「求人媒体に何十万円も払って掲載したのに、応募はゼロだった」
「苦労して採用した人材が、カルチャーに合わず3ヶ月で辞めてしまった」
もしあなたが今、このような悩みを抱えているとしても、決して自分を責めないでください。あなたの採用スキルが低いわけではありません。労働市場の変化と求職者の情報リテラシー向上により、従来の「お金を払って待つだけの採用」が通用しなくなっているだけなのです。
この苦境を打開する一手として、多くの企業が取り組み始めているのが「オウンドメディアリクルーティング」です。
この記事では、オウンドメディアリクルーティングの基礎知識から、具体的な立ち上げ手順、そして多くの企業がつまずく「集客(Indeed連携)」の方法まで、成功に必要なノウハウを網羅的に解説します。最新の採用トレンドとSEOの実績に基づいた、机上の空論ではない実務マニュアルとしてまとめました。
記事を読み終える頃には、自社がオウンドメディアリクルーティングに取り組むべきかの判断ができ、明日から動き出すための具体的な実行プランが描けるようになっているはずです。

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オウンドメディアリクルーティングとは?採用の新常識を解説
オウンドメディアリクルーティングとは、企業が自社で保有・運営するメディア(ブログやWebサイト)を通じて、自社の魅力や価値観を発信し、人材採用につなげる手法のことです。
従来の「採用サイト」との決定的な違いは、情報の「深さ」と「更新頻度」にあります。
一般的な採用サイトは、募集要項や福利厚生といった「条件面」を提示するカタログのような役割が中心でした。一方、オウンドメディアリクルーティングは、社員のインタビューやプロジェクトの裏話、失敗談といった「企業のリアル・実態」を継続的に発信します。
なぜ今、注目されているのか?(市場背景と求職者の変化)
なぜ今、多くの企業が手間のかかるオウンドメディアに取り組み始めているのでしょうか。その背景には、採用市場における不可逆的な3つの変化があります。
1. 採用難易度の上昇(少子化と労働人口減少)
少子高齢化により、日本の生産年齢人口は減少の一途をたどっています。事実、総務省の調査によると、日本の生産年齢人口(15〜64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年にはピーク時の約6割にあたる5,275万人まで落ち込むと推計されています。
かつてのような「買い手市場」は終わり、企業が求職者から「選ばれる」側に回らざるを得なくなりました。待っているだけで応募が来る時代は終わったのです。
2. 選職リテラシーの向上
スマホネイティブ世代を中心とした現代の求職者は、情報の真偽を見抜く力が非常に高いです。求人広告に書かれた「アットホームな職場です」という美辞麗句を、彼らは信じません。口コミサイトやSNS、そして企業のブログなどを徹底的にリサーチし、リアルな実態を確認してから応募します。
事実、エン株式会社の調査によると、求職者の半数は企業への応募前に口コミサイトを確認しており、その中の約7割が口コミの影響で「応募をやめた経験がある」と回答しています。
このような状況において、オウンドメディアは公式情報としての「透明性」が求められているのです。
3. 「意味報酬」の重視
給与や待遇といった「金銭報酬」だけでなく、「この仕事にどんな社会的意義があるのか」「誰と働くのか」といった「意味報酬」を重視する求職者が増えています。こういった情緒的な価値は、スペックだけの募集要項では伝わりません。ストーリーとして語れるオウンドメディアが必要不可欠になっているのです。
他の採用手法との違い(比較表)
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オウンドメディアリクルーティングの立ち位置を理解するために、主要な採用手法と比較してみましょう。それぞれの特性を以下の表にまとめました。
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採用手法
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費用モデル
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即効性
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資産性
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マッチング精度
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求人媒体 (リクナビ、マイナビ)
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フロー型 (掲載ごとに費用発生)
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高 (掲載直後から反応)
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なし (期間終了で消える)
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低〜中
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人材紹介 (エージェント)
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成果報酬型 (年収の30-35%)
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中
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なし
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中〜高
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ダイレクトリクルーティング(スカウト)
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データベース利用料(+成果報酬の場合あり)
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中
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低
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高
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オウンドメディア (自社ブログ・サイト)
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ストック型 (初期投資+運用費)
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低 (効果まで半年〜)
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高 (資産として残る)
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極めて高い
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この表からわかるように、オウンドメディアリクルーティングは「即効性」では求人媒体に劣ります。明日すぐに応募が欲しい場合には向きません。
しかし、一度作成した記事は半永久的にWeb上に残り、24時間365日、自社の魅力を求職者に伝え続けてくれます。掲載期間が終われば消えてしまう求人媒体とは異なり、投資したリソースが「資産」として積み上がるのが最大の特徴です。
また、記事を読み込み、カルチャーに共感した上で応募してくるため、他の手法に比べてマッチング精度が極めて高く、入社後の定着率が高いのも大きな利点です。
事実、リクルートマネジメントソリューションズの調査によると、中途採用者が適応に苦労するのは「職場の雰囲気・風土」や「仕事内容」が最も多いことがわかっています。オウンドメディアでこれらを事前に開示することは、このギャップを埋めてリアリティショックを防ぐ最良の手段となります。
オウンドメディアリクルーティング導入のメリット・デメリット
前のセクションで、オウンドメディアリクルーティングは「資産になる」とお伝えしました。しかし、ビジネスである以上、投資対効果やリスクも冷静に判断しなければなりません。
ここでは、導入によって得られる具体的なメリットと、決して無視できないデメリットについて解説します。
【メリット】採用コスト削減とミスマッチ防止
最大のメリットは、長期的な視点での「採用コスト(CPA)の削減」と「ミスマッチの防止」です。
一般的な求人媒体の場合、掲載期間が終われば情報は消え、応募も止まります。次回採用する際には、また同じ掲載費を支払わなければなりません。これは「掛け捨てのコスト」です。
一方、オウンドメディアで作成した記事は、サーバー代などの維持費を除けば追加費用がかかりません。一度作成したコンテンツが、1年後も3年後も求職者を集め続けます。運用を続けるほど記事という資産が積み上がり、結果として採用一人あたりにかかるコストは下がり続けるのです。
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また、ミスマッチ防止の効果も絶大です。
求職者は、社員のインタビューや現場のリアルな様子を読み込み、「この会社の雰囲気なら自分に合いそうだ」と納得した状態で応募してきます。
「給与条件が良いから」ではなく「カルチャーが好きだから」という理由で入社した人材は、入社後のギャップを感じにくく、早期離職のリスクが低くなります。
事実、エン株式会社の調査によると、早期離職を経験したことがある場合、最も多い離職理由は「入社前に聞いていた情報と違ったから」でした。
また、「事前にネガティブな情報も聞いていれば早期離職しなかった」と回答している人が44%にも上ります。
この結果から、入社後のギャップを減らすことが早期離職の防止につながることが分かります。
採用コストだけでなく、教育コストや再採用のコストまで削減できるため、経営視点でも大きなインパクトがあるでしょう。
【メリット】転職潜在層(タレントプール)へのアプローチ
2つ目のメリットは、今はまだ転職を考えていない「潜在層」と接点を持てることです。
優秀な人材ほど現職で活躍しており、求人サイトを毎日チェックしたりはしていません。彼らは、仕事の調べ物をしているときやSNSを見ているときに、偶然目にした「技術ブログ」や「社長のインタビュー記事」を通じて企業を知ります。
「この会社、面白い取り組みをしているな」
「社員が生き生きとしていて楽しそうだ」
こうしたポジティブな印象を積み重ねることで、彼らがいざ転職を考えたときに、真っ先に想起される候補企業(第一想起)になることができます。これをマーケティング用語で「タレントプールの形成」と呼びます。
今すぐ客を取り合うレッドオーシャンではなく、未来の優秀層を青田買いできるのは、オウンドメディアならではの強みです。
事実、LinkedIn(リンクトイン)のデータによると、世界の労働力人口のうち、積極的に職を探している層はわずか30%に過ぎず、残りの70%は「良い話があれば聞きたい」という受動的な候補者(タレントプール)であることがわかっています。
オウンドメディアは、求人サイトにはいないこの巨大な層にリーチできる数少ない手段なのです。
【デメリット】即効性の低さと運用工数の負担
メリットばかりではありません。ここで、導入前に必ず確認していただきたいデメリットをお伝えします。それは「即効性がない」ことと「泥臭い手間がかかる」ことです。
記事を公開しても、Googleの検索エンジンに評価され、検索順位が上がって求職者の目に触れるようになるまでには、最低でも半年から1年程度の時間がかかります。「来月の欠員を埋めたい」という緊急のニーズには、全く役に立たないと考えてください。
また、運用工数の負担も軽くはありません。
読者の心を動かす記事を作るには、企画を立て、社員のアポイントを取り、インタビューを行い、執筆し、編集するという地道な作業が必要です。片手間でやろうとすると、更新が止まり、誰にも見られない「廃墟メディア」になってしまいます。
「選ばれる」ためのコンテンツ戦略とネタ帳【何を書くべきか】
「更新が大変なのはわかったけれど、具体的に何を書けばいいのか検討もつかない」
「社員インタビュー以外に、ネタの引き出しがない」
オウンドメディアを始めようとする担当者が必ずぶつかる壁が、この「コンテンツ企画」です。しかし、やみくもに記事を量産する必要はありません。
効果的なオウンドメディアには、必ず押さえるべき「2つのコンテンツの型」が存在します。ここでは、読者の心を動かすための戦略フレームワークと、明日から使える具体的なネタ帳を紹介します。
2つの必須要素:「ジョブディスクリプション」と「シェアードバリュー」
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採用コンテンツは、大きく分けて以下の2種類が存在します。この両輪が揃って初めて、質の高い応募が集まります。
| ジョブディスクリプション(機能的価値) |
シェアードバリュー(情緒的価値) |
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これは「出会う」ための情報です。
具体的な業務内容、必要なスキル、使用ツール、チーム体制などを詳細に記述します。「週に何回会議があるか」「コードレビューの頻度は」といった現場レベルの解像度が必要です。これがないと、スキルマッチしない応募が増えてしまいます。
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これは「選ばれる」ための情報です。
企業のミッション、ビジョン、バリュー(行動指針)や、社員が仕事にかける想いなどを伝えます。求職者が「この会社なら自分の価値観と合う」「ここでなら熱量を持って働けそうだ」と共感するためのコンテンツです。
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多くの企業は、後者の「想い」ばかりを語りがちですが、それだけでは「いい会社だけど、何をするかわからない」と思われてしまいます。逆に条件面だけでは「条件の良い他社」に負けます。
そのまま使える!読者の心を掴むコンテンツ具体例リスト
フレームワークを理解したところで、実際にどのような記事を書けばよいのか、具体的なテーマをリストアップしました。ネタに困った際は、このリストから選んでみてください。
社員インタビュー(人を知る)
もっとも王道かつ効果的なコンテンツです。ただし、「仕事のやりがい」といった抽象的な話だけでなく、リアリティを持たせることがポイントです。
- 1日のスケジュール: 出社から退社まで、分単位でどんな動きをしているか。
- 失敗談と乗り越え方: 綺麗事だけでなく、苦労した経験こそ共感を生みます。
- 入社の決め手: なぜ他社ではなく、この会社を選んだのか。
>> 関連記事:社員インタビュー質問例100選と本音を引き出す深掘りのコツ
経営者・リーダーメッセージ(未来を知る)
会社の向かう方向性を示す羅針盤となるコンテンツです。
- 創業ストーリー: なぜこの事業を始めたのか、原体験を語る。
- 未来のビジョン: 3年後、5年後にどんな会社にしたいか。
- 求める人物像: どんな人と一緒に働きたいか、逆にどんな人は合わないか。
>> 関連記事:代表メッセージの書き方完全ガイド
データの開示(透明性を知る)
求職者が密かに気にしているけれど、面接では聞きにくい情報を先回りして公開します。透明性の高さは信頼に直結します。
- 働き方データ: 平均残業時間、有給休暇消化率、リモートワーク実施率。
- 組織データ: 男女比、平均年齢、子育て中の社員比率。
>> 関連記事:RJP理論とは?(現実的な仕事情報の事前開示)
リアルな職場環境(空気感を知る)
テキストでは伝わらない「空気感」を、写真や動画を多用して伝えます。
- オフィスツアー: 執務スペース、休憩室、会議室の様子。
- 社内イベント: 部活動、飲み会、合宿などのオフショット。
- ランチ事情: 社員が普段どこでどんなランチを食べているか。
失敗しないオウンドメディアリクルーティングの始め方【6ステップ】
「何から手をつければいいのかわからない」という方のために、オウンドメディアリクルーティングの立ち上げから運用までの手順を6つのステップに分解しました。
成功の鍵は、実は「記事を書く前」の準備段階にあります。いきなりサイトを作り始めるのではなく、このステップ順に進めてください。
Step1. 目的(KGI)とペルソナの詳細設計
最初のステップにして、もっとも重要なのが「誰に」「どうしてほしいか」を決める設計図作りです。ここが曖昧なまま走り出すと、誰にも刺さらない記事を量産することになります。
まず、目的(KGI)を設定します。「年間でエンジニアを5名採用する」「採用単価を30%削減する」といった具体的な数値を定めてください。
次に、ターゲットとなる人物像「ペルソナ」を詳細に設計します。「20代のWebエンジニア」といった大枠の属性だけでは不十分です。以下のように、その人物の悩みや価値観まで深く掘り下げてください。
| ペルソナ項目 |
内容 |
| 基本属性 |
28歳、男性、都内在住、独身、現職はWeb制作会社で勤務歴4年。 |
| 現状の悩み |
受託開発ばかりで自社サービスに関われない。納期に追われて新しい技術を学ぶ時間がない。 |
| 求めている環境 |
モダンな技術スタックに挑戦したい。ユーザーの声を直接聞ける環境で働きたい。 |
| 大切にしている価値観 |
給与アップよりも、エンジニアとしてのスキル成長を優先したい。 |
ここまで具体化することで初めて、「今の会社では満たされない悩み」を解決できる記事の切り口が見えてきます。
Step2. コンテンツの方針策定(コンセプト設計)
ペルソナが決まったら、メディア全体のコンセプトを策定します。これは、記事を読んだ後に読者に抱いてほしい「感情(読後感)」を決める作業です。
例えば、「技術力の高さをアピールしたい」のであれば、テックブログのような専門的な構成になるでしょう。「風通しの良さを伝えたい」のであれば、社員同士の座談会やイベントレポートが中心になります。
「誰にでもいい顔をするメディア」は誰の記憶にも残りません。「〇〇な人が、読んでワクワクするメディア」という指針を明確にしましょう。
Step3. 運用体制の構築とCMS選定
コンセプトを実現するための「Webサイト」と「チーム」を用意します。
サイト構築には、世界中で利用されている「WordPress」などのCMS(コンテンツ管理システム)を利用するのが一般的です。ゼロから開発する必要はなく、既存のテーマを使えば初期費用を抑えてスピーディに立ち上げられます。noteやWantedlyといった既存のプラットフォームを活用するのも一つの手ですが、自社でデータを蓄積し、自由にカスタマイズしたい場合は自社ドメインでの運用をおすすめします。
あわせて、社内の編集チームを編成します。「編集長(責任者)」を1名必ず置き、その他にライター、カメラマン(兼任可)、広報担当などの役割を割り振ります。兼務でも構いませんが、責任の所在をはっきりさせることが継続の秘訣です。
Step4. コンテンツ制作・公開
いよいよ記事制作です。Step1で設定したペルソナが興味を持ちそうなテーマを選び、実際に社員へのインタビューや執筆を行います。
ここで大切なのは「質」へのこだわりです。誤字脱字がないことはもちろんですが、読者にとって有益な情報が含まれているか、自社独自の視点(一次情報)があるかを常に確認してください。ネットで調べれば出てくるような一般的な情報を並べても、求職者の心は動きません。現場の社員だからこそ語れるリアルなエピソードを引き出しましょう。
Step5. 【重要】集客・流通経路の確保(Indeed・SNS)

ここが多くの企業が見落としがちな、最重要ポイントです。
「良い記事を書けば、自然と読まれるはずだ」というのは誤解です。立ち上げ初期のオウンドメディアは、陸の孤島のようなもので、待っているだけでは誰も見に来てくれません。作った記事を能動的に求職者の元へ届ける「流通経路」の確保が必須です。
Indeed・Googleしごと検索との連携
求職者の多くはIndeedやGoogleしごと検索を利用しています。これらの検索エンジンに自社の求人記事が自動的に読み込まれる(クローリングされる)ように設定するか、Indeedの直接投稿機能などを活用して、記事への導線を作ります。「職種名」や「働き方」で検索している顕在層を、オウンドメディアへ誘導するルートになります。
SNS(X・Facebook・LinkedIn)での拡散
社員一人ひとりが広告塔となり、SNSで記事をシェアすることも有効です。「ウチの会社でこんな記事が出ました」と社員がコメント付きで紹介することで、その友人の友人まで情報が届き、潜在層へのアプローチが可能になります。
Step6. 効果測定・PDCA(KPI設定)
記事を公開して終わりではありません。定期的に数字を分析し、改善を繰り返します。
見るべき指標(KPI)は「PV(ページビュー)数」だけではありません。採用オウンドメディアの目的はあくまで応募や採用につなげることです。
| KPI項目 |
内容 |
| 読了率 |
記事が最後まで読まれているか。 |
| 遷移率 |
記事から採用ページ(応募フォーム)へどれくらい移動したか。 |
| 応募数 |
オウンドメディア経由で何件の応募があったか。 |
これらの数字をGoogleアナリティクスなどのツールで計測し、「どの記事が応募につながったか」「どこで離脱しているか」を分析します。数字が悪ければ、タイトルを変えたり、導線ボタンの位置を修正したりして、改善を積み重ねていきましょう。
参考になるオウンドメディアリクルーティング成功事例
「理屈はわかったけれど、実際にどんなサイトを作ればいいのかイメージが湧かない」
そのような場合は、すでに成果を出している他社の事例を見るのが一番の近道です。「うちとは規模が違うから参考にならない」と考えるのではなく、彼らが「何を」「どのように」伝えているか、そのエッセンスを盗んでください。
ここでは、日本を代表する王道事例と、知名度に頼らずコンテンツの力で成功した事例の2つを紹介します。
【大手】メルカリ「mercan(メルカン)」

オウンドメディアリクルーティングを語る上で、メルカリの「mercan(メルカン)」は避けて通れません。月間数十万PVを誇るこのメディアが画期的なのは、専任の編集部だけでなく、現場の社員が自発的に記事を書く「空気作り」に成功している点です。
メルカンには、華やかな成功事例だけでなく、失敗したプロジェクトの振り返りや、育休から復帰した社員の悩みといった、極めて個人的かつリアルなストーリーが溢れています。
社員全員を「採用担当」と見なし、誰もが情報発信に関与できる文化を醸成したことで、圧倒的なコンテンツ量と多様性を実現しました。「採用広報は人事だけの仕事ではない」という姿勢こそが、メルカン最大の成功要因と言えるでしょう。
【BtoB・中小】株式会社ベイジ「ベイジの日報」

「有名企業だからできるんでしょ?」と思っている方にこそ見ていただきたいのが、BtoBのWeb制作会社である株式会社ベイジの事例です。
彼らは「ベイジの日報」というメディアで、社員が毎日書いている日報をそのままコンテンツとして公開しています。特別な取材や編集コストをかけずとも、社員が日々の業務で何を考え、どう成長しているかを可視化することに成功しました。
また、代表の枌谷氏をはじめ、社員が実名でX(旧Twitter)を運用し、日報やブログ記事を積極的にシェアしています。その結果、企業の認知度は飛躍的に向上し、Web業界内で「働きたい会社」としてのブランドを確立しました。
予算やリソースが限られていても、アイデア次第で「透明性の高い発信」は可能であることを証明した好例です。
成功企業に共通する「3つのポイント」
これら成功している企業には、業種や規模を問わず、共通している3つのポイントがあります。
費用感と運用体制の判断基準(内製か外注か)
「オウンドメディアが有効なのはわかったが、一体いくらかかるのか?」
「専任の担当者を置く余裕なんてないけれど、どうすればいいのか?」
導入を検討する際、必ず直面するのが「予算」と「リソース(人員)」の問題です。ここを曖昧にしたままスタートすると、予算オーバーや担当者の疲弊を招き、プロジェクトが頓挫してしまいます。
ここでは、オウンドメディアリクルーティングにかかるリアルな費用相場と、自社が「内製」すべきか「外注」すべきかの判断基準を明確にします。
立ち上げ・運用の費用相場(初期費・維持費)
オウンドメディアの費用は、「どこまで作り込むか」によってピンキリですが、一般的な企業がWordPressなどで独自サイトを構築する場合の相場は以下の通りです。
| 項目 |
初期構築費用 |
月額運用費用 |
| 費用相場 |
100万円〜300万円 |
20万円〜50万円 |
| 詳細 |
サイトの設計、デザイン、コーディング、CMS(更新システム)の導入にかかる費用です。オリジナリティを追求すればするほど高額になります。 |
サーバー代やドメイン代といった固定費に加え、記事制作を外注する場合の費用です。ライターへの原稿料や編集費として、1記事あたり3万円から5万円程度を見込んでおく必要があります。月4本更新なら、それだけで約20万円がかかります。 |
「そんな予算は出せない」という場合も、諦める必要はありません。noteやWantedlyといった既存のプラットフォームを利用すれば、初期費用をほぼ0円に抑えることができます。
【チャートで診断】自社は内製向き?外注向き?
次に悩ましいのが、「社内のメンバーでやるか(内製)」、「プロに任せるか(外注)」という問題です。
コストを抑えたい一心で安易に内製を選ぶと、通常業務に追われて記事が書けなくなり、数ヶ月で更新が止まってしまうケースが後を絶ちません。以下の基準を参考に、自社の状況を客観的に診断してみてください。

完全内製に向いている企業
- 社内にWebマーケティングやライティングの経験者がいる。
- 予算は限られているが、社員の熱量が高く、協力体制がある。
- 担当者が通常業務の20%〜30%程度をオウンドメディアに割ける。
一部外注・フル外注に向いている企業
- 予算はあるが、人員リソースが圧倒的に不足している。
- 短期間で一定のクオリティと記事数を担保したい。
- 社内にSEOや編集のノウハウがなく、プロの知見を借りたい。
オウンドメディアリクルーティングに関するよくある質問(FAQ)
最後に、オウンドメディアリクルーティングの導入を検討されている方から、現場で頻繁にいただく質問とその回答をまとめました。これまでの不安をここで解消しておきましょう。
まとめ:オウンドメディアリクルーティングは最強の採用資産になる
ここまで、オウンドメディアリクルーティングの仕組みから立ち上げ手順、運用ノウハウまでを解説してきました。
お読みいただいて分かった通り、これは決して楽な道のりではありません。記事を企画し、執筆し、運用し続けるには、相応の覚悟とリソースが必要です。求人媒体にお金を払って終わりにする方が、よほど楽かもしれません。
しかし、苦労して積み上げたコンテンツは、決してあなたを裏切りません。
あなたが眠っている間も、他の業務で忙殺されている間も、Web上の記事は24時間365日、求職者に対して自社の魅力を語り続けてくれます。それはまさに、文句ひとつ言わずに働き続ける「優秀な採用担当者」を一人雇うようなものです。
いきなり100点のサイトを作ろうと身構える必要はありません。まずは、無料のブログサービスを使って、社員インタビューを1本公開することから始めてみてください。
「どんな人が働いているのか」「なぜこの会社で頑張れるのか」といった情報でも、求職者にとっては貴重な判断材料になります。今日、隣の席の同僚に「ちょっと話を聞かせて」と声をかけるところから、あなたの会社の採用を変える第一歩を踏み出してください。
求職者は、条件の良い会社ではなく、自分が働くイメージを持てる会社、価値観の合う会社を探しています。オウンドメディアは、そのニーズに応えるための「自社専用のメディア」と言えるでしょう。