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中小企業の採用ブランディング戦略|知名度ゼロから始める手順と成功・失敗事例

中小企業の採用ブランディング戦略|知名度ゼロから始める手順と成功・失敗事例
  • 公開日:2025/12/03
  • 更新日:2025/12/04
藤村俊太郎
この記事を書いた人
藤村俊太郎

愛知県知多市出身。愛知県立明和高校→慶應義塾大学卒業。高卒採用・大卒採用・中途採用のプロフェッショナル。年間4,000件以上の採用をマッチングさせる転職サービスの開発・運用を経験。自社採用部署における、新卒採用の立ち上げ・採用広報部署の立ち上げ・社員定着戦略/仕組みの構築を行う。採用戦略の構築とインハウス化が得意。

「求人広告を出しても、応募がまったく来ない」
「やっと内定を出しても、大手企業に流れて辞退されてしまう」
「給与や福利厚生などの条件面で比べられると、どうしても勝てない」

日々、採用活動に奔走する中で、このような悩みを抱えていませんか?

知名度も予算も潤沢にある大企業とは違い、中小企業にとって人材獲得はまさに死活問題です。少子高齢化が進み、かつてない「超売り手市場」となった今、これまで通りのやり方だけでは、優秀な人材はおろか、若手の確保さえ困難になっています。

「ウチのような無名の中小企業には、人が集まらなくて当然だ……」

もしそう諦めかけているのなら、少しだけ待ってください。

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藤村
中小企業だからこそ、採用ブランディングは最強の武器になります。

莫大な広告費をかけなくても、知名度がゼロでも、「あなたの会社で働きたい」と熱望する人材を集めることは可能です。

本記事では、数多くの中小企業の採用支援を行ってきた知見をもとに、成功企業の具体的な事例から、今日から使える実践ステップ、さらには補助金の活用といった現実的な資金策まで、中小企業が勝つための全ノウハウを公開します。

この記事を読み終える頃には、自社の「隠れた魅力」に気づき、明日から取り組むべき具体的なアクションが明確になっているはずです。ぜひ最後までお付き合いください。

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[ 目次 ]

  1. 中小企業における採用ブランディングとは?「大手の真似」では勝てない理由
    1. なぜ今、中小企業に採用ブランディングが必要なのか
    2. 「採用マーケティング」と「採用ブランディング」の決定的な違い
  2. 採用ブランディング導入効果・中小企業が得られる3つのメリット
    1. スマッチ防止による定着率の向上
    2. 採用コスト(広告費・紹介料)の大幅削減
    3. 既存社員のエンゲージメント向上(インナーブランディング)
  3. 【実例解説】中小企業の採用ブランディング成功事例
    1. 事例1:株式会社ワンコイングリッシュ(ダイバーシティ&ストーリーテリング)
    2. 事例2:株式会社八百鮮(業界イメージの刷新)
    3. 事例3:ユニファ株式会社(パーパスへの共感)
  4. 予算をかけずに始める!採用ブランディングの実践4ステップ
    1. Step1. 自社分析とEVP(従業員への価値提案)の言語化
    2. Step2. ペルソナ(求める人物像)の徹底的な具体化
    3. Step3. ストーリーテリングとコンテンツ制作
    4. Step4. タッチポイントの選定とKPI設定
  5. 失敗から学ぶ!採用ブランディングを始める中小企業が陥りがちな「3つの落とし穴」
    1. 大企業の真似をして背伸びした発信をしてしまう
    2. 現場社員を巻き込めていない(人事の独走)
    3. 更新が止まり、継続性がない
  6. 予算が心配な方へ:活用すべきリソースと支援制度
    1. 活用できる補助金・助成金リスト
    2. 無料・低コストで使えるツールとSNS
    3. 1記事3万円で利用できる採用記事制作代行サービス
  7. 中小企業の採用ブランディングに関するよくある質問(FAQ)
    1. 効果が出るまでどのくらいの期間が必要ですか?
    2. 専任の広報・人事担当がいなくてもできますか?
    3. BtoB企業で知名度が全くありませんが大丈夫ですか?
  8. まとめ:中小企業こそ「独自性」で選ばれる企業になろう

中小企業における採用ブランディングとは?「大手の真似」では勝てない理由

まず、中小企業の採用ブランディングとは、「ロゴをおしゃれにすること」でも「見栄えの良い採用サイトを作ること」でもありません。

本質的な採用ブランディングとは、「求職者があなたの会社を選ぶ『必然性』を作ること」です。

もっと平たく言えば、「給与や知名度は大手の方が良いけれど、それでも私はこの会社で働きたい」と思わせるだけの「理由」を明確にし、正しく伝える活動こそが、中小企業の採用ブランディングなのです。

条件や知名度といった大企業と同じ土俵で戦うのではなく、独自の土俵を作り出すこと。これが、採用ブランディングの第一歩です。

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オシャレなサイト作りや、こだわりのあるロゴ制作は、あくまで手段の一つに過ぎません。

なぜ今、中小企業に採用ブランディングが必要なのか

なぜ今、中小企業にこそ採用ブランディングが急務なのでしょうか?

答えはシンプルです。「条件スペック」の勝負では、資金力と知名度のある大手に絶対に勝てないからです。

リクルートワークス研究所が実施した「大卒求人倍率調査(2025年卒)」によれば、例年の傾向として、知名度のある大企業は、求人数よりも希望者が多い「買い手市場」となっていますが、中小では求人数が希望者よりも多い「超売り手市場」になっているとされています。

300人未満企業、300~999人企業で大卒求人倍率が上昇。5000人以上企業では低下

引用元:大卒求人倍率調査(2025年卒)|リクルートワークス研究所

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つまり、中小企業と大手企業が、二極化しているということです。

そのような状況の中で、あなたの会社が「給与」「休日数」「福利厚生」といった数値化できる条件だけで勝負しようとすればどうなるでしょうか?

当然、より高い条件を提示でき、知名度でも勝る大手企業や、メガベンチャーに人材は流れていきます。これは努力不足ではなく、構造上の問題です。

だからこそ、中小企業は戦う土俵を変える必要があります。

  • 「社長との距離が近く、経営視点が学べる」
  • 「完成された組織ではなく、組織作りから携われる」
  • 「地域社会にダイレクトに貢献できる手触り感がある」

これらは、大企業にはない中小企業ならではの価値です。

「条件」ではなく「共感」で選ばれる状態を作ること。

これこそが、人材獲得競争を生き抜くための唯一の生存戦略なのです。

「採用マーケティング」と「採用ブランディング」の決定的な違い

採用活動において、「採用マーケティング」と「採用ブランディング」はよく混同されますが、この2つは役割が明確に異なります。

比較項目 採用マーケティング(戦術) 採用ブランディング(戦略)

目的

必要な人材にリーチし、短期的に応募を獲得すること。

企業の魅力を定義し、中長期的に「働きたい場所」としてのブランドエクイティを構築すること。

手法

求人広告の出稿、SEO対策、スカウトメールの送信、SNS広告。

企業文化の発信、採用サイトのストーリー構築、社員インタビュー、理念の共有。

考え方

「いかにして見つけてもらうか?」

「なぜ自社で働くのか?」

この2つの順序を間違えてはいけません。

ブランディング(=魅力的な土壌)がない状態で、マーケティング(=広告による集客)を行っても、コストが無駄になるだけです。

採用ブランディングという土台があって初めて、求人広告などのマーケティング施策が活きてくるのです。

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「求人広告を出しても反応がない」
「応募が来てもすぐに辞退される」

こうした現象は、マーケティング不足ではなく、ブランディング不足、つまり選ばれる理由が伝わっていないことが原因であるケースが大半です。

採用ブランディング導入効果・中小企業が得られる3つのメリット

「ブランディングが大切なのは分かった。でも、それで本当に売上や利益につながるの?」

経営者や上層部からは、このようなシビアな意見が出るかもしれません。しかし、採用ブランディングは、単なるイメージアップのための活動ではなく、明確なリターン・投資対効果が見込める「実利」のある投資です。

ここでは、中小企業が採用ブランディングに取り組むことで得られる、経営に直結する3つのメリットを解説します。

1. ミスマッチ防止による定着率の向上

採用における最大の失敗は「応募が来ないこと」ではありません。

「多大なコストと時間をかけて採用した人材が、入社後すぐに辞めてしまうこと」です。

厚生労働省が2024年に発表した新規学卒就職者の離職状況(2021年3月卒業者)によると、大卒就職者の3年以内離職率は34.9%に達しています。これは前年比で2.6ポイントの上昇であり、3年連続で増加しています。

1人の採用にかかるコスト(採用単価)に加え、入社後の研修コスト、そして現場の疲弊感を合わせると、早期離職による損失は計り知れません。

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さらに、「事業規模が小さくなるほど離職率が高い」という現実も無視できません。

次の表は、新卒入社3年以内の離職率を事業所規模ごとに算出したデータです。

出典元:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)から作成
事業所規模(従業員数) 3年以内離職率
5人未満 59.1%
5〜29人 52.7%
30〜99人 42.4%
100〜499人 35.2%
500〜999人 32.9%
1,000人以上 28.2%

採用ブランディングは、この問題を改善する手段として注目されています。

その理由は、採用ブランディングが「良いこと」ばかりを並べるのではなく、良い点も、大変な点も含めて「自社のありのままの価値観」を正しく伝える活動だからです。

例えば、「うちは残業も少なく楽な職場です」と曖昧にアピールして人を集めるのではなく、「成長痛を伴うが、圧倒的なスピードでスキルが身につく職場です」と正直に発信したとします。

すると、「安定して働きたい人」は応募してこなくなりますが、逆に「挑戦したい人」にとっては魅力に映ります。

入社前から価値観がマッチしているため、「こんなはずじゃなかった」という現実とのギャップが起きず、結果として定着率が大幅に向上するのです。

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この事前のフィルタリング機能こそが採用ブランディングを行う1つ目のメリットです。

2. 採用コスト(広告費・紹介料)の大幅削減

採用ブランディングが成功すると、外部への依存度を下げることができます。

中小企業の採用で大きな負担となるのが、人材紹介会社・エージェントへの紹介手数料です。一般的に理論年収の30〜35%が相場と言われており、年収400万円の人材を1人採用するだけで、約140万円ものコストがかかります。

事実、マイナビの「中途採用状況調査2024年度版」によると、2024年の中途採用コスト平均は650.6万円となっており、採用費用の総額は増加傾向にあります。

中途採用費用は平均650.6万円で、前年から20.9万円増加となった。

引用元:中途採用状況調査2024年度版(マイナビ)

また、求人媒体への掲載費も、掲載するたびに費用が発生する「掛け捨て型」のコストです。

一方、採用ブランディングによって自社の採用サイトやSNSの発信力が強まれば、求職者があなたの会社を「指名検索」して直接応募してくれるようになります。

これを「オウンドメディアリクルーティング」と呼びます。

自社経由での採用なら、紹介手数料は0円です。

さらに、作成したブログ記事やインタビュー動画は、一度作れば24時間365日働き続けてくれる資産になります。

毎回お金を払い続ける「消費」から、資産として積み上がる「投資」へ。

お金のない中小企業こそ、このモデルへの転換が必要です。

3. 既存社員のエンゲージメント向上(インナーブランディング)

3つ目のメリットは、意外に見落とされがちですが非常に強力な効果です。それは「今いる社員のモチベーションが上がる」ことです。

中小企業の現場では、日々の業務に追われ、「自分たちの会社が何を目指しているのか」「どんな価値を社会に提供しているのか」を見失いがちです。

しかし、採用ブランディングを通じて、

「ウチの会社はこんな想いで創業されたんだ」
「同僚の〇〇さんは、こんな熱量で仕事をしていたんだ」

というストーリーが可視化されることで、既存社員が自社の魅力を再発見します。

これを「インナーブランディング」と呼びます。

「自分の会社って、意外と良い会社だな」

社員がそう誇りを持てるようになれば、離職率が下がるだけでなく、社員が知人や友人を自信を持って紹介してくれる「リファラル採用」にもつながります。

【実例解説】中小企業の採用ブランディング成功事例

「理論はわかったけれど、実際にうまくいっている中小企業なんてあるの?」
「どうせ、元々おしゃれなIT企業の話でしょう?」

そう思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

飲食、小売、サービス業など、一見採用が難しいとされる業界でも、独自の切り口で採用に成功している中小企業は実在します。

ここでは、その具体的な勝因を分析した3つの事例を紹介します。彼らが「何を武器にしたのか」を知ることは、自社の勝ち筋を見つける最大のヒントになるはずです。

事例1:株式会社ワンコイングリッシュ(ダイバーシティ&ストーリーテリング)

株式会社ワンコイングリッシュ

英会話スクールを運営する「株式会社ワンコイングリッシュ」は、採用サイトのスタッフインタビューで、単に業務内容を紹介するのではなく、個人の「人生の物語」に深く切り込んでいます。

例えば、COOのインタビューでは、生い立ち、日本に来た経緯、「生まれ持った境遇に立ち向かう人を応援したい」という個人的なミッション、そして会社が描く未来の世界観について詳細に語られています。

POINT

「日本対グローバルではなく、日本もグローバルの一部」という視座を提示し、国籍や背景を超えた多様な人材が活躍できる場であることアピール。

企業のビジョンと個人のビジョンがリンクするような、深い共鳴を生み出し、カルチャーマッチの高い人材を引き寄せています。

>> 株式会社ワンコインイングリッシュの採用サイトはこちら

事例2:株式会社八百鮮(業界イメージの刷新)

株式会社八百鮮

次は、「3K(きつい・汚い・危険)」というイメージを持たれがちな業界での成功事例です。

大阪・名古屋で青果店を展開する「株式会社八百鮮」は、「八百屋を、日本一かっこよく。」というビジョンを掲げ、業界のイメージを根底から覆しました。

採用サイトや動画では、市場での威勢のいい競りの様子や、社員が泥臭くも生き生きと働く姿を、スタイリッシュなクリエイティブで表現。「八百屋=古臭い」ではなく、「八百屋=かっこいい、商売の原点」という新たな価値観を提示したのです。

POINT

自社の業界や仕事を「不人気職種」と決めつけず、逆張りで職種の魅力を打ち出した点が最大のポイントです。

ネガティブに見られがちな要素(肉体労働、泥臭さ)も、見せ方を変えれば「情熱」「ライブ感」という強力な武器になります。

従来の八百屋のイメージに魅力を感じなかった層ではなく、「何か熱いことをしたい」「退屈な日常を変えたい」と願う若年層の共感を呼び、採用に成功。知名度ゼロの状態から、強烈なファンベースを築いています。

>> 株式会社八百鮮の採用サイトはこちら

事例3:ユニファ株式会社(パーパスへの共感)

ユニファ株式会社

保育テック事業を展開する「ユニファ株式会社」は、「パーパス(企業の存在意義)」への共感を軸に採用を成功させました。

スタートアップである同社は、大企業のような安定性は提示できません。しかし、「テクノロジーの力で、保育現場の社会課題を解決する」という明確なビジョンを掲げ、オウンドメディアを通じて社員の「想い」を発信し続けました。

POINT

スキルマッチ(何ができるか)ではなく、ビジョンマッチ(何を成し遂げたいか)で採用を行った点です。

特に優秀な層ほど、単なる報酬以上に「仕事の社会的意義」を求めています。

「この会社なら社会を変えられるかもしれない」という期待感(ブランド)を醸成することで、規模に関係なく、志の高い優秀な人材を引き寄せることに成功しました。

>> ユニファ株式会社の採用サイトはこちら

予算をかけずに始める!採用ブランディングの実践4ステップ

「事例はわかったけど、実際に何から始めればいいの?」
「コンサルタントに頼むような予算はないんだけど……」

ご安心ください。採用ブランディングは、必ずしも高額な予算を必要としません。むしろ、社内で汗をかいて作り上げるからこそ、嘘のない強力なブランドが生まれます。

ここでは、明日から社内のメンバーだけで実践できる4つのステップを解説します。

採用ブランディング実践4ステップ

Step1. 自社分析とEVP(従業員への価値提案)の言語化

最初のステップが最重要です。自社の「EVP(Employee Value Proposition=従業員に提供できる価値)」を言語化します。

多くの担当者様がここで「ウチには特別な魅力なんてない」と悩みますが、それは間違いです。魅力がないのではなく、「当たり前すぎて気づいていない」だけというケースが多いです。

以下の「3つの質問」に答えてみてください。

 退職者が最後に褒めてくれた点は?

辞めていく人でさえ評価してくれたポイント(例:「人間関係だけは本当に良かった」「任せてもらえる範囲は広かった」)は、紛れもない真実の魅力です。

 競合他社に「これだけは負けない」と言える泥臭い点は?

「お洒落さ」や「給与」で勝てなくても、「お客様のクレーム対応の速さ」や「社員同士の面倒見の良さ」など、泥臭い強みがあるはずです。

 顧客はなぜ、大手ではなくウチを選んでいるか?

顧客から選ばれる理由は、求職者から選ばれる理由とリンクします。「融通が利くから」「担当者が熱心だから」という顧客の声は、そのまま「個人の裁量が大きい」「熱量を持って働ける」という採用の強みに変換できます。

EVPの見つけ方

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藤村
3C分析などの難しいフレームワークを使わずとも、自社のコアが見えてきます。

EVPの言語化に行き詰った方へのアドバイス

EVPの言語化に行き詰った方は、標準的なEVPの構成要素を参考にしましょう。この中から、自社が強く提供できる要素をピックアップして深掘りすると、言語化しやすいです。

EVPの構成要素 具体例
報酬・福利厚生 (Rewards) 給与、賞与、手当などの金銭的報酬。
機会 (Opportunity) キャリア成長、スキル習得、昇進のチャンス。
組織 (Organization) 企業の社会的意義、市場での地位、製品の魅力。
人 (People) 上司、同僚の質、人間関係、職場の雰囲気。
仕事 (Work) 業務のやりがい、ワークライフバランス、柔軟な働き方。

ただし、企業と同じ土俵である「報酬」や「福利厚生」で勝負しようとすることはおすすめしません。資本力で劣る中小企業がこの領域で差別化することは困難です。

成功する中小企業のEVPは、「機会(圧倒的な成長、裁量権)」「組織・人(ビジョンへの共感、家族的な結束)」に重点を置いていることがほとんどです。

Step2. ペルソナ(求める人物像)の徹底的な具体化

自社の魅力が見えたら、それを「誰に」伝えるかを決めます。

ここで陥りやすい失敗が、「20代後半、営業経験あり、コミュニケーション能力が高い人」といった「スペックや条件」だけでターゲットを決めてしまうことです。

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藤村
これでは、誰の心にも刺さらないメッセージになってしまいます。

ブランディングを成功させるには、その人の「価値観」「悩み」まで解像度を高める必要があります。

項目 具体例
悪い例(スペックのみ) 28歳、男性、法人営業経験3年。
良い例(価値観まで設定) 現在28歳。大手で営業をしているが、社内調整やマニュアル通りの提案に飽き飽きしている。「もっと自分のアイデアで勝負したい」「手触り感のある商売がしたい」と考えている。休日はキャンプに行き、自分の道具にこだわるタイプ。

ここまで具体化して初めて、「マニュアルはありません。あなたのアイデアが商品になります」というメッセージが、たった一人の心に強烈に響くようになります。

「アンチ・ペルソナ」も一緒に設定しましょう

「アンチ・ペルソナ」とは「自社に合わない人」のことです。アンチ・ペルソナ設定は、例えば「安定志向の人は合わない」「指示待ちの人は辛い」といったネガティブ要素も言語化することを指します。

合わない人が明確になることで、「合う人(ペルソナがさらに明確になります。自社分析とEVP

Step3. ストーリーテリングとコンテンツ制作

ペルソナに向けて、Step1で発掘した魅力を記事や動画といったコンテンツにします。

中小企業のコンテンツ制作における鉄則は、「綺麗な言葉よりも、本音とリアル」です。

プロのライターが書いたような整った文章や、フリー素材の写真は必要ありません。

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藤村
むしろ逆効果です。
コンテンツ例 コンテンツの内容
創業ストーリー 社長がどんな苦労をして会社を作ったのか、失敗談も含めた泥臭い物語。
社員のリアルな日常 オフィスの休憩スペースの様子、ランチの会話、部活動の様子。
仕事の厳しさ やりがいだけでなく、「ここが大変だ」という正直な情報。

これらを、自社ブログやnote、SNSで発信してください。

「うちはこんなにキラキラしています」というアピールよりも、「不格好だけど、こんな想いで一生懸命やっています」という人間味こそが、中小企業の最大の武器になります。

Step4. タッチポイントの選定とKPI設定

最後に、作ったコンテンツをどこで発信し、どう評価するかを決めます。

媒体(タッチポイント)の選び方

予算がない場合は、無料で始められるツールを活用しましょう。

無料ツール 特徴
X(旧Twitter)/ Instagram 日常の雰囲気やカルチャーを発信するのに最適。
note 創業ストーリーや社員インタビューなど、読み物をストックするのに最適。
無料の採用サイト作成ツール Airワーク 採用管理やengageなどを使えば、0円で自社採用ページが持てます。

KPI(重要業績評価指標)の設定

やりっぱなしを防ぐために、必ず目標数値を決めますが、ここで「応募数」だけを追うのは危険です。

なぜなら、ブランディングの目的は「マッチする人を採ること」だからです。

以下の指標を組み合わせて評価しましょう。

設定KPI コンテンツの内容
応募数 認知が広がっているか?
有効求人率・書類通過率 自社に合う人からの応募が増えているか?(※ここが重要)
内定辞退率 志望度の高い人が集まっているか?
採用単価 1人採用するのにかかったコストは下がっているか?

特に「内定辞退率」や「採用単価」の改善が見られれば、ブランディングは成功していると言えます。

失敗から学ぶ!採用ブランディングを始める中小企業が陥りがちな「3つの落とし穴」

ここまで、成功するためのステップをお伝えしてきましたが、実践に移る前にどうしてもお伝えしておきたいことがあります。

それは、多くの企業が良かれと思ってやってしまい、かえって採用状況を悪化させてしまう「失敗パターン」についてです。

特にリソースの限られる中小企業の場合、一度方向性を間違えると、リカバリーに多大な労力がかかります。以下の「3つの落とし穴」だけは、絶対に避けて通るようにしてください。

1. 大企業の真似をして背伸びした発信をしてしまう

最も多い失敗が、「実態よりも会社を良く見せようとしてしまうこと」です。

  • プロのモデルを使った、清潔感あふれる(しかしどこかで見たことのある)フリー素材の写真を使う
  • 実際はピリッとした緊張感のある職場なのに、「アットホームで和気あいあいとした職場です」と書く
  • 整った福利厚生や制度ばかりを強調する

これらはすべて、大企業の採用ページを真似した結果です。

しかし、これを中小企業がやるとどうなるでしょうか?

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求職者は敏感です。「なんか嘘っぽいな」「実態が見えないな」と直感的に敬遠します。

仮に入社まで至ったとしても、「聞いていた話と違う」という現実とのギャップによって早期離職に直結します。

中小企業の最大の武器は、綺麗に取り繕うことではなく、「透明性」です。

「オフィスは古いけれど、機材には投資しています」
「残業はあるけれど、その分圧倒的に成長できます」

このように、弱みも含めてさらけ出す「正直な発信」こそが、求職者の信頼を勝ち取り、ミスマッチを防ぐ唯一の方法です。背伸びをする必要はありません。

2. 現場社員を巻き込めていない(人事の独走)

「よし、採用ブランディングをやるぞ!」と社長や人事担当者だけが盛り上がり、現場の社員が冷めている……これも典型的な失敗パターンです。

採用ブランディングは、広報活動だけで完結するものではありません。

Webサイトでどれだけ魅力的なメッセージを発信していても、実際に面接に出てきた現場社員が疲弊していたり、発信内容と異なる態度を取ったりすれば、求職者の熱意は一瞬で冷めます。

これを防ぐためには、企画段階から現場社員を巻き込むことが不可欠です。

  • 「うちの会社のいいところってどこだと思う?」とヒアリングをする
  • 採用プロジェクトのメンバーに、若手のエース社員を入れる
  • SNSの発信を当番制にして、現場の声を直接届ける

「自分たちも採用に関わっている」という当事者意識を現場に持ってもらうこと。これがなければ、一貫性のあるブランドは作れません。

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「現場を無視したブランディング」は、だいたい失敗します。

3. 更新が止まり、継続性がない

「ブログを開設しました!……でも、最終更新日は3年前」

このような採用サイトをよく見かけますが、これは何もしないよりも逆効果です。

求職者は企業のWebサイトを隅々までチェックしています。更新が長期間止まっているのを見ると、「この会社は活動していないのではないか?」「採用に熱心ではない会社なのではないか?」という不安を抱きます。

失敗の原因は、最初に気合を入れすぎて「完璧な記事を書こう」としてしまうことです。

毎回100点満点の長文記事を書く必要はありません。60点でも良いので、「動き続けていること」を見せる方がはるかに重要です。

  • ランチの写真1枚と、数行のコメントだけでもOK
  • 週に1回、決まった曜日に15分だけSNSの時間を作る

このように、業務の負担にならない範囲で「継続できる仕組み」を最初に作ってしまうことが、長期的な成功の鍵です。

予算が心配な方へ:活用すべきリソースと支援制度

「採用ブランディングが重要なのは痛いほどわかった。でも、プロに頼むと数百万円はかかるんでしょう?」
「ウチのような中小企業には、そんな余裕資金はありません……」

ここまで読み進めて、最後に立ちはだかるのが「予算の壁」ではないでしょうか。

確かに、大手コンサルティング会社に丸投げすれば高額な費用がかかります。しかし、資金力のない中小企業が諦める必要はありません。

なぜなら、国や自治体が用意している「補助金・助成金」や、企業が無料で提供している「採用支援ツール」を賢く使えば、持ち出し費用を最小限(あるいはゼロ)に抑えることができるからです。

ここでは、中小企業経営者や担当者が知っておくべき、具体的な金銭的解決策を提示します。

活用できる補助金・助成金リスト

採用活動や、それに伴うWebサイト制作、環境整備には、国からの支援制度が使える場合があります。「知らなかった」というだけで損をしないよう、以下の代表的な制度をチェックしてみてください。

IT導入補助金(経済産業省)

  • 用途: 採用管理システム(ATS)の導入や、それに伴う採用サイトの制作など。
  • ポイント: 業務効率化を目的としたITツールの導入費用の一部(通常1/2など)が補助されます。採用業務をデジタル化しつつ、見栄えの良い採用サイトを作りたい場合に有効です。

>> IT導入補助金2025の公式サイトはこちら

小規模事業者持続化補助金(中小企業庁)

  • 用途: 販路開拓や業務効率化のためのチラシ作成、Webサイト制作など。
  • ポイント: 本来は「販路開拓(売上アップ)」のための補助金ですが、広報活動の一環として企業サイトをリニューアルする際に活用できるケースがあります。最大50万〜200万円(枠による)の補助が受けられます。

>> 小規模事業者持続化補助金の公式案内はこちら

人材確保等支援助成金(厚生労働省)

  • 用途: 雇用管理制度(評価制度、研修制度、健康づくり制度など)の導入による離職率低下への取り組み。
  • ポイント: これは「採用」そのものではありませんが、「定着率向上(インナーブランディング)」のための制度改革に資金を使えます。魅力的な人事制度を作ることは、結果として最強の採用ブランディングになります。

>> 人材確保支援助成金の公式案内はこちら

※補助金・助成金の要件は頻繁に変更されます。申請にあたっては、必ず顧問社会保険労務士や商工会議所へ相談してください。

無料・低コストで使えるツールとSNS

「補助金の申請すらハードルが高い」という場合は、まずは完全無料のツールから始めてください。

現在は、無料とは思えないほど高機能なサービスが充実しています。

Airワーク 採用管理 / engage(エンゲージ)

  • リクルートやエン・ジャパンが提供している無料の採用サイト作成ツールです。
  • 専門知識がなくても、ブログ感覚で写真と文章を入れるだけで、スマホ対応の綺麗な求人ページが作れます。さらに、Indeed(インディード)やGoogleしごと検索とも自動連携されるため、露出経路も確保できます。

note(ノート)

  • 企業の「想い」や「ストーリー」を発信するのに最適なブログプラットフォームです。
  • 広告が入らず、シンプルなデザインのため、記事の内容に集中してもらえます。「創業秘話」や「社員インタビュー」をストックする場所として最適です。
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note は無料とは思えないほどの情報量で投稿できるので、特におすすめです。

X(旧Twitter) / Instagram

  • 日々のリアルな空気感を伝えるのに必須のSNSです。
  • 「採用専用アカウント」を作る必要はありません。まずは社長や社員の個人アカウント、あるいは広報アカウントで、会社の日常を発信することから始めてみてください。

これらを使えば、初期費用0円で採用ブランディングはスタートできます。

「お金がないからできない」は、もはや理由になりません。まずは無料ツールのアカウント登録という、小さな一歩から踏み出してみてください。

1記事3万円で利用できる採用記事制作代行サービス

SNSや採用ブログを自社のリソースだけで運用するのは、中小企業にとって現実的ではないケースもあります。

特に、広報担当者が「兼任」あるいは「1人・少数」の場合は、インタビューから執筆・入稿まで全て対応するのは難しいでしょう。

でも記事制作を外部に依頼すると、1記事10万円以上かかったり、初期費用や月額固定費がかかってしまう会社ばかり…

そんな、「社内リソース」と「制作コスト」の板挟みになってしまっている中小企業のために、弊社ミズサキが中小企業向けの採用ブランディングサービスを開始しました。

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藤村
採用サイトやnote・Wantedlyの記事制作を、オンライン取材費込みで1記事3万円で実施します。
  • 『1記事3万円の従量課金制』
  • 『初期費用・月額固定費ゼロ』
  • 『最低契約期間なし・いつでも解約OK』
  • 『内容に満足できなければ全額返金』

という、リスクとコストを抑えたミニマムスタートが可能です。

「採用ブランディングを始めたい」
「採用ブランディングの運用リソースが足りない」

そんな広報担当者様は、下のリンクからお気軽にご相談ください。

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中小企業の採用ブランディングに関するよくある質問(FAQ)

最後に、採用ブランディングに取り組もうとする中小企業の担当者様から、現場でよく寄せられる質問にお答えします。

Q. 効果が出るまでどのくらいの期間が必要ですか?

A: じっくり腰を据えて取り組むなら、最低でも「半年〜1年」は見てください。

残念ながら、採用ブランディングに「即効性」はありません。今日ブログを書いたからといって、明日いきなり応募が殺到することはないのです。

なぜなら、ブランディングとは「信頼残高」を積み上げる行為だからです。求職者があなたの会社を知り、興味を持ち、他の会社と比較検討し、最後に「ここだ」と決断するまでには時間がかかります。

ただし、SNS運用などは比較的反応が早く見える傾向があります。まずは「1年は種まきの期間」と割り切り、焦らずにコンテンツを蓄積していく姿勢が成功への近道です。

Q. 専任の広報・人事担当がいなくてもできますか?

A: はい、兼任でも十分に可能です。ただし、「経営陣のコミット」は不可欠です。

多くの中小企業では、社長や総務担当者が採用を兼任しています。専任者がいないからといって諦める必要はありません。

重要なのは、誰がやるかではなく、会社として「採用活動に業務時間を割くことを許可するか」です。

「空いた時間でやっておいて」では、絶対に続きません。

「毎週火曜日の午前中は採用広報の時間」と決め、経営陣がその重要性を認めることがスタートラインです。

どうしても社内のリソースが足りない場合は、記事作成やSNS運用だけを外部のパートナー(ライターや採用代行)にスポットで依頼するのも賢い戦略です。

Q. BtoB企業で知名度が全くありませんが大丈夫ですか?

A: 全く問題ありません。むしろBtoB企業こそ、ブランディングの効果が出やすい領域です。

採用において、「一般的な知名度(世の中の全員が知っている)」は必要ありません。必要なのは、「ターゲットとなる求職者の間での認知」だけです。

例えば、特殊なネジを作っている工場なら、一般の人に知られる必要はなく、「機械加工のエンジニア」にだけ、「この工場の技術はすごい」と知られていれば採用は成功します。

「狭く、深く」刺すことができるのが中小企業の強みです。知名度の低さを恐れず、ニッチな魅力を発信してください。

まとめ:中小企業こそ「独自性」で選ばれる企業になろう

本記事では、知名度や予算に限りがある中小企業が、人材獲得競争を勝ち抜くための「採用ブランディング戦略」について解説しました。

最後に、重要なポイントを振り返ります。

記事のポイント

「条件」ではなく「共感」で戦う
給与や福利厚生のスペック勝負では大手にかないません。
自社独自の価値(EVP)を言語化し、「この会社で働きたい」という理由を作ることが出発点です。

「透明性」が最強の武器になる
背伸びをして良く見せようとするのは逆効果です。
創業の苦労や現場のリアルな姿など、ありのままの情報を発信することが信頼につながります。

 お金をかけずに始められる
補助金・助成金の活用や、無料の採用サイト作成ツール、SNSを活用すれば、低コストでスタート可能です。

「継続」こそが信頼を生む
完璧なコンテンツを目指す必要はありません。
60点の出来でも、継続的に情報を発信し続けることが、求職者への安心感につながります。

採用ブランディングは一朝一夕で成果が出るものではありませんが、取り組むことで「採用コスト削減」「定着率向上」「既存社員のエンゲージメント向上」という大きなリターンをもたらします。

まずは、「退職者が褒めてくれた自社の良さは何か?」を社内で話し合うことから始めてみてください。その小さな一歩が、未来の優秀な仲間との出会いにつながるはずです。

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