「ブログやSNSの更新は頑張ってくれているけど、結局それで何人採用できたの? コスパ悪くない?」
採用広報に力を入れ始めた矢先、上司や経営層からこのような厳しい指摘を受け、答えに詰まってしまった経験はありませんか?
「認知獲得が大事だ」となんとなく説明しても、数字にシビアな経営陣には響きません。採用広報は成果が出るまでに時間がかかる施策だからこそ、活動の価値を証明する「ロジック」と「指標」が不可欠です。
この記事では、採用広報における「KPIの正解リスト」と、最終目標(採用人数)から逆算して必要な活動量を割り出す「具体的な計算ロジック」を解説します。
この記事を読み終える頃には、上司を納得させる「根拠ある数値目標」が完成し、自信を持って採用広報を推進できるようになるはずです。
採用広報の現場では、つい「記事を〇本公開する」「SNSを毎日投稿する」といった「行動量(Do)」を目的にしてしまいがちです。しかし、それだけでは経営層に対して「活動の価値」を証明することはできません。
なぜなら、会社が求めているのは「記事を書くこと」ではなく、「採用課題を解決すること」だからです。
ここで重要になるのが、感覚論ではなく客観的な数値で成果を示すためのKPI(重要業績評価指標)の設定です。
KPIを設定する前に、必ず対になるKGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)との関係性を整理しておく必要があります。この2つは、以下のようなピラミッド構造になっています。

| 項目 |
KGI(重要目標達成指標) |
KPI(重要業績評価指標) |
| 定義 |
最終ゴール
組織として最終的に達成すべき数値目標
|
中間ゴール
KGI達成のためにクリアすべき 通過点の数値目標
|
| 採用広報での例 |
年間採用人数 10名 採用コスト 20%削減
|
採用サイトからの応募数 月間20件 オウンドメディアのPV数 月間1万PV
|
つまり、「KPI(中間ゴール)を一つひとつ達成していけば、論理的にKGI(最終ゴール)が達成される」という設計図を作ることが、KPI設定の本質です。
「とりあえずPVを追う」のではなく、「採用人数(KGI)を達成するために、これだけのPV(KPI)が必要だから追う」という逆算のロジックがあるかどうかが、上司を説得できるかの分かれ道となります。
採用広報において適切なKPIを設定することは、単なる進捗管理だけでなく、組織として統一の指標を持ち、統一感のある動きをすることができます。具体的なメリットは以下の3つです。
「頑張っています」という主観的な報告ではなく、「目標の応募数に対して進捗率90%です」と数値で語ることで、活動の成果が可視化されます。これにより、次年度の予算確保や、他部署への協力要請(インタビュー依頼など)がスムーズになります。
数値目標があると、「PVは足りているのに、応募につながっていない(=記事の内容や導線に問題がある)」といった具体的な課題(ボトルネック)が見えてきます。効果の薄い施策を停止し、効果のある施策にリソースを集中させる判断が可能になります。
採用という最終成果が出るまでには時間がかかります。KPIという「小さなゴール」を設定することで、日々の活動での達成感を味わえるようになり、チームのモチベーション維持につながります。
KPIの重要性を理解したところで、次は「具体的にどの数字を見ればいいのか」という疑問にお答えします。
採用広報のKPI設定で最も重要なのは、「求職者の行動フェーズに合わせて指標を使い分ける」ことです。
まだ会社のことを知らない人にいきなり「応募」を求めても無理がありますし、逆に応募直前の人に「認知」の指標を当てはめても意味がありません。
ここでは、求職者の心理変容を4つのフェーズに分け、それぞれの段階で追うべき「KPIの正解リスト」を網羅的に紹介します。
まずは「自社の存在を知ってもらう」段階です。どんなに素晴らしい会社でも、知られていなければ選択肢に入りません。
ここでは「接触量の最大化」を測る指標を設定します。
| 指標 |
内容 |
| PV数(ページビュー) |
記事やページが閲覧された延べ回数。 |
| UU数(ユニークユーザー) |
サイトを訪問した「人数」。 同じ人が何度も見ても1人とカウントされるため、 純粋なリーチ数を測るのに適しています。 |
| セッション数 |
訪問の回数。 |
| 指標 |
内容 |
| インプレッション数(表示回数) |
投稿がタイムラインに表示された回数。 |
| リーチ数 |
投稿を見たユニークユーザー数。 |
| フォロワー数 |
継続的に情報を届けられるファンの数。 |
認知された後、「この会社、面白そうだな」「自分に合うかもしれない」と興味を持ってもらう段階です。
ここでは、単に「見た」だけでなく、「どれくらい深く情報を摂取したか」を測る質的な指標が重要になります。
| 指標 |
内容 |
| 平均滞在時間 |
ユーザーが記事を読んでいる時間。 短すぎる場合は「タイトル詐欺」や「内容が薄い」と 判断されている可能性があります。 |
読了率(スクロール率)
|
記事の最後まで到達した割合。 |
ページ回遊率
|
1回の訪問で何ページ見たか。 「社員インタビュー」から「会社概要」へ 遷移しているかなどを確認します。 |
| 指標 |
内容 |
| エンゲージメント率 |
「いいね」「コメント」「シェア」「保存」などのリアクションの割合。 |
| 保存数 |
特にInstagramなどで重要。 「後で見返したい」=「高い関心」を示すため、 採用につながりやすい指標です。 |
| 動画再生数・視聴完了率 |
動画コンテンツの場合、最後まで見られているかが重要です。 |
興味を持ったユーザーが、実際に求人への応募や説明会への参加といった「アクション」を起こす段階です。
広報活動が具体的な成果に結びついているかを測る、非常に重要なフェーズです。
| 指標 |
内容 |
| 遷移率(CTR) |
記事やSNS投稿内の「求人ページへのリンク」がクリックされた割合。 |
| エントリーフォーム到達率 |
求人ページを見た人のうち、応募フォームまで進んだ割合。 |
| 応募数(エントリー数) |
実際にフォーム送信が完了した数。 |
| CPA(Cost Per Acquisition:応募単価) |
応募1件を獲得するためにかかった費用(広告費など)。 |
ここが多くの企業で見落とされがちなポイントです。単に応募数が増えても、すぐに辞退されたり、ミスマッチで早期離職されたりしては意味がありません。「広報が伝えた内容と、入社後の現実にギャップがないか(採用の質)」を測ります。
| 指標 |
内容 |
| 選考通過率 |
書類選考や面接を通過した割合。 低い場合は、ターゲットではない層からの応募ばかり集めている (広報のメッセージがズレている)可能性があります。 |
| 内定承諾率 |
内定を出した人のうち、入社を決めた割合。 ここが高い場合、広報コンテンツによって 志望度が十分に高められていたと言えます。 |
| 選考辞退率 |
選考途中で離脱された割合。 |
| 早期離職率(定着率) |
入社後3ヶ月〜1年以内の離職率。 ミスマッチ防止の観点で、長期的に追うべき指標です。
|
「KPIの指標はわかったけれど、具体的に目標数値をいくつに設定すればいいの?」ここが、多くの担当者が最も頭を悩ませるポイントです。
ここからは、「KPIの逆算シミュレーション」を行います。
「なんとなく月間1万PVを目指す」のではなく、「採用人数(KGI)を達成するためには、論理的に計算すると月間1万PVが必須である」と言えるようになるための計算ロジックです。
まずはゴールとなるKGI(最終的な採用目標人数)を確認します。
例えば、「半年後までに中途エンジニアを1名採用する」というKGIを設定したとしましょう。
次に、その採用に至るまでの標準的なフロー(フェーズ)を書き出します。
次に、各フェーズの間をどれくらいの確率で通過できるかという「歩留まり率(通過率)」を設定します。
自社に過去の採用データがある場合は、その実績値を使用するのが最も正確です。もし実績データがない、またはこれから採用広報を本格化する場合は、一般的な業界平均や肌感値を仮置きして計算します。
ここでは、一般的な中途採用における歩留まり率の例(仮定)を使用します。
| 項目 |
歩留まり率(通過率) |
実績データ |
| 内定承諾率(内定→入社) |
50% |
内定を出した2人に1人が入社 |
| 面接通過率(面接→内定) |
20% |
最終面接まで進んだ5人に1人に内定 |
| 書類選考通過率(応募→面接) |
20% |
応募者の5人に1人が書類通過 |
| 応募率/CVR(閲覧→応募) |
1.0% |
採用広報記事を読んだ100人に1人が応募 |
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それでは、実際に計算してみましょう。
例として、目標を「5名の採用(入社)」とします。
| 目標 |
5名入社 |
| 内定承諾率 |
50% |
| 【KPI】内定出し数 |
5名 ÷ 0.5 = 10名 |
| 目標 |
10名に内定 |
面接通過率(全体)
|
20% |
| 【KPI】面接実施人数 |
10名 ÷ 0.2 = 50名 |
| 目標 |
10名と面接 |
| 書類選考通過率 |
20% |
| 【KPI】必要応募数 |
50名 ÷ 0.2 = 250名 |
| 目標 |
250件の応募 |
応募率(CVR)
|
1.0% |
| 【KPI】必要PV数 |
250件 ÷ 0.01 = 25,000 PV |
いかがでしょうか。
このように逆算することで、「エンジニアを5名採用するためには、採用広報で月間25,000PVを獲得し、250件の応募を集める必要がある」というロジックが完成します。
もし上司に「25,000PVも必要なのか?」「コストがかかりすぎる」と言われた場合も、このロジックがあれば冷静に説得できます。
このように、「どの係数を改善すればKGIを達成できるか」という建設的な議論が可能になるのです。これこそが、KPIを設定する最大の価値です。
前章のシミュレーションで、KGI(採用決定数)からKPIを逆算する方法を解説しました。しかし、ここで一つ、あなた自身の身を守るために非常に重要な注意点があります。
それは、「採用広報担当個人のKPIとして『採用決定数』そのものを設定してはいけない」ということです。
「えっ? 採用が目的なのに?」と思われるかもしれません。しかし、ここを混同すると、あなたの努力ではコントロールできない要因で評価を下げられ、モチベーションを失う原因になります。
採用活動は、大きく「集める(母集団形成)」と「育てる(意欲向上・ミスマッチ防止)」、そして「見極める・口説く(選考)」の3つのプロセスに分かれます。
あなたの認識の通り、採用広報の役割は、単に「応募者を集めること」だけに留まりません。
応募前の段階から広報コンテンツを通じて企業理解を深めさせることで、候補者の選考に進む決意を固めさせたり、選考中・内定後の辞退を回避する重要な役割を担っています。
もし、あなたが素晴らしい候補者を100人集め、十分な動機付けも行ったとしましょう。しかし、面接官の態度が悪かったり、提示された給与条件が市場相場より低かったりして、結果的に誰も入社しなかったとしたらどうでしょうか? これで「採用人数ゼロだから、広報の成果もゼロ」と評価されるのは不公平です。
広報の努力だけでコントロールできない「最終的な採用決定」をKPIにすべきではありません。
そのため、採用広報担当としてのKPIは、広報が直接影響を与えられる範囲、すなわち「選考のテーブルに乗せるまで」と「選考・内定段階での歩留まりに貢献すること」に設定することをおすすめします。
ここまでをあなたの責任範囲とし、「私はこれだけ質の高い母集団を、これだけの数、選考へ送り、さらに選考体験の土台を築きました」と言える状態を作ることが、採用広報を正しく評価するためのポイントです。
上司からよくある指摘として、「応募数は増えたけど、質の悪い応募ばかりじゃないか?」というものがあります。
この「質」の懸念に対して、広報担当はどう反論すべきでしょうか。
ここで追うべきなのが、広報が貢献した「ミスマッチ防止」と「選考意欲の向上」に関するKPIです。
単に応募数を追うのではなく、「広報コンテンツに触れた人」と「触れていない人」で、その後の歩留まり率に差があるかを確認してみてください。
|
選考通過率の比較 (ミスマッチ防止)
|
「社員インタビューを読んだ応募者は、読んでいない応募者よりも、一次面接通過率が20%高い」 |
内定承諾率の比較 (辞退回避・意欲向上) |
「オウンドメディア経由の応募者は、会社への理解度が深く、内定承諾率が他チャネルより高い」 |
もしこのようなデータが出せれば、あなたの広報活動は「ただ数を集めた」だけでなく、「自社のカルチャーに合う質の高い人材をスクリーニングし、選考への意欲を高めて集めた」という証明になります。
苦労して計算式を組み立て、KPIを設定しても、それが「設定しただけ」で終わってしまっては意味がありません。
採用広報の状況は日々変化します。目標(KGI)に到達するためには、定期的に現在地を確認し、軌道修正を行うPDCAサイクルが不可欠です。
ここでは、形骸化させず、実効性のある運用を行うためのルーチンを紹介します。
KPI管理は「見る頻度」によって役割が異なります。
全てを毎日見る必要はありません。チェック項目を決めて、週次・月次で数値を確認するようにしましょう。
- 見るべき指標: PV数、SNSインプレッション数、応募数(速報値)
- アクション:
-
- 「今週はSNSの伸びが悪いな、投稿時間が悪かったか?」
- 「急に応募が増えた。どの記事がバズった?」
- 大きな異常値がないかを確認し、短期的な投稿スケジュールの微調整を行います。
- 見るべき指標: 各フェーズの歩留まり率(CVR、通過率)、CPA(応募単価)、KGIに対する進捗率
- アクション:
-
- 「PVは目標通りだが、応募率(CVR)が先月より落ちている。記事下の導線バナーを変更しよう」
- 「応募数は足りているが、書類通過率が悪い。ターゲット設定を見直して、より専門的な記事を増やそう」
- ボトルネックを特定し、翌月のコンテンツ企画や予算配分を変更します。
KPIが未達だった場合、焦ってやみくもに行動量を増やすのは逆効果です。
前述の「計算シミュレーション」で整理したフェーズのどこが詰まっているか(ボトルネック)を特定し、そこだけを改善します。
- 原因:コンテンツの露出不足。
- 対策:SNSでの拡散回数を増やす、社員にシェアを依頼する、Web広告を検討する。
- 原因:記事は読まれているが、魅力が伝わっていない。または応募ボタンが見つけにくい。
- 対策:記事の末尾に魅力的なオファー(CTA)を置く、社員のリアルな声を増やして共感を高める、エントリーフォームの項目を減らす。
- 原因:ミスマッチな人材からの応募が多い。
- 対策:キラキラした情報だけでなく、仕事の厳しさやリアルな情報を発信し(RJP)、カルチャーに合う人だけをスクリーニングする内容にシフトする。
ここまで、KPIを設定から運用方法までを解説してきました。
最後に一つだけ、現場の担当者が直面する「現実的な壁」についてお話しさせてください。
あなたは今、採用広報以外にも、面接調整、スカウトメールの送信、エージェント対応、もしかすると労務管理まで、多くの業務を兼任していませんか?
正直に申し上げます。「高品質な記事を執筆し、SNSを毎日更新し、さらに今回解説したような複雑なKPI分析を行って、毎月改善レポートを作る」……これを一人で完璧にこなすのは、物理的に限界があります。
多くの担当者が、KPIを設定したものの、日々の業務に忙殺されて数値入力がおろそかになり、結局「今月もなんとなく記事を書いただけ」という状態に戻ってしまうのです。
「ロジックは理解したが、それを実行し続けるリソースがない」
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最後に、採用広報のKPIについてよく寄せられる質問に回答します。
A. 採用フェーズの課題によります。
「認知」が不足しているなら拡散力のあるSNS(インプレッション数)を、「理解・応募」が不足しているなら深い情報を伝えられるオウンドメディア(滞在時間・読了率)を優先します。
両者は役割が異なるため、セットで運用するのが理想です。
A. 最低でも半年〜1年は見ておく必要があります。
Web広告のように即効性があるものではありません。コンテンツが蓄積され、検索順位が上がり、認知が広まるまでには時間がかかります。
上司にはあらかじめ「資産蓄積型の施策であり、半年後から徐々にCPAが下がっていくモデルである」と説明しておくことが重要です。
A. 他社の正確な内部数値を知ることは難しいため、「自社の過去実績」との比較を重視してください。
ただし、SimilarWebなどのツールを使えば、競合サイトのおおよそのPV数は把握可能です。
また、採用広報支援会社は他社事例を多く持っているため、相談することで業界の基準値を知ることができます。
本記事では、採用広報におけるKPI設定の重要性と、具体的な計算ロジックについて解説しました。
採用広報は、正しく行えば企業の採用力を底上げする資産になります。
感覚論ではなく「数字」という共通言語を使って、活動の価値を正しく証明し、採用成功というゴールを目指しましょう。
もし、KPIの設計や運用で迷うことがあれば、いつでも「リクルーティングPR-X」にご相談ください。あなたの活動を、全力でサポートいたします。