「ドライバーの給料、いくらに設定すれば採用できるのか?」
「求人を出しても応募が来ないのは、給与が低いからなのだろうか?」
運送会社の経営者や採用担当者にとって、適正な給与設定は常に頭を悩ませる課題です。
厚生労働省の平均年収データを見ても、現場の感覚とはズレがあり、参考にしづらいのが実情です。
そこで本記事では、運送業界の採用支援に特化してきたプロフェッショナルの視点から、統計データだけでは見えてこないドライバー給与のリアルな相場を車種別・地域別に解説します。
ドライバー採用のポイントはこちら
ドライバー給与の相場と採用市場の現状
運送会社の経営者や採用担当者が最も頭を悩ませるのは、求人を出しても応募が来ない、あるいは面接で給与条件を提示した途端に辞退されるという事態ではないでしょうか。
厚生労働省が発表する賃金構造基本統計調査などの公的データは、あくまで既存社員を含めた平均値に過ぎません。
これから採用競争に勝つために必要なのは、今まさに求職者が求人サイトで比較検討している募集賃金の相場、つまり採用成功ラインです。
統計上の平均年収と、実際に求職者が振り向く金額にはギャップがあります。ここでは、建前の数字ではなく、人材を獲得するために提示すべきリアルな給与水準について解説します。
トラックドライバーの車種別平均年収データ
トラックドライバーの給与は、運転する車両のサイズや専門性によって大きく異なります。求職者は自身の保有免許と経験に合わせてシビアに求人を選別しています。
以下は、現在の採用市場における車種別の年収レンジと、採用を成功させるための提示額の目安です。
車種別の年収相場と採用提示額の目安
※上記データは、以下の資料および2026年時点の主要求人サイトの公開情報を基に独自に算出した目安です。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」
公益社団法人 全日本トラック協会「トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」
| 車種 |
年収相場 |
未経験採用の初任給目安 |
経験者採用の提示額目安 |
| トレーラー・けん引 |
500万円~750万円程度 |
月給35万円~ |
月給40万円~50万円以上 |
| 大型トラック(10t以上) |
450万円~650万円程度 |
月給32万円~ |
月給38万円~ |
| 中型トラック(4t) |
400万円~550万円程度 |
月給28万円~ |
月給32万円~ |
| 小型トラック(2t・バン) |
350万円~450万円程度 |
月給25万円~ |
月給28万円~ |
未経験者を採用する場合、まずは生活が保障される最低ラインを提示し、資格取得支援制度とセットで将来の昇給モデルを見せることが重要です。
一方で即戦力の経験者は、現職よりも高い、あるいは同等の水準でなければ動きません。
企業規模別に見る給与の違い
ドライバーの年収は、企業の規模によって明確な格差が存在します。
賃金構造基本統計調査によると、従業員1,000人以上の大手企業と、小規模事業者では、平均年収で100万円近い差が開くことも珍しくありません。
大手企業は元請け案件が多く運賃単価が高いため、高い基本給や賞与を支払う体力が十分にあります。中小規模の運送会社が、資本力のある大手と同じ土俵で基本給の額面勝負を挑むのは得策ではありません。
中小企業が採用で勝つためには、画一的な基本給競争を避け、実質的な手取り額や働きやすさで勝負する必要があります。
例えば、大手では管理が厳しく敬遠されがちな自由度をアピールしたり、特定の配送手当を手厚くしたりすることで、総額の魅力を高める戦略が有効です。
都市部と地方における地域別給与の違い
ドライバーの給与相場は地域によっても大きく変動します。
東京都や大阪府、愛知県などの大都市圏は物価も高く、ドライバーの平均年収は高水準で推移しています。例えば東京都のドライバー平均月給は30万円台後半から40万円台がボリュームゾーンですが、地方では30万円前後の地域も多くあります。
ここで重要な視点は、地方の運送会社がベンチマークすべきは、東京の運送会社ではないということです。

地方採用における真の競合は、地元の工場や建設業です。
地方において、地元の製造業が月給25万円で土日休みという条件を出している場合、運送会社が月給26万円で長時間労働という条件を出しても人は集まりません。
タクシー・バス運転手との給与比較と人材流出防止
ドライバー人材の争奪戦は、トラック業界内部だけでなく、タクシーやバス業界との間でも起きています。
タクシー運転手は、歩合率が非常に高いのが特徴です。
売り上げの50パーセントから60パーセントが給与に反映される給与体系が多く、トップドライバーになれば年収800万円以上稼ぐことも可能です。稼ぎたい意欲が強い層は、トラックからタクシーへ流れる傾向にあります。
一方で、バス運転手は安定性が魅力です。年収は400万円から500万円程度と堅実で、社会的信用も高いため、安定志向の層に人気があります。
トラックドライバーの強みは、タクシーのような接客ストレスがなく、バスほどダイヤに縛られない点にあります。また、荷物を運ぶという業務の性質上、景気に左右されにくい安定した仕事量もアピールポイントです。
人材流出を防ぐためには、接客が苦手な層には一人で黙々と働ける気楽さを、稼ぎたい層には長距離運行などの高単価案件を用意するなど、トラックならではのメリットを給与とセットで提示することが求められます。
応募が集まる給与体系の仕組みと設計ポイント
他社と同じ年収額を提示しているのに、なぜか自社には応募が来ないというケースがあります。その原因の多くは、給与の総額ではなく内訳の設計にあります。
求職者は、提示された金額の中身を厳しくチェックしています。
基本給が極端に低く歩合頼みの給与体系は、生活への不安から敬遠される傾向にあります。逆に固定給が高すぎると、頑張っても給料が上がらないと感じ、意欲的なドライバーを遠ざけてしまう可能性もあります。
採用ターゲットに合わせて、求職者が魅力に感じる最適な給与バランスを設計することが、採用成功への近道です。
固定給と歩合給のバランスで安心感と意欲を両立する
どのような人材を採用したいかによって、固定給と歩合給の最適な比率は変わります。
安定して長く働いてくれる人材や未経験者をターゲットにするなら、固定給の比率を高めるべきです。
例えば、月給30万円のうち基本給と固定手当で25万円を保障し、歩合給を5万円程度に抑えます。これにより、荷物量が少ない月でも生活水準が変わらないという安心感を与えられます。住宅ローンを抱える世代や、家族を養う層に特に響く設計です。
一方、経験豊富な即戦力や、とにかく稼ぎたい野心的な層を狙うなら、歩合給の比重を高くします。

基本給は最低賃金ラインに設定し、運んだ分だけ青天井で稼げる仕組みにします。この場合、閑散期のリスクはありますが、実力次第で月給50万円以上を目指せるため、腕に自信があるドライバーを引きつけられます。
自社の配送形態や欲しい人材像を明確にし、安心と意欲のどちらを優先すべきか検討してください。
固定残業代の適切な運用で未払いリスクを防ぐ
みなし残業とも呼ばれる固定残業代制度は、正しく運用すれば強力な採用武器になります。
この制度のメリットは、残業をしてもしなくても一定額が支払われるため、求人票に記載する月給の下限額を高く見せられる点です。
例えば、基本給20万円に加え、固定残業代として45時間分7万円を支給すれば、求人票には月給27万円以上と記載できます。見た目の給与額が上がることで、求人のクリック率は向上します。
しかし、リスク管理も不可欠です。
固定残業代を導入していても、設定した時間を超えて働いた分については、追加で割増賃金を支払う法的義務があります。これを怠ると未払い残業代請求という重大な労務トラブルに発展します。
求人票や雇用契約書には、固定残業代に含まれる時間数と金額を明記し、超過分は別途支給する旨をはっきりと記載してください。透明性の高い運用が、求職者からの信頼獲得に繋がります。
賞与や各種手当で競合他社と差別化する方法
基本給の大幅なベースアップが難しい場合でも、手当や賞与の工夫次第で他社との差別化は可能です。
特に効果的なのが、ドライバーの家族に向けた福利厚生です。
家族手当や住宅手当、子供の入学祝い金などは、ドライバー本人の安心感だけでなく、配偶者からの支持を得るために非常に有効です。転職活動において、配偶者が福利厚生の薄さを理由に反対するケースは少なくありません。
また、無事故手当や愛車手当は、給与アップと業務品質の向上を同時に実現します。
無事故を継続すれば毎月2万円支給といった明確なインセンティブがあれば、ドライバーは安全運転を心がけるようになり、結果として事故コストや車両修繕費の削減に繋がります。
2024年問題以降の労働時間短縮と給与維持の考え方
運送経営者にとっての懸念材料は、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制、いわゆる2024年問題です。
年間960時間という上限規制により、これまで残業代で稼いでいたドライバーの収入が減少し、離職が相次ぐ負のスパイラルが危惧されています。
しかし、単に労働時間を削って給与を下げるだけでは、会社は立ち行かなくなります。法改正を遵守しながら、いかにドライバーの手取り額を維持し、定着率を高めるかが経営の手腕です。
これからの時代は、長時間労働に依存した経営から、生産性を高めて利益を還元する経営への転換が不可欠です。
労働時間が減っても歩合給を維持する生産性向上策
労働時間が制限される中で給与水準を保つには、給与の源泉を時間の対価から成果の対価へとシフトさせる必要があります。
つまり、短い時間で効率よく運び、その利益を歩合給としてドライバーに還元する仕組みづくりです。
具体的には、荷主との交渉による待機時間の削減に取り組みましょう。
現状、積み下ろしのために数時間の待機が発生している場合、それはドライバーにとって無駄な拘束時間となり、利益を生まない時間です。この時間を削減できれば、その分を別の配送に充てたり、休息に回したりすることが可能になります。
また、高速道路の積極的な利用も有効な手段です。
下道で8時間かかるルートを高速道路を使って5時間で走れば、ドライバーの拘束時間は減り、車両の回転率は上がります。高速代というコストはかかりますが、それ以上に人件費の圧縮と売上の増加が見込める場合は、積極的に投資すべきです。
浮いた時間を活用して配送件数を増やし、その売上を歩合給として還元することで、労働時間は減っても給与は維持、あるいは向上させることができます。
割増賃金の計算ミスによる労務トラブルを回避する
給与制度を見直す際は、割増賃金の計算ルールを正確に把握し、コンプライアンスを徹底することが重要です。
運送業の給与計算は複雑で、基本給、歩合給、各種手当が入り組んでいるため、意図せぬ計算ミスが起きやすい領域です。
特に注意が必要なのは、深夜労働や休日労働、そして月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金です。
2023年4月の法改正より、中小企業においても月60時間を超える残業に対する割増賃金率が50パーセントに引き上げられました。これに対応せず、従来の25パーセントのままで計算していると、未払い賃金として後から請求されるリスクがあります。
一度でも給与の未払いトラブルが発生すると、ドライバーの間で不信感が広がり、大量離職に繋がりかねません。
求人票で給与を魅力的に見せる書き方のコツ
給与の原資をすぐに増やすことが難しくても、求人票の書き方を工夫するだけで応募数を増やすことは可能です。
求職者は、提示された金額そのものだけでなく、その金額の信憑性や、その給与で得られる生活の質をシビアに見ています。特に昨今はブラック企業への警戒心が強いため、情報の透明性が何よりも重視されます。
ここでは、同じ給与条件であっても、求職者の不安を解消し、応募したくなる表現のテクニックを解説します。
月給だけでなく具体的なモデル年収を記載する
求人票には、月給の範囲だけでなく、入社後のキャリアに応じた具体的なモデル年収を必ず記載してください。
月給25万円から35万円という表記だけでは、求職者は自分が最低額の25万円で固定されるのではないかと不安になります。また、将来どの程度昇給するのかイメージが湧きません。
効果的なのは、入社1年目で年収400万円、入社3年目の班長クラスで年収550万円というように、経験年数や役職に応じた年収実例を明記することです。
具体的な数字があることで、求職者は自身の数年後の姿を想像でき、長く働ける会社だと判断しやすくなります。未来の収入が可視化されていることは、定着率の高い企業であるという安心材料にもなります。
手取り額のイメージや休日の過ごし方を伝える
求職者が本当に知りたいのは、額面の年収ではなく、実際の生活水準です。給与条件とセットで、その収入で実現できる生活のイメージや、休日の過ごし方を具体的に伝えてください。
例えば、月給35万円という数字に加え、手取りでこれくらい残るのでマイホームを購入したドライバーが多数いる、あるいは完全週休2日で子供の学校行事に欠かさず参加できる、といった具体的な利点を訴求します。
単に高収入を謳うよりも、家族との時間を大切にできる、趣味のバイクにお金を使えるといった生活実感を伝える方が、特に30代から40代の家庭を持つドライバーには強く響きます。
未経験者でも昇給できるキャリアパスを明示する
未経験者や若手を採用する場合、現状のスタート給与よりも、将来の伸びしろを見せることが重要です。今は普通免許しかなくても、会社の支援で上位免許を取得すれば、具体的にいくら給与が上がるのかを明示してください。
入社時は月給25万円でも、資格取得支援制度を利用して大型免許を取得すれば月給35万円にアップするという明確なレールがあれば、向上心のある人材が集まります。
会社が個人のスキルアップに投資し、成長をバックアップしてくれる姿勢を示すことは、求職者の不安を取り除き、応募へのハードルを大きく下げる効果があります。未経験者を安く使うのではなく、育てて報いる会社であることを伝えてください。
ドライバーの給与や採用に関するよくある質問
ドライバーの採用現場では、給与額以外にも将来性や雇用形態に関する質問が多く寄せられます。ここでは、採用担当者が押さえておくべき、よくある疑問について解説します。
まとめ
ドライバー採用を成功させるための鍵は、競合に負けない適正な給与設定と、その魅力を正しく伝える求人票の表現力にあります。
単に平均年収のデータを眺めるだけでなく、地域や車種ごとのリアルな採用相場を把握し、自社が狙うターゲット層に響く給与体系を設計することが不可欠です。また、2024年問題を見据えた生産性の向上や、未払い残業代リスクを回避するコンプライアンス遵守の姿勢も、企業の存続と採用力を左右する重要な要素となります。
しかし、既存の賃金規定を見直し、法的に問題のない形で新しい給与体系を構築することは、経営者や人事担当者にとって大きな負担です。さらに、その強みを求職者に刺さる言葉で求人票に落とし込むには、採用マーケティングの専門知識も求められます。
もし、自社だけで最適な賃金設計や効果的な求人作成を行うことが難しいと感じる場合は、運送業界に精通した採用のプロフェッショナルに相談することをお勧めします。市場調査に基づいた勝てる給与プランの策定から、反応率の高い求人票の作成まで、貴社の採用課題を根本から解決するサポートが可能です。
人材不足が深刻化する今こそ、給与戦略を見直し、選ばれる運送会社への変革を進めてみてはいかがでしょうか。