シートの昇降範囲が広い車両や、ハンドル位置の調整幅(チルト・テレスコピック機能)が広い車両を選定。
荷役作業の自動化・省力化機器
・パワーアシストスーツの導入。
・テールゲートリフター(荷台の昇降機)の全車装備。
・手積みを減らすためのパレット搬送への切り替えや、ローラーコンベアの設置。など
防犯設備の強化 ・駐車場、荷物積み降ろし場への高照度LED照明の設置(暗がりの解消)。
・各所に防犯カメラを設置し、事務所で常時モニタリング。
車両セキュリティ ・車内からの緊急通報ボタン(SOSボタン)の設置。
・ドライブレコーダー(車内・車外両方)の標準装備。
スマートキー・電子錠 事務所の出入り口や女性専用エリアをICカードや生体認証で管理。
企業内保育所の設置 事業所内、または近隣に提携託児所を確保。
授乳・搾乳スペース 復職した女性が安心して搾乳・保存(冷蔵庫完備)できる専用個室。
洗濯・乾燥設備の設置 制服を会社で洗濯・乾燥できる設備を整え、家事負担を軽減。
高性能ナビゲーション・バックモニター ・狭い道や複雑なルートを避け、安全な経路を指示する専用ナビ。
・360度アラウンドビューモニターによる駐車支援。
デジタルタコグラフ・運行管理システム 無理な長時間運転を防ぐためのアラート機能や、リアルタイムでの位置共有(安全確保のため)。

【ソフト面】柔軟な勤務体系(日勤・時短・週休3日)の導入

ソフト面の整備では、ライフスタイルに合わせた多様な働き方の選択肢を用意することが不可欠です。女性の多くは育児や家事との両立を重視しており、一律のフルタイム勤務では採用の機会を逃してしまうからです。

具体的には、午前中だけのスーパー配送ルートや、保育園の送迎時間に合わせた9時から16時までの時短シフトなどが効果的です。週休3日制を導入し、扶養控除内での勤務を希望するパートタイム層を積極的に受け入れるのも一つの手です。

最初はパートタイムとして入社し、子育てが落ち着いた段階で正社員へ登用するキャリアパスを明示しておけば、長期的な定着に繋がります。

仕事に私生活を合わせるのではなく、生活に合わせて仕事を調整できる柔軟性が、優秀な人材を引き寄せる鍵となります。

ソフト・設備以外の改善アイデアリスト

ソフト・設備以外の改善アイデア 詳細

短時間勤務制度(パート・アルバイト・準社員)

「保育園のお迎えに間に合う15時まで」「午前中のみ」といった、数時間単位の勤務設定。
固定時間制の導入 早朝、日中、夜間など、本人の希望に合わせた固定シフト制。生活リズムを安定させます。
週休3日制や週末休みの選択 土日休みや、週3〜4日勤務など、休日数を柔軟に選択できる制度。
時間単位の有給休暇 「子供の授業参観で2時間だけ抜けたい」といった要望に応えるための、1時間単位の休暇取得。
地場・近距離配送や固定ルートの優先配属 宿泊を伴う長距離を避け、毎日決まった時間に帰宅できるルートへの配置。
「ジョブ・リターン」制度 出産・育児で一度退職した社員が、数年後に元のポジションや条件で復職できる仕組み。
集荷・配送業務の切り分け 「運転のみ」に特化し、重い荷物の積み降ろしは別スタッフやフォークリフト担当が行う分業制。
「ママさん・パパさん専用コース」の作成 急な子供の病気などに柔軟に対応できるよう、予備のドライバーを配置したバックアップ体制のあるコース運用。
生理休暇・更年期休暇の取得促進 制度として存在するだけでなく、実際に「言い出しやすい・取りやすい」雰囲気作りや、名称の工夫。
産前産後の「軽作業への転換」 妊娠中、運転業務が不安な場合に、事務職や点呼補助、倉庫内軽作業へ一時的に配置換えする制度。
育児休業中の情報共有と面談 休業中も社内のニュースレターを送るなど、孤独感を解消し、スムーズな復職を支援するコミュニケーション。
子の看護休暇(有給化) 法定の看護休暇を「有給」扱いにすることで、家計への影響を気にせず休めるようにする。
メンター制度・ブラザーシスター制度 ベテランの女性ドライバーや相談員を教育係につけ、悩み(トイレ事情、人間関係、運転のコツなど)を相談しやすくする。
女性ドライバーコミュニティ(女子会・意見交換会)の運営 社内、あるいはグループ会社内での交流会を業務時間内に実施し、情報交換を促進。
ハラスメント防止教育の徹底 管理職や同僚の男性社員に対し、無意識の偏見やセクハラ防止に関する研修を実施。
未経験者向けの「養成制度」 免許取得費用の全額補助や、運転に自信が持てるまでの長期添乗指導。
「多能工化」による相互バックアップ 誰かが休んでもカバーし合えるよう、複数のルートや業務を経験させる教育体制。
透明性の高い評価基準 労働時間(長時間労働)ではなく、安全運転のスコアや顧客対応の質で評価する仕組み。

女性ドライバーの収入実態

世間では女性ドライバーは稼げないというイメージを持たれがちですが、実態は大きく異なります。

採用戦略において、最も強力な武器の一つが「賃金」です。

物流業界は全産業平均と比較して労働時間が長い傾向にありますが、一方で、学歴や職歴に関わらず、技術と資格によって高水準の収入を得られる数少ない職種でもあります。

全日本トラック協会が公表した「2023年度版 トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」に基づき、女性ドライバーのリアルな収入事情を分析します。

車種別・年齢別の賃金構造

以下の表は、女性ドライバーの車種ごとの月間給与総額(基本給+手当+賞与の1ヶ月換算額)を示したものです。

2023 年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態より作成
車種区分 平均年齢 勤続年数 きまって支給する給与(月額) 賞与含めた月間平均総額
大型運転者 46.8歳 7年8ヶ月 321,900円 354,900円
中型運転者 42.6歳 6年4ヶ月 272,200円 303,100円
普通運転者 45.7歳 9年1ヶ月 235,700円 266,200円
準中型運転者 41.4歳 6年5ヶ月 260,200円 289,000円
けん引(トレーラー) 45.8歳 - 361,200円 400,700円

年収400万円超のポテンシャル

大型トラック(大型運転者)に乗務する女性の賞与込み月間平均額は約35.5万円であり、年収換算で約426万円に達します。さらに、けん引(トレーラー)免許を持つ女性の場合、月額40万円を超え、年収500万円クラスに手が届きます。

これは、地方部における女性の事務職やサービス業(飲食・販売)の平均賃金と比較して、圧倒的に高い水準です。

年齢による賃金カーブ(特積事業の例)

特別積合せ貨物運送事業(特積)における女性大型ドライバーの賃金推移を見ると、50〜59歳層で361,500円という高い水準を維持しています 。一方で、20代(20〜29歳)でも328,400円となっており、若年層にとっても早期に高収入が得られる職種であることがわかります。

普通車からのステップアップ

普通車(ハイエースや2tショート等)の平均月額は約26.6万円ですが、中型・大型へと免許区分を上げることで、月額で5万円〜10万円近く給与ベースが上がることが示されています。この「明確なキャリアパスと昇給」は、求人訴求の大きなポイントになります。

男女間賃金格差の現状と課題

一方で、男性ドライバーとの比較では依然として格差が存在します。

例えば、男性の大型運転者の平均給与(賞与込)は約358,700円であり、女性(354,900円)とは数千円〜数万円の差が生じています。

この差の主因は、基本給の差というよりも、「変動給(歩合給・残業代)」の差にあると考えられます。

一般貨物事業において、女性ドライバーの給与に含まれる変動給の平均は約11.8万円です 。男性ドライバーは長距離や夜間配送、手積み手降ろしの多い高負荷な業務(=高単価・高歩合)に従事する比率が高いため、結果として総支給額が高くなる傾向にあります。

しかし、逆に見れば、女性ドライバーは「深夜・長距離・重労働」を避けた働き方であっても、大型であれば月収35万円前後を確保できているという事実は重要です。

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藤村
無理のない働き方で安定した高収入を得られるという点は、ワークライフバランスを重視する現代の求職者にとって強力なアピール材料となります。

女性からの応募を増やすための「採用広報」の勝ち筋

給与や設備といった条件を整えただけでは、ターゲットとなる女性には届きません。

物流業界に抱かれがちな、きつい、怖いという先入観を払拭し、自社の魅力を正しく伝える広報戦略が必要です。

ここでは、応募数を最大化させるための求人票の書き方と、SNSを活用した情報発信術を具体的に解説します。

ターゲットに刺さる求人コピーとビジュアル戦略

求人媒体で最初に目に入るビジュアルとキャッチコピーは、応募の成否を分ける最大の要因です。

力強さや過酷さを想起させる表現は避け、安心感と具体的な働きやすさを強調する必要があります。

例えば、求人票の写真は必ず現役の女性社員が笑顔で働いているものを使用してください。男性社員ばかりの集合写真は、女性に、孤立するかもしれないという不安を与えます。

また、キャッチコピーも、ガッツリ稼げる、といった抽象的な言葉ではなく、ターゲットが求める具体的なメリットを言語化しましょう。具体的な改善例を挙げます。

NG例 OK例
未経験歓迎!やる気次第で高収入も可能 女性専用の個室休憩室を完備。16時退社で保育園の送迎も無理なくこなせる配送ルートです

このように、入社後の生活が具体的にイメージできる情報を最優先で掲載してください。

設備やシフトの柔軟性を具体的に書くことで、ミスマッチを防ぎ、質の高い応募を集めることができます。

SNS(Instagram/TikTok)で「トラガールあるある」を発信

求人票だけでは伝えきれない職場のリアルな雰囲気は、SNSを通じて可視化するのが有効です。InstagramやTikTokなどの動画プラットフォームを活用し、実際に働くドライバーの日常を、自然体で、発信しましょう。

特におすすめなのが、女性ドライバーならではの苦労や喜びを伝える、あるあるネタ、の発信です。

運転席をお気に入りのクッションで飾っている様子、配送先のお客様からもらった嬉しい一言、などは、求職者の共感と安心感を生みます。

職場のランチタイムや、先輩後輩が談笑している短い動画を投稿するだけでも、社内の人間関係への不安を劇的に軽減できます。

現場のリアルな声を届けることで、業界の、怖い、というイメージは、私にもできるかも、という確信に変わります。

広告費をかけずとも、一日のタイムスケジュールをストーリーズで公開するといった地道な発信が、信頼できる企業としてのブランディングに直結します。

成功事例に学ぶ|女性活躍で業績と採用力を伸ばした先駆者たち

女性ドライバーの採用に成功している企業には、共通の勝ちパターンがあります。それは、旧態依然とした運送業のイメージを捨て、ドライバー一人ひとりの生活や特性に寄り添う経営姿勢です。

ここでは、異なるアプローチで圧倒的な成果を上げている3社の事例を紹介します。

【事例1】株式会社マイシン|人に仕事を合わせる発想で売上4億円増

厚生労働省の「女性の活躍推進・両立支援総合サイト」で紹介された愛知県豊橋市の株式会社マイシンは、女性ドライバー比率約25パーセントを達成し、5年間で売上を約4億円増加させました。

同社の転換点は、育児との両立を希望する未経験女性を採用したことでした。それまでの、仕事に人を合わせる、という発想を逆転させ、人に仕事を合わせる、方針を打ち出しました。

具体的には、8時から17時までで完結する配送ルートを確保するため、荷主に対して配送時間の指定を交渉、獲得する営業努力を全社で展開しました。

結果として、子育て中の女性が無理なく働ける環境が整い、街中で同社のトラックを見た女性から、私にもできるかもしれない、と応募が相次ぐ好循環を生んでいます。また、インフルエンザ予防接種を扶養家族分まで全額会社負担にするなど、家族を大切にする姿勢が定着率の向上に直結しています。

【事例2】有限会社菅原物流|ITと対話で心理的安全性を構築

全日本トラック協会の「女性トラックドライバー採用成功事例集」によると、山形県鶴岡市の有限会社菅原物流は、最新のデジタルツールと対話を通じて、性別を問わない、ドライバーファースト、を貫いています。

同社の特徴は、iPhoneやChatworkを駆使したリアルタイムのサポート体制です。特に経験の浅い女性ドライバーにとって、車両トラブルや納品時の不明点を即座に写真で共有し、指示を仰げる仕組みは大きな安心感に繋がっています。

ソフト面では、ホワイトボード、ミーティングを導入し、事故や悩みを可視化してポジティブに解決する文化を醸成しました。特筆すべきは、男性ドライバーの育児休暇取得実績が12例に上る点です。

男性が当たり前に育休を取れる風土があるからこそ、女性も気兼ねなく働ける。この心理的安全性の高さが、採用難の地域においても応募が絶えない理由となっています。

【事例3】アサヒロジスティクス|乗りたい!を創る女性専用車両

埼玉県さいたま市に本社を置くアサヒロジスティクス株式会社は、女性視点の、クローバープロジェクト、を通じて環境整備を推進しています。

同社の象徴的な取り組みが、女性専用トラック、クローバー、の導入です。これは単にデザインを変えただけではありません。実際に乗務する女性の声を聞き、身長に合わせてラッシングベルトの収納フックを通常より低い位置に設置したり、カーテンや小物入れを充実させたりと、機能面での改善を徹底しました。

体格や体力の違いを、気合、で乗り越えさせるのではなく、設備側を適合させる。この姿勢が、このトラックに乗りたい、という動機を生み、未経験女性の入社意欲を力強く後押ししています。

定期的な意見交換会を継続し、現場の声を即座に車両や設備へ反映させる仕組みが、女性の活躍を支える基盤となっています。

成功企業に共通する、現場の声を聞く覚悟

これら3社に共通しているのは、女性を、「特別な戦力」として扱うのではなく、現場の不便を解消した結果として女性が定着しているという事実です。

マイシンは勤務時間を、菅原物流はITによる安心を、アサヒロジスティクスは車両の機能性を。それぞれアプローチは異なりますが、いずれも現場の声を吸い上げ、経営側が率先して仕組みを変えています。

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藤村

女性が働きやすい職場は、結果として「若手もベテランも働きやすい職場」になります。事例が示す通り、環境整備への投資は、売上拡大と採用コスト削減という形で確実にリターンをもたらします。

コストを大幅に軽減する「助成金・公的支援」の活用術

女性ドライバーが活躍できる環境を整える際、多くの経営者が直面するのが資金面の課題です。

しかし、国や自治体は人手不足解消に向けた企業の取り組みをバックアップしています。これらを賢く活用すれば、設備投資や教育にかかる自己負担を大幅に抑えることが可能です。

ここでは、代表的な助成金と公的な認証制度について解説します。

両立支援等助成金(育児・介護・女性活躍)

両立支援等助成金は、女性ドライバーがライフイベント(出産・育児)を迎えても辞めずに済む仕組み、そして男性社員の育休取得を促進するための助成金です。

 両立支援等助成金の公式サイトはこちら

育児休業等支援コース

従業員が育児休業を取得し、その後職場復帰した際に支給されます。支給額は以下の通りです。

「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに基づいて面談等を実施することが必須ですが、代替要員確保が難しい運送業において、休業中のコスト補填として活用できます。

休業取得時 30万円
職場復帰時 30万円

出生時両立支援コース

男性従業員が育児休業を取得しやすい環境を整備した場合に支給されます。「男性も育休を取る会社」という事実は、女性にとっても「家庭を大切にする会社」という強力な安心材料になります。

第1種(男性の育休取得) 1人目20万円 / 2~3人目10万円
第2種(育休取得率の上昇) 60万円

業務代替支援

育休取得者の業務を、他の従業員がカバーした場合や、新規に代替要員を雇った場合の助成金です。人手不足の運送業にとって最も実用的なコースです。

手当支給等(社内の誰かがカバー)

育児休業期間中 最大140万円
(体制整備費20万円+業務代替手当等 最大120万円)
短時間勤務期間中 最大128万円
(体制整備費20万円+業務代替手当等 最大108万円)

新規雇用(派遣含む)

育休取得者の代わりに期間従業員等を雇った場合 期間に応じて、9万円〜最大67.5万円

不妊治療両立支援コース・女性健康支援

2024年度以降拡充された、女性特有の健康課題に対する支援です。「生理休暇」は法定休暇ですが、有給化や利用しやすい環境(時間単位取得など)を整備し、助成金を申請することで、原資を確保しつつ福利厚生を強化できます。

不妊治療との両立支援 30万円
女性の健康課題(生理・更年期)支援 30万円

人材開発支援助成金

普通免許しか持っていない女性を雇用し、会社の費用負担で中型・大型免許を取得させる「育成型採用」を行う場合に不可欠な助成金です。

 人材開発支援助成金の公式サイトはこちら

人材育成支援コース(特定訓練コース等)

会社が教習所の費用を負担し、業務として通わせる場合、経費と賃金の一部が助成されます。

経費助成率

訓練費用の30%〜45%
(条件により最大75%の場合あり)
賃金助成 訓練期間中の賃金(時給換算)の一部が助成されます。

教育訓練休暇付与コース

従業員が自発的に免許を取りに行く際に、有給の「教育訓練休暇」を与えた場合に支給されます。制度導入だけで定額が支給されるため、ハードルが低く、まず取り組むべきコースです。

制度導入助成

30万円

信頼を可視化する「働きやすい職場認証制度」とホワイト物流

資金的な補助だけでなく、企業の信頼性を対外的にアピールする認証制度の活用も重要です。

特に、国土交通省が推進する、自動車運送事業者の「働きやすい職場認証制度」は、求職者にとって強力な安心材料となります。この制度は、労働時間や休日、安全管理などの基準を満たした事業者を公的に認証するものです。

認証を得ることで、求人票にロゴマークを掲載でき、他社との差別化が可能になります。実際にこの認証を取得したことで、女性や若手からの応募数が倍増した事例も少なくありません。

 働きやすい職場認証制度の公式サイトはこちら

合わせて、「ホワイト物流推進運動」への賛同も検討しましょう。

荷主企業と協力して長時間労働を反映、是正する取り組みであり、業界全体で持続可能な物流を目指す姿勢を示すことができます。

 ホワイト物流推進運動の公式サイトはこちら

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藤村

こうした公的なお墨付きを得ることは、将来的な採用コストの削減と定着率の向上に直結します。

女性ドライバー採用に関するよくある質問(FAQ)

女性の採用を検討する際、経営層や現場責任者が抱きがちな懸念事項をまとめました。不安を解消し、スムーズな導入に繋げるための具体的な回答を提示します。

Q. 女性を採用する最大のデメリットはありますか?コストに見合いますか?

A. 中長期的な視点では投資を上回る利益が期待できます。

短期的には、専用トイレや更衣室の設置といった初期投資が必要です。また、深夜や長距離勤務を制限する場合、配車管理の柔軟性が求められる点はデメリットと感じるかもしれません。

しかし、女性が加わることで職場全体の安全意識が高まり、車両の軽微な事故が30パーセント減少したという企業データもあります。事故費用の削減や求人倍率の低下を考えれば、初期投資は十分に回収可能な経費といえます。

Q. 「女性にはきつい」と言われる力仕事、どう対処すべき?

A. 企業に求められるのは、個人の筋力に頼らない仕組み作りです。

現在、物流現場ではパレット輸送やパワーゲート付き車両の導入が急速に進んでいます。100キログラムを超える重量物であっても、機械や台車を正しく活用すれば腕力に関係なく作業が可能です。

例えば、手積み手降ろしが発生するルートには体力のある男性を配置し、カゴ台車を使用するルートに女性を割り当てるなど、適材適所の配車管理を行うことで解決できます。荷役作業の機械化は、女性だけでなく高齢ドライバーの負担軽減にも繋がるため、全社的なメリットとなります。

Q. 未経験・免許なしの女性を採用する際のリスクは?

A. 最大の懸念は教育コストですが、これは人材開発支援助成金を活用することで最小限に抑えられます。

運転経験がない女性は、自己流の癖がついていないため、社内の安全ルールを素直に吸収しやすいという強みを持っています。

最初から大型免許を求めるのではなく、まずは普通免許で運転できる2トン車からスタートさせ、段階的にステップアップさせる育成計画を立てましょう。研修期間を十分に設け、ベテラン社員が添乗指導を行うことで、事故のリスクは大幅に軽減できます。

Q. 小さな運送会社でも、女性ドライバーは定着しますか?

A. 中小企業こそ女性が定着しやすい環境を作れます。

大企業のような豪華な設備はなくとも、一人ひとりのライフスタイルに寄り添った柔軟なシフト対応が可能だからです。

例えば、子どもの急な発熱時にすぐ代走を手配したり、勤務時間を細かく調整したりといった小回りの利く対応は、中小企業ならではの武器になります。大規模な設備投資が難しい場合は、近隣の提携施設を休憩所として提供するなど、アイデア次第で満足度を高めることができます。

まとめ:女性採用は「誰もが働きやすい職場」への第一歩

物流業界が直面する2024年問題や深刻な人手不足を乗り越える鍵は、女性ドライバーの採用にあります。

本記事で解説した通り、女性を採用することは単なる人員の補充ではありません。組織の在り方をアップデートし、持続可能な経営基盤を築くための戦略のひとつです。

成功の第一歩は、経営層と現場の認識のズレを解消することにあります。

雰囲気作りといった曖昧な施策ではなく、男女別のトイレ設置や柔軟なシフトといった、現場が真に求める環境整備から着手してください。

女性が安心して働ける職場は、結果として若手人材や高齢ドライバーにとっても魅力的な、選ばれる会社になります。

まずは、現在自社で働く社員の声を聞くことから始めてみてはいかがでしょうか。

最初から完璧な設備を整える必要はありません。助成金などの公的支援も賢く活用し、スモールステップで改善を積み重ねていきましょう。

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